彼が彼女の顔に唇を触れた瞬間、この映画に対する私の評価は上がった。
そうだ! きっと私も、必ず、そうする! まず、はじめは、彼女の唇にではなく、彼がしたように。
それを見せてくれた本作。それまで「普通かな」(☆☆☆)と感じていた評価は、「いいじゃん」(☆☆☆★)になった。
次々にクイズに正解していく若者。それは運だったのか、彼が天才だったのか、不正があったのか、運命だったのか…。
全編に流れるインド映画風(?)な音楽。私は何度も「ムーラン・ルージュ」を思い起こしていた。あの(私にとっての)傑作には、音楽においてはインド映画っぽさが、いっぱいあったんだなあと改めて知らされた。(劇中劇そのものも、マハラジャが出てきてインド風味だったしね。)
「ムーラン・ルージュ」が好きだから、もちろん、この「スラムドッグ$ミリオネア」の音楽も好きだ。
映画全体は、よく言われているように、疾走感、躍動感があって好感がもてる。
序盤、ヒンドゥー語で話されているところは英語で字幕が出る。その出方が面白い。普通なら、ほとんどが画面の下の中央あたりに出るはずなのが、この映画は、上下左右、いろんな場所に字幕が出るのだ。それが躍動感を盛り上げるのに一役買っている。
日本でも放送されているテレビのクイズ番組が、インドでも同様にあるというのは驚きだった。私は、最初はアメリカの番組に主人公が出ているのかと思っていた。インドあなどるべからず。世界中で人気の番組なのかな。
番組のジングル(コマーシャル前後やコーナー開始、特定のシーンの時などに繰り返して使われる短い音楽や効果音)が日本のものと同じなので、なんだか、わくわくした!(めったに日本の当番組は見てないけれど、聞き覚えはあるから。)
クイズ番組にからませて、主人公の生い立ちを語っていく手法は、うまいと思う。多少、ストーリー的に都合のいい面はあるが。
幼い兄弟、子どもたちもいいし、そして、なんたって、純愛のお話。これは、いい。好みです!
子どもの頃から、ずっと想い続けるなんて…いいなあ。
ラストの、いかにもインド映画、なのか知らないけど、楽しい群舞(言い方、古いですか?)も大好き。ミュージカル好きなら、嫌いな人はいないよね? 大団円、ハッピー気分になれる。子役カップルも登場するのが、なんとも、うれしい演出。
主役たちは年齢に応じて、それぞれ同じ役を3人で演じ分けていたが、エンドクレジットで、その3人が一緒に紹介されるところも、よかった! みんなで作り上げたんだよ! って。
夢をかなえる、ハッピーになる、インド風なのが目新しかった、映画にキレと若々しいパワーがある、アカデミー賞で多数受賞したのは、そんな理由がありそうだ。