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虜屋視聴記 (aka 鳥小屋視聴記 ) - イヤフォン - 耳栓型


耳栓型


Shure/E2(E2c)
※16Ω・105dB/mW・密閉(耳栓)型・ミニプラグ
装着性:★☆☆☆☆ 【←2003/05/19:2=>1】
装着性:★★★☆☆ 【←2003/06/22(追加、ただしスポンジイヤチップのみ)】
遮音性:★★★★☆
音楽性:★★★☆☆ 【←2003/08/31:★2.5が妥当かもしれません…ただしER-4S比の場合。】
推奨度:★★★☆☆ 【←2003/07/14:2=>3;プレミア価格消失に伴い変更】… インクジェットプリンタのビジネスモデルと同じとゆー「トータルコストの高さ」が効いて個人的に嫌い…って、まぁこれは私怨か。

 いわゆる耳栓型イヤフォン。
 日本国内においては、2003年第1四半期あたりでヘッドフォンショップAIRYの店主がこれを発掘し、国内に紹介 したことがきっかけで広まり始めた。その後第2四半期に入りサウンドハウスがほぼ半値での取り寄せ販売を行ったことか ら一気に入手容易となり、現在に至っている。
 すでに国内正規販売代理店が稼働しているため、入手性に関しても何ら問題のない状態となっている。
 価格的にはKoss/ThePlugとEtymotic/ERシリーズの中間(より下方)に位置している。


 取り扱いが若干煩雑であり、日本語マニュアルが存在しないのは不親切。
 英文マニュアルをじっくり読んで、誤解の無い様に取り扱う必要がある。


 軟プラスチック製イヤチップとスポンジ製イヤチップがそれぞれ3サイズ付属している。これら(特にスポンジ製)は消耗品 なので、付属品でいろいろ試してみて、どれを常用(追加購入)するか決めた方がいいかも。
 ついでに本機には耳垢などの汚れを外部に排出する機構がない為、必ず使用前に付属のフィルタ(薄いシール状のもの)をイヤフォン本体側に貼り付ける必要 がある。


 装着方法はマニュアル写真などを参照(但し写真掲載機はE5…)。
 単一色・内部線青色が左側で、2色・内部配線赤色が右側用となる。機器から出た配線は写真通りに耳の周りを半周ほど引き回してから垂れ下げる(ケーブル を伝わるノイズを防ぐ効果がある)。眼鏡との同時装用では干渉があり気になる。
 スポンジ製イヤチップはイヤフォンに取り付けた後、指で外周を丸めるようにつぶしてから耳へ挿入する(方法によってはケーブル断線に繋がるため、取り扱 いには注意)。軟プラスチック製イヤチップは何も考えずにそのままつっこむ。
 本体向きはイヤフォン本体部の脇に書かれた社名ロゴがちょうど水平になる様にするのが順当。但しアタリがあって痛い場合は本体を45度から90度ほど立 ててみるのも良いかと。

 スポンジ製イヤチップはディスポ(再使用不可)である。都合1週間程度なら使用可能かもしれないが、耳垢などの汚れを除去することができない為、結果として使い捨 てになる。遮音性と装着性は比較的良好、おそらくこの手の耳栓に違和感を感じない人であれば何ら問題ないはず。
 #材料は安価なスポンジフォームではなく、枕などで使用実績のある「
低反発ウレタン」と思われる。密度が比較的高く装着時の違和感もない為、適切 な材料選択である。 

 一方、軟プラスチック製イヤチップは再使用可能(アルコール払拭必須流水洗浄+陰干し必須(*))であ り、経済性は良いが装着性は極めて悪く、遮音 や音漏れ防止の効果は若干低い。また咀嚼や呼吸などに伴い耳穴が変形するたびに密閉が疎になる為、安定した遮音性は確保できず、また咀嚼音やタッチノイズ がダイレクトに反映されてしまう。
 小さめのイヤチップを使えば先端が当たる部分がひどく痛いし、大きめのイヤチップを使えば耳穴周辺が広がってこれもまた痛い。
 静かな場所での試聴時には、オープンエア式ヘッドフォンと比べても全くメリットを得られない可能性が高い。
 結局、軟プラスチック製イヤチップとE2のパイプは、組み合わせて使うには向かない(設計不良としか思 えない)気が。

 遮音が有効に働く高騒音環境下では、外部雑音にあまり影響されずに低い音量での聴取が可能であり、また外部への音漏れも少ない為、電車 内などでの使用には非常に適している(注:歩行中や乗り物の運転中に使用することは危険なのでお勧めしない)。
 一方で低騒音環境下におけるメリットはほとんど無い。せいぜい密閉型ヘッドフォンと違って蒸れることがない、という程度。


 「外に音が漏れると困る」「雑音源が近くにある」「特に小さい音を聞き取る必要がある」などの場合を除き、特に耳栓型を利用する意義はあまり感じられな い。また、イヤフォン自体のインピーダンスが低い為に機器常在ノイズを拾いやすい点も困る。
 …もっとも、製品そのものの存在理由が「高騒音環境下における軽快かつ明瞭なモニタリング品質を追求した成果物を元に、パーソナルユース向けにコストダ ウンした結果」であろう事は容易に想像可能であり、確かにその用途には非常に見合った仕様といえる。
 だからこそ維持コストが掛かること(職業用途であればある意味無問題)や、極端な低インピーダンス・高感度仕様であること(そもそも使 用目的が異なるEtymotic Research社製の挿耳型イヤフォンはハイインピーダンス仕様が標準)に対する説明が付くのであって、純粋に「ただ静かに音楽を聴くだけ」の為に購入 するべきものではないのかもしれない。
 [2003/08/31追記]Etymotic Research/ER-4Sと比べて感度がかなり高く、機器側の最大出力レベルが高い場合や、ローレベル調整が難しい場合には音量調節が困難となる点に は十分注意すべきです。たとえばCreative NOMAD Jukebox Zen 20GB USB2.0と組み合わせた場合、レベル1でもある程度の音量がとれてしまう為、より低い音量をとることができず困っています…。

 構造が耳栓+チューブなので、ここから連想されるとおり(そのまま)の音色になる。ただし巧妙にチューニングされており、あまり嫌みな音をはき出すよう なことは無い。見た目とは裏腹に真っ当な音が出てくるから不思議でしょうがない…という感じ。

 軟プラスチック製イヤチップの常用はお勧めできない(プラチップなら安上がりに聴ける…などと考えて購入するべき代物ではない)。
 スポンジ製イヤチップを常用できる程度の余裕があるなら買う価値はある。


 #Sennheiser/MX500などと同様、ぱっと見では左右の区別が付きにくいの で、L側線に8字結びを1~3回すると良いかも。

 想定されるユーザー:
 -スポンジ製イヤチップ(400円弱/1ペア)を常用するだけの金銭的余裕がある人。
 -誤ってノイズキャンセルアンプ付きイヤフォンを買って失望した人。
 -とりあえず遮音性を確保しつつ音楽を楽しみたい人。
 -ヘッドフォンは蒸れるからイヤだけど、腐った音を聞かされるのはもっとイヤ、という人。
 -○○しながら音楽を聴く、といった「ながら視聴」に向くイヤフォンを探している人。
 -騒音の多い昼間から「深夜並みの音量」での聴取をしたいという人。
 …これより装着性の悪いと噂の某社製耳栓イヤフォンって一体…


→価格:
 ・9000円前後税別(サウンドハウス;並行輸入)
 ・9800円前後税別(LAOX楽器コーナー他;非通販;国内正規品扱い)
 ・11,0008,500円税送代引手数込み税 送別(サンデン商事;国内正規品扱い)、交換用透明チップ単一サイズ5ペア1,600円、交換用オレンジフォーム チップ単一サイズ5ペア1,800円、交換用ワックスガード5ペア1,500円
 ・16,70012,000円税込み(ヘッドフォンショップ AIRY;並行輸入)、交換用透明チップ単一サイズ5ペア2,0001,600円(AIRY利用者限定価格;送 料込み)、交換用オレンジフォームチップ単一サイズ5ペア2,5001,800円(AIRY利用者 限定価格;送料込み)、交換用ワックスガード5ペア1,500円(AIRY利用者限定価格;送料込み)
…間違ってもE5は高すぎて買えません(苦 笑)。

 【2003-06-08追記1/2】
 SoundPlayer Lilith(Project9k製) + ONKYO/SE-U55X における、1時間以内試聴向きイコライザを下記に示します。
 圧縮音源・非圧縮音源向きのどちらにも使えていい感じ。長時間聴取時にはフラットのままで聴くことをお薦めします。


 【2003-06-08追記2/2】
 きらびやかな音色がお好みならば抵抗(10Ω~20Ω程度)を左右チャネル線に直列に割り 込み挿入させるアダプタを作るという手があります。
 イヤフォン自体のインピーダンス特性をそのまま利用する為、ハードウエアイコライザのような素直な特性は期待できませんが、本機においては比較的素直な 中域落ち応答を示します。また追加した抵抗の分だけインピーダンスがあがる為ボリウムを上げる必要があり、結果として若干ながら定在雑音を除去する効果が あります。
 
[注]イヤフォン側のインピーダンスが低い為、左右のばらつきがハッキリ出ます(イヤフォン側の左右特性 差はそれなりに管理されています)。そのため、使用するべき抵抗は10~100本程度の同ロットを一括で購入し、1台の積分型デジタルテスタ(アナログテ スタは使用しない)と2本のワニグチクリップ付き電線を使用して抵抗値を測定し、この結果値が同じであったうちの1対を使用してください。高価な高精度抵 抗に頼るという手もありますが、店売り小口販売の場合は別ロットが混じっていて周波数応答が若干異なってしまう場合があり、あまりお勧めできません(テス タで計れるのは1周波数のみ--アナログテスタの場合は0Hz、デジタルテスタの場合は指定周波数--なので、テスタの値が同一でも聴いた感じが異なる可 能性は十分にあり得ます)。抵抗器の製造方法や構造によっても周波数応答が変化しますので、いくつかの種類を試すことは有用です。

 ついでに、左右チャネルを適当に混ぜる場合は、抵抗(10Ω~20Ω程度)を中央線に直列 に割り込みさせるアダプタを作るという手もあります。
 この場合は1本のみの挿入なので、左右あわせなどの必要性はありません。本機では上手い具合に点音源感をぼかす方向に働きます。
 バイノーラル風フィルタ、というにはかなりおざなりですが、無効果では無いのでこれはこれでいいような気もします。
 
[注]そもそもヘッドフォン自体が左右のチャネルセパレーションをきちんと確保できない代物なので、あま り良い効果は無いかも。正確には中点線を浮かせたときの音…つまり左右の音の差が各チャネルに混ざる格好になります。

 これらは、両方ともかなり古くから使われている有名でチープな香味手法であり、両方を同時に行っても抵抗3 本+付属部品で済み、効果は地味ながら安価で副作用が出ないので便利です(両方一緒に行えば、その分さらに中域落ちは激しくなりますが…)。
 純粋に音量を下げるだけならL型アッテネータの方が電気的特性は幾分マシですが、本機の場合は音質的に好ましくない傾向となり、実施する価値は見いだせ ません。


2004/01/01追記:

 ネックチェーン式にしようと思ったものの、殻割りなどを行って特性が狂うのは勘弁…といった気がしたので、Lch側をしつこく8字結びして短尺化してみました。
 誘導や断線などの問題が出るかも…と心配しましたが、今のところは特に問題なく使えています。
 もっとも、結んだ部分が肌に当たって違和感を感じる点と、そもそも見た目が宜しくない点についてはどうしようもなく…そこは何とかしたい気分。


(*)2005/09/25追記:
 トリプルフランジ・スリーブに関する清掃方法の記述を変更しました。
  旧:アルコール払拭必須(拭いたその場から10分程度しか清潔を保てない)
  現在:流水洗浄+陰干し必須(異物を除去できればその分清潔になる)
 「水洗いしていけない」ものではないですし、流水で異物を洗い流す方がよほどマシかと。
 もっとも、シリコン自体が多孔性のため、良く洗い流しても目に見えないゴミは残るらしいです(シリコンチューブで液体を搬送すると、外部の気体を取り込 んで気泡が出てしまうというトラブルも発生するそうで)…そのため、定期交換は必要そうです。

date:2003/05/17 +2003/05/21 +2003/06/08 +2003/06/22 +2004/01/01 +2005/09/25
- Shure E2 ( E2c ) -


Etymotic Research ER-4S※100Ω・108dB SPL(/1.0V)・密閉型・ミニプラグ+ミニ→標準変換
装着性:★★☆☆☆ 【注:プラチップの場合】
装着性:★★★☆☆ 【注:スポンジチップの場合】
遮音性:★★★★☆
音楽性:★★★★☆ 【注:プラチップの場合は安定性が悪いので★3.5が妥当】
推奨度:★★★★☆ 【←2004/06/23:2=>4;プレミア価格消失に伴い変更】… 壊れやすそう・若干高価な点が痛い。

 ヘッドホンナビ [HEADPHONES-NAVI]で行われているレ ンタルヘッドホンサービスにて2機種目として一時借用しました。 まずはサイト管理者様に多謝!

 ※かなりの部分をShure/E2と比較しつつ書いています。

 いわゆる耳栓型イヤフォン。

 本体形状は大変に小さなパイプ型で、Shure/E2のような野暮ったいデザインではない。イヤチップを付けるため のパイプの長さはShure/E2と全く同じであるが、太さはまるで異なっている。従って、両者のチップを交換して使用するようなことは出来ない。

 人によって装着感が大きく分かれるプラスチック(ポリウレタン)製イヤチップが標準添付されている。チップ形状はトリプルフランジ(3段の傘)付きパイ プで、傘の厚みはShure/E2のそれよりもだいぶ薄く、複雑な成形がなされている。
 チップの高さはER-4Sのものが5割ほど高くなっているが、最下段の傘がチップ側パイプよりも下方まで伸びているだけであり、チップパイプ自体の長さ はShure/E2用チップとほぼ同じ長さ。傘の大きさは中段部のもっとも広がった部分がちょうどShure/E2用チップの小サイズと同じくらい。
 装着方法は上耳たぶを引っ張って…と絵に描かれているが、耳たぶを引っ張るよりも耳たぶ下の凹みに指を引っかけて持ち上げる方が痛くな いので良い感じ。挿耳量については「めいいっぱいに押し込むと痛い」ので、奥にぶつかったと感じたところで止める方が無難。
 Shure/E2用プラチップの様な1リング支持では無いため、装着感は若干マシである。Shure/E2の様な「全く使い物になら ない」というレベルではなく、「ほんの少し浅く装着すれば問題なく使える」という感じ(この状態であってもShure/E2+スポンジチップと同等の遮音 性が得られる)。この場合は数時間程度の長時間装用が可能であり、プラチップとしては比較的良い。ただし浅めに装着すると 低音が逃げる上に低音特性がかなりふらつくため、あまり声を大にして薦めたりは出来ないが。
 プラチップは洗浄可能であり、スポンジチップと比べて吸音性が低いために帯域バランスは安定するが、一方で柔軟性は不足しており密着感 (=騒音排除能力)を高めるのは至難の業である(何時間も装着していると外部騒音がかなり気になる…装着が下手なだけだが)。
 うまく密閉出来た場合は、外部騒音のうちのボーカル帯域をスポンジチップよりも確実に排除できるので、密閉度確認のためにもスポンジチップをたまに装用 してみる方が良い。

 一方でスポンジチップの方は「色も末端処理もパイプ太さも密度も長さも異なるが、結局は同じ低反発発泡ウレタンチップ」であるだけに、 装着感はかなり似ている。
 スポンジ長さについてはプラチップ同様にShure/E2のものよりも全長が5割長く仕上がっているが、なぜこうなったのかは疑問 (プラチップの場合、パイプ部長さは同じだというのに…)。
 借用品のためスポンジチップの短尺化は出来ないが、おそらく短尺化を行えばプラチップに近いしっかりとした低音を聞かせてくれるものと 思われる(注:純正交換用部品として黄色10mmウレタンイヤチップが存在するので、黒チップを切ったりせずにこちらを使うという手もある)。
 ちなみにスポンジチップにはパイプ末端処理がないためどちら側からでも発音体に差し込めるが、スポンジ側には片側のみ末端処理がされ ているので、それが発音体から遠くなるように取り付けること(逆にするとこのすかすかなスポンジから相当音が逃げる)。
 スポンジチップ側のパイプ(=発音体側のパイプ)が細い分、Shure/E2付属品(中サイズ)と同径のスポンジでありながら伸縮範囲は広い。ただし Shure/E2のものよりも膨らみ始めが速く、膨らみ終わるまでが遅い様に感じ、装用時の手間はShure/E2と大して変わらない。

 Shure/E2と異なりイヤチップが各1サイズしか付属していないが、イヤチップ自体の適合サイズ範囲がかなり広く(パイプ部が細いためどちらのイヤ チップも良く縮む)、チップのサイズで悩む必要がない。
 プラチップは小サイズがあった方が良いような気もするけど、実際に存在した場合は、それを無理矢理つっこんだあげくに外 耳道に炎症や鬱血を起こす人が多そうな予感…

 本体側の引き出し線は斜め引き出しであり、配線を耳に掛けるスタイルでの使用時には、配線が落ち着かず使用感はかなり悪い(耳 かけしたはずの配線が脱落する場合が多い)。ふつうに垂らして使用するとコードのタッチノイズが盛大に出て実用にならないので、耳掛け引き回しに向くよう に「コード側プラグの形状を直角か耳向きへの引き出しに変更し、コード長さをネックストラップ向けに変更したイコライザコード」の販売を希望したいとこ ろ。

 本機自体の感度はShure/E2と比べてかなり低いが、遮音性の良さが幸いして音量調整は大変にしやすい(Shure/E2は感度が 高すぎて逆に使いにくい…)。特に携帯機器とのマッチングが良い。逆に大音量が出せるタイプの据え置き型ヘッドフォンアンプを使用する 場合には、ローレベルでの音質が悪いアンプを使ってしまった場合に大変な目に遭う可能性が高いため、アンプ選びは慎重に行う必要があるかもしれない。

 音質的な面については、Shure/E2はまるで出る幕もない…という感じ(価格が4倍も違うのだから当たり前か)。
 今時のイヤフォンに慣れた人にとっては「低音スカスカの味気ない音」と聞こえる可能性は高いが、低音域を含めて必要十分な音量は出てお り、どの帯域においても聴感上の音抜け感が良く、一度慣れてしまえば「わざとらしい表現が少なくていい」と評価が変わる可能性は高い。
 #共鳴管を用いた低音増強(今時のイヤフォンでは一般的)を積極的には行っていないらしく、低 音域の濁り感が少なく質感がよい。逆説的に、それらの音を基準に考えてしまえば本機の低音域は量感が明らかに不足して いる。どのような鳴り方を好むかという「嗜好」の問題でもあるし、耳の「慣れ」による問題でもある。

 ヘッドフォンや通常のイヤフォンと異なり、耳道を音響伝送用のチューブとして利用する設計らしく、他の機器よりも特性制御がきちんと行われており、本機 では音の定位感や位置の間隔が比較的明瞭に出る。
 #もっとも、左右方向の定位感が正確に出るのみであって、前後や上下の方向に定位が定まるわけではない…というのは当然 か。ただし、他のイヤフォン類と比べて、ドルビーヘッドフォン向けDSPなどにより定位感が大幅に向上する可能性がかなり高いと思われ る。

 もう少しつっこんだ聴き心地としては、たとえるならば「極力正しい音でならそうとしている感じ」。
 Shure/E2と比べると荒さがなく、パイプ臭さもきっちり押さえられていて、なおかつ音像も恐ろしいほどシャープに定位する。
 主な聴取環境が屋外・騒音環境下であれば大変に理想的。
 ただしこれはバイノーラル系ソースのような「耳栓イヤフォンでの聴取を目的としたソース」を聴く場合限定のことであって、一般的な「ス ピーカ再生用ソース」を聴いていると、「まるで頭の中に数個のスピーカがあるかのように」恐ろしくシャープに、かつ左右方向1列に点音源が定位することに なってしまい、聴いていて気持ち悪くなるときがある。
 また、圧縮音源などをソースに用いると、(特にWMA形式で顕著に)音源位置がゆらゆらと揺れ動いている様に聞こえてきてさらにひどいことになる始末(注:一般的なイヤフォンではまず気にならないはず)…装着方法とかを云々いう前に、まず聴くソースがある程度制限さ れる気がした。

 プラチップ使用時の特性が体の動きにより変わってしまう点はShure/E2と似ており(かなりマシではあるが)、これは一度気になってしまうと延々と 悩まされる可能性があるので要注意。

 とりあえずプラチップが「修行を積めば実用的に使える」という点は、趣味で音楽を聴く人(=ランニングコストを抑えたい人)にとっては 結構うれしい点である。
 #ただし、試用期間内で常時安定した遮音性を確保するまでには至りませんでした(運良く何度かはうまく装着できました が…)。
 もちろんランニングコストさえ気にしなければ、「全周をつぶして耳につっこむだけ」のウレタンチップが使えるので、それでも構わない人に はより快適な装着感が得られるだろう(残念ながら配線取り回しに関してはShure/E2の方が上手だが)。

 本機におけるネックは発音体とコードを繋ぐコネクタ部。
 ER-4S/4B/4Pのいずれも発音体は同一で、これをイコライザコードにより特性制御しているという製品スタンスである限りは避けようが無いわけだ が、これは「発音体が壊れた場合に単独で交換できる」というメリットであるとともに「発音体側コネクタが物理的負荷により壊れてしまう可能性が高い」とい うデメリットにもなっている。

 ちなみに、本機他を収納するケースは簡易ラッチ付きプラスチック製ハードケースで、190g飲料缶3本分の大きさ。携帯灰皿程度の大きさの携帯用ソフト ポーチも付属している。
 間違ってもER-4Bを一般的ソースの聴取用途としては使用しないでください!!
 本来、一般的なステレオソースはスピーカでの聴取を目的として帯域バランスが調整されてお り、空間減衰が激しい高音域ほど音量が高めに収録されている場合が多くなっています
 一方でER-4Bは、ダミーヘッドマイクにより録音された結果を「音響出力特性がフラットなイヤフォンで聴くことを前提に調整している」ソースを聴くた めに作られており、一般的なソースを聴くために必要な「適切な高音域減衰」がなされません。
 結果として、ER-4Bをステレオ聴取に用いて、ボーカル帯域をほぼ同音量になるよう音量調整した場合、おおよそ6dB(ほぼ倍音量) 程度だけ高音域が持ち上がった格好での聴取状態となります


 人間の耳や脳には、普段の環境に応じて「特定の周波数帯域や特定の音に限定して感度を落とす」機能が備わっ ているため、ER-4SとER-4Bとの対比で得られた高音域音量差のうちある程度は耳側の補正によって埋もれてしまいます。ま たER-4Bをある程度の大音量で長期間連用した場合、ER-4Sとの(高音域における)音量差が原因でER-4Sよりも遙かに高い確率で高音域難聴に陥 ります。

 確かにER-4Bは使い方さえ誤らなければ「ER-4Sよりもはっきり・くっきりな音を奏 でる」小音量聴取向けに適した良いイヤフォンですが、これを連用する場合には「アンプのtrebleを+6dBに設定しているのと同じ状態」だという点だ けは常に忘れないでください。

 ちなみに、6dBの差がどの程度か、という点については、添付マニュアル2ページ目の「平均安全リスニング 時間」表を一目見れば解るはずです…

 2003/08/13追記:
 圧縮音源の再生時には、最低でも160kbps(方式にかかわらず)、できれば192kbps以上でソースを用意した方が良いと思われる。
 というのも、他のイヤフォンと比べて高音域・低音域の量感が弱い分、相対的に音量を上げて聴取することになるため、結果として圧縮によるアラが極端に目 立って聞こえてくるため。


 試しに128kbpsのWMA/OGG/MP3とMD(ATRAC1)を用意してみたが、普通であれば外部雑音やイヤ フォンそのものの特性で隠れてしまいそうな細かな部分がとても気になり、安心して聴くには心許ない状態であった。
 また、フォーマットごとに気になる部分の差はあるが、肝要の品質に関しては似たり寄ったりであり、ER-4Sを用いて聴取する限りは、同ビットレートで あれば同品質と見て差し支えない。


 一般的にWMA形式は200kbps超レートの汎用コーデック・再生機が存在しないため、現状でER-4Sを用いた携帯 生活をするならば、320kbps近傍のmp3ソースを用いてHDD携帯プレーヤで再生する、という類のスタイルがもっとも現実的である思われる。
 なお、
OggVorbisフォーマットのデコーダが携帯機器向けシリコンに乗るようになったため、こちらが普及すればもう一つ選択肢が増えることになる。

 想定されるユーザー:
 -きちんと遮音しつつ真剣に音を聴きたい人。
 -わざとらしい「音作り」のなされた製品に飽きてしまった人。
 -聴き心地の良い音ではなく、機械的に正確な音を求めている人。
 -配線取り回しの難やコードのタッチノイズを承知の上で使用する覚悟がある人。
 -音質の良さと定位感を同時に求めたい人。
 -騒音の多い昼間から「深夜並みの音量」での聴取をしたいという人。
 …購入前の試聴は必須。プラチップが意外とまともだった点は大きな収穫かも。


→価格:31,500円税送代引手数込み(2004/05/01以降AEDIO、正規代理店)、27,800円 税送別(2004/06/23現在、サ ウンドハウス、輸入?)、※補修部品すべてAEDIO価格で税送別2,000円/1パッケージ、パッケージ内容は次の通り…交換用白プラスチックイヤ チップ5ペア、黒色ウレタンイヤチップ7ペア、黄色10mmウレタンイヤチップ5ペア、黄色18mmウレタンチップ4ペア、グリーンフィルタ3ペア。蛇足だが、外形が同じ(つまり洗浄再使用が可能な)白チップと消音器を組み合わせたER-20というHiFi耳栓 が$12で存在する。

…今回は、単発的な他者評価が時としていかにアテにならないかを実感。ということは、つまり、俺のレビューはほとんど無意 味なのか(苦笑)。とにかく、本機は価格問題を別にしてもまず「実際に試してから購入」が必須です。まぁ、チップサイズが単一かつスペアもあるので、購入 して気に入らなかったら使用済みチップのみを廃棄して転売するという手もありますが。

date:2003/08/09 +2003/08/13 +2003/11/16(価格追記) +2004/06/23(価格変更)
- Etymotic Research ER-4S -


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