漆かぶれのこと

漆かぶれの情報を求められる方が結構いらっしゃますので、ページを作りました。
矢澤金太郎は最初からかぶれない体質で話にならないので(^_^;)
ちゃんとかぶれたことのあるわたくしめの体験と
工房に在籍したたくさんの人の経験を集約してお伝えします。
内容的には、漆を扱おうという方たちへのエールとなりますが、
漆製品でかぶれた方へのコメントも少し載せています。
しかし、私は漆かぶれの研究家ではありませんので、あんまり期待しないで下さいね(^o^)
文責:矢澤美子

2003.5.21 up!
なぜ漆にかぶれるの?
科学的理由は知りません。その道の方におたずね下さい(^_^;)
でも、漆に負けるって言葉がありますが、負けてるんじゃなくて、負けるもんかって闘ってるんだそうですよ。漆に触れたことのない人は、体の中に抗体がないので、漆が入ってきても「あっら〜っ?どなた〜っ?」って感じで反応しないのですが、漆に触れたことのある体は、いち早く漆を感知し、「おぬし〜っ!」と闘い始めるんだそうです。それが漆かぶれなんだそうです。
ってことは、最初漆にかぶれないからといって、漆に強い人とは一概にいえないんです。うちの工房でも、最初かぶれないからっていい気になってたら、そのあとドッカ〜ンとかぶれちゃった人がいます。漆に触れて最初からかぶれる人の方がかえってその後の克服が早かったりしますので、とりあえず、漆にかぶれたからといってがっかりすることはないです(^_^)v
どのくらいの割合の人がかぶれるの?
うちの工房での経験では、ほとんどの人が大なり小なりかぶれます。全くかぶれない人がたまにいますが、それが女性に多いのはなぜでしょう。「女性はどんな環境でも、子供を産み育てて行かなくてはいけないから、そんな風にできているんだよ。」というのが矢澤の独断と偏見での意見です(^_^)。
かぶれてしまうと、かぶれない人を見て、なんだか劣っているような気持ちになりますが、数カ月経てば、誰がかぶれて、誰がかぶれなかったか、わからない「皆同じ」状態になります。全くかぶれなくて優秀に見えた人も、「二十歳過ぎればただの人」って感じかなぁ(^_^)v
漆かぶれってどんなもの?
漆かぶれ かぶれ方は人さまざまで、少しですむ人もいれば、全身かぶれて、お医者様のお世話になる人もいます。手の指の間とか、腕の内側とか、皮膚の柔らかいところがかぶれやすいです。
軽い人は赤くなってかゆいくらいですが、ちょっと進むとタラコのツブツブくらいの水泡ができます。ここ辺まで行くとメチャメチャかゆいです。夜眠って体が温まってくると、かゆみも増し、辛抱のない人は(私のように)、水泡を破るくらい掻きむしってしまいます。これが意外と気持ちいいのです、ふふ(^_^;)。たわしでごしごしこすって塩を塗るというマゾ的行為に走る人もいました。お風呂に入るとかゆみに刺激が加わって、それは妙な快感が走ります(*^_^*)。
さらにひどい人は水泡がつながって大きな水膨れになります。それに体全体に腫れが広がって行く時もあります。
私は四谷怪談のお岩さんみたいな顔になったことがあります。あの時はまいったなぁ(>_<)。元々の私の顔を知ってる人はいいんですけれど、初めて会って、もうそれっきり会えないかもしれないようなお客様には、「漆かぶれなんです!」ってしつこく説明してました(^o^)。
私よりひどいかぶれ方をした人も何人か知っています。顔が腫れて目がふさがって、「運転できないから休ませて!」っという人もいました。下半身がかぶれてたくましくなったって自慢してる人もいました(^_^;)。そうそう、自分がかぶれたら恋人にはノー・タッチですよ!柔らかい部分を必ずかぶれさせる結果になります(*^_^*)
漆にかぶれたらどうすればいいの?
結論から言いますと、皮膚科のお医者さんに行くことをお勧めします。副腎皮質ホルモン剤を塗るのが一番効くと思います。かゆみや腫れがひどいときは飲み薬や注射も積極的に受けた方が得だと思います。1週間で峠を越しますので、自力で直そうとか我慢せず、薬に頼ったらいいと思います。昔からの民間療法もありますが、効かないような気がします(沢ガニをつぶして塗るといいと本に書いてあったのでやってみたけれど、どうってことなかったなぁ。)。あと、お風呂に入ったときは石鹸を使わない方がいいようです。体の油脂分が取れるとかぶれがすすむようです。
漆かぶれって克服できるの?
経験から、たいていの人は克服できると思っています。当工房には60人あまりの人が在籍してきましたが、一人だけ途中で漆の作業を免除してくれという人がいた他は、全員漆を克服できました。これでもかと漆に触っていると、体の方が抵抗するのをあきらめるようです。
それから、克服するのには気構えが結構関係してる気がします。私は最初は漆の仕事はしていなかったのですが、夫が漆の仕事をして手を洗って拭いた手ぬぐいで、うっかり顔を拭いてお岩さんになったくらい弱かったです。 私は戦々恐々とし、夫があちこち手で触れる場所には触らないようにするくらい漆から逃げ回っていました。でも少しも漆に慣れず、結婚を恨むくらいでした(^_^;)。ある時、漆の仕事をしている人から「もっと前向きに取り組めば大丈夫だよ。」と励まされ、意を決して漆の仕事をすることにしました。もちろん長袖を着て、ゴム手袋をして完全装備でやります。すごく気合いを入れてやりました。そしたらなんと、そのときを境にかぶれなくなったのです。これって、精神力と関係してるんじゃないかと思ってしまいました。のちにあるサイトで自然治癒力に関連して漆かぶれのことを書いてあるのを読んで、うなずくものがありました。意外と漆かぶれの克服には気力も関係してくるのかもしれません。
漆製品を使ってかぶれた方へ
上の方では、主に漆を仕事として扱う人を対象に、漆かぶれの話をしてきましたが、漆製品でかぶれる方もたまにいらっしゃると思います。乾燥した漆はかぶれることはありませんが、漆が内部まで完全に乾燥するにはかなり長期間必要で、納品後1年間は、使い方と、体質によってはかぶれる方がいらっしゃるかもしれません。かぶれやすい状況とは、例えば、暑い夏に、購入したての椅子に短パンで座ったときなどです。汗ばんだ皮膚は汗腺が開いているため、かぶれ易くなります。もしかぶれるようなことがありましたら、しばらく触らずに置いておくのがよいと思います。