ダウン

DOWN
脚本・監督 ディック・マース
出演 ジェームズ・マーシャル  ナオミ・ワッツ  エリック・サール  マイケル・アイアンサイド  エドワード・ハーマン  ダン・ヘダヤ  ロン・パールマン
2001年 オランダ・アメリカ作品 111分
評価☆☆☆


「マルホランド・ドライブ」で注目されたナオミ・ワッツ嬢が出ていなかったら、劇場公開はなかった可能性が大きいな。
観終わってから、そう思った。
そういう、いかにも、なB級映画なのだ。

B級映画という言葉はよく聞くが、いったいどんな映画を言うのだろうか。
観れば感覚的に理解できるとは思うが、お話がとんでもない、というのは、かなり重要な要因だろう。
私が思うには、他愛のない、くだらない映画だが、何も観るべきもののない映画ではなくて、なんとなく愛嬌や遊び心があったり、どこか面白い味とか取り柄がある映画である。
真面目にやっていて、つまらない映画は最悪だが、遊び心で、いわば確信犯的に作られた「くだらなさ」は、それを受け止めて、ニヤニヤしながら楽しむのがいいのだ。

B級映画を楽しむには、それなりの心構えが必要だ。
まず、B級映画であることを認めたら、意識的に、普段とは違うB級映画用の(?)観賞眼をセットするべきだ。B級映画を目の前にして、隙のない素晴らしい映画を期待していては、絶対に不満が出てくるに決まっている。
たとえば、笑ってしまうような馬鹿らしさや独特のユーモアに出会ったら、余裕で楽しむ心をもって向き合うべきなのだ。それができないならば、観ても仕方がない。つまらない、くだらない、と思うだけしかできないなら、観てもムダだ。そういう人は、観る前にその映画の性格を知っておくべきなのだ。

さて、「ダウン」である。
ディック・マース監督が1983年に製作し、SFやホラーの映画賞として有名なアヴォリアッツ映画祭でグランプリを受賞した「悪魔の密室」という映画を、自身でリメイクしたものらしい。

ニューヨークの、ある高層ビルの急行エレベーターで、事故が相次ぐ。突然停止して人が閉じ込められたり、扉が開いてもそこにエレベーターがなくてシャフトをまっさかさまに転落したり、あるときは扉に挟まれてしまったり…。
点検しても異常はない。
エレベーター会社の整備員マーク・ニューマン(ジェームズ・マーシャル)が不審を抱き、新聞記者ジェニファー・エヴァンス(ナオミ・ワッツ)とともに事件の真相を調べ始める。
そこには、まさに、とんでもない秘密が隠されていた…。

ナオミ・ワッツ嬢にとっては「マルホランド・ドライブ」と同時期か、少し前に出演した映画のようだ。ならば、このようなB級テイストの作品に出ていても納得できる。
この映画での彼女、前半は登場の機会が少なくて、ちょっと不満だった。
映画のテーマ自体が特異で目立つから、ただブロンドの美人記者というだけで、演技は特筆すべきものはない。

エレベーターが人をいかにして、もてあそび、襲うかについては、いろいろと工夫しバラエティに富み、飽きさせなかった。そこがいちばんのお楽しみ。
妊婦や盲人をネタに使うところは、やや悪趣味かもしれないが、それもB級の味か。

マイケル・アイアンサイドは「トップガン」「トータル・リコール」「スターシップ・トゥルーパーズ」などでもお馴染み。今回は謎のカギを握るドイツ人技師を演じる。
ダン・ヘダヤ(「マルホランド・ドライブ」にも芸能界の実力派兄弟役で出演していた。そういえば主役のジェームズ・マーシャルも、デヴィッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス」に出ていたそうだ。リンチつながりの色が濃い映画だ。)とロン・パールマンという、特徴のあるご面相が揃っているのも、画面が、くどくて(?)楽しい。

普通に評価すれば星2つ以下だろうが、B級映画用の観賞眼で観れば、けっこう楽しめてしまう、星3つである。

エンドクレジットに流れるのは、エアロスミス。よく知らないけど「エレベーター・ラブ」って曲かな?

最後に余談。
「ダウン」と「ナオミ」の2語で検索エンジンにかけたところ、「ナオミさん、ご心配をかけ…サーバーがダウンして…」というのが引っかかったのには苦笑してしまった。まるで映画と関係ない。
ちゃんと「ナオミ・ワッツ」で検索しなければならないね。
〔2002年10月5日(土) 銀座シネパトス1〕



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