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SH-11ゴーゴン/SH-08ガゼルBMD

SH-11 Gorgon / SH-08 Gazelle

 

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Specifications

形式 弾道ミサイル防衛システム(BMD)
名称 ロシア名: A−135

西側名: ABM−3

高高度迎撃ミサイル: SH−11ゴーゴン

低高度迎撃ミサイル: SH−08ガゼル

システム完成年 1995年
配備都市 モスクワ

SH−11ゴーゴン

形式 高高度弾道弾迎撃ミサイル(ABM)
名称 NATO名: SH−11ゴーゴン

ロシア名: 51T6

全長 約20m
最大直径 2.5m
発射重量 30トン
誘導方式 レーダー指令
推進方式 2段式(1段目:固体燃料、2段目:液体燃料)
弾頭 10キロトン核弾頭
最大射程 350km
最大射高 120km
配備数 32基

SH−08ガゼル

形式 低高度弾道弾迎撃ミサイル(ABM)
名称 NATO名: SH−08ガゼル

ロシア名: 53T6

全長 10m
最大直径 1m
誘導方式 レーダー指令
推進方式 1段固体燃料ロケット
弾頭 10キロトン核弾頭
最大射程 80km
配備数 64基

 

Development & History

<開発>

 ABM−3(ロシア名:A−135)は、迎撃の不確実性や、脆弱性などの欠点を露呈したABM−1に変わる新しいモスクワ弾道ミサイル防衛システム(BMD)として1975年に開発が始まった。開発を担当したのはヴィンペル中央科学生産機構(TsNPOヴィンペル)である。

 ABM−3システムの特徴は、第1に、高高度迎撃型のSH−11ゴーゴンと低高度迎撃型のSH−08ガゼルという2種類の迎撃ミサイルを組み合わせた2段迎撃方式をを採用した事で、これによって迎撃の確実性を上げている。このように2種類のミサイルを組み合わせる弾道ミサイル防衛システムは、アメリカのセーフガード・システム(ナイキ・スパルタンとナイキ・スプリントの組み合わせ)と同じ発想である。第2に、発射機が地下に建設されたことである。ABM−1システムでは発射機が地上に露出しており、その脆弱性が問題になったが、ABM−3システムでは発射機が地下サイロ方式になったことで、生存性が向上している。

 また、レーダー・システムの構成も変更が加えられた。ABM−1で使用していたドッグ・ハウスがピル・ボックス(ロシア名:ドン2NP)に更新され、低高度迎撃システム用にフラット・ツインとポーン・ショップという2種類の新型レーダーが開発されている。

 ABM−1からABM−3への転換は段階的に行われ、1980年にまずモスクワ周辺にある4つの発射基地のうちツラコボとボルチェンスキー2ヶ所が実戦配備から外された。これによりABM−1b/SH−04ガロッシュの発射基地はクリンとヌドルの2ヶ所に減少し、発射機数も100基から36基に減少してしまった。

 ツラコボとボルチェンスキーの発射機は撤去され、代わりに高高度迎撃ミサイルSH−11ゴーゴン用の地下サイロの建設が始まった。同時に、モスクワ郊外の5ヶ所(ジェルジンスキー、ヴノコボ、ミティシュチ、アレシノ、ゼルヤビノ)でも地下サイロの建設が始まった。これらは低高度迎撃ミサイルSH−08ガゼル用である。

 ABM−3システムの開発に当たっては、新型戦闘管理レーダー ピル・ボックスの開発が難航したようで、このレーダーの完成は1987年まで待たねばならなかった。この年までに既存のABM−1b/SH−04ガロッシュは16基にまで減少していた。その後、1988年になってレーダーのテストが開始され、1989年には一部のシステムが作戦状態に入ったと言われている。しかし、この頃から深刻化した経済危機とソ連崩壊の影響で、ABM−3システム全体の完成はさらに遅れ、結局システム全体が完成したのは1995年であった。

 

<SH−11ゴーゴン>

 SH−11ゴーゴン(ロシア名:51T6)は高高度での迎撃を担当するミサイルで、最大有効射程350km、最大射高100〜120kmの能力を持つ。

 ミサイルは、ABM−1b/SH−04ガロッシュから発展した設計で、ガロッシュと同じように1段目が固体燃料、2段目が液体燃料の2段式で、1段目に固体燃料を用いたのは急速な加速力を得るため、2段目に液体燃料を使用したのは運動制御をやりやすくするためだといわれる。ちなみに、ミサイル発射は、1段目の固体燃料に点火しての自力上昇であり、地下サイロはこれにより相当なダメージを受け、発射後当分の間は使用不能になる(ちなみに、ABM条約では再装填可能型の配備を禁じている)。寸法はかなり大型で、全長約20m、胴体の最大直径は2.5m程度、発射重量は30トンにも達する。

 誘導は地上の戦闘管理レーダーによるレーダー・コマンド式で、敵の核攻撃の最中に使用することが想定されるので、放射線防護能力には特に重点が置かれている。また、万が一、地上からの誘導が途絶えたとしても、慣性によって自動的に目標へ飛翔する能力を持っている。

 ミサイルの弾頭は、10キロトンの核弾頭である。ガロッシュではメガトン級の核弾頭を搭載していたから、その威力はかなり減少している。これは、命中精度の向上でそれほどの威力が必要なくなったためだ。メガトン級という強烈な核弾頭を搭載する必要がなくなったおかげで、地上への被害もガロッシュより格段に少なくすることができた(とはいっても77平方マイルの面積が汚染される)。

 SH−11ゴーゴンは、現在、旧ガロッシュ用の4ヶ所の基地(ツラコボとボルチェンスキー、クリン、ヌドル)に、それぞれ8基ずつ合計32基配備されている。

 

<SH−08ガゼル>

 SH−08ガゼルは低高度での迎撃を担当するミサイルで、最大射程80km、最大速度マッハ10の能力を持つ。

 このミサイルは全長10m、最大直径1mの1段固体燃料ミサイルで、大きな加速力が特徴である。その加速度は通常の地対空ミサイルの10倍にもなるという。そのため、ミサイルは円錐形をしており、SA−12の技術が応用されている。また、ミサイルには空力制御舵面は1つもなく、ガスの噴射によってその制御を行う世界初のガス・ダイナミック式制御システムを採用している。ミサイルの弾頭はSH−11ゴーゴンと共通である。

 誘導は、地上のレーダーによるレーダー・コマンド式だが、誘導レーダーはガゼル用の独自のシステムが開発されている。このレーダーはNATO名フラット・ツインとポーン・ショップで、フラット・ツインがミサイルと目標の追尾を行い、ポーン・ショップはミサイルに指令を送る役割を果たす。

 SH−08ガゼルは、新規に建設された5ヶ所の基地(ジェルジンスキー、ヴノコボ、ミティシュチ、アレシノ、ゼルヤビノ)に合計64基配備されている。

 

<システム・レーダー>

 ABM−3(A−135)システムの中枢頭脳は5K80P指揮司令部で、防護措置が施された地下司令部になっているが、その所在はいまだ不明である。この司令部と弾道ミサイル早期警戒システムや宇宙空間監視システム、そしてABM−3システムを運用する防空軍司令部とデータ回線で結ばれている。

 ABM−3システムは、ゴーゴン/ガゼル迎撃ミサイルの他にいくつかのレーダーシステムから構成されている。

 

□ ピル・ボックス戦闘管理レーダー

 モスクワ北方のプシキノ近郊、北緯56度10分、東経37度45分に位置する戦闘管理レーダーで、ABM−1システムのドッグ・ハウス戦闘管理レーダーの後継となる新型フェイズドアレイ型レーダーである。「ピル・ボックス」はNATOコードネームで、西側ではプシキノ近郊に建設されたことから「プシキノ・レーダー」と呼ばれたりもしたが、ロシア名はドン2NPという。

 このレーダーは150m四方のピラミッド形をしており、高さは45mと実に巨大な建造物である。このレーダーの建造は1978年から始められたが、一説には3万2000トンの鋼材、5万トンのコンクリート、1万2000kmの電線が使われたという。実用化に難航し、レーダーの完成までに9年を要し、1987年に完成し、1988年から試験が始められた。

 それぞれの面には直径16mのフェイズドアレイが取り付けられており、360度をカバーしている。探知距離は2000km程度で、宇宙空間を飛翔する数センチ規模の物体でも探知することができる。用途はキャット・ハウスからの情報を元により精密な解析をし、迎撃ミサイルを誘導することである。そのため、当時としては高速のコンピュータが搭載されており、目標位置を探知すると、その位置を自動的に計算し、軌道を測定するとともに、実弾頭をおとりの弾頭や妨害装置などから区別する識別解析をリアルタイムで行う能力を有する。

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□フラット・ツイン目標追尾レーダー

 ABM−2/S−225道路移動型ABMシステム(開発中止)の構成要素の1つであったと推測されるSH−08ガゼル用のレーダー。2基の平面アンテナを持ち、弾道ミサイルの大気圏突入時における最終的な追尾を担当する。

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□ポーン・ショップ誘導用レーダー

 フラット・ツインと同じくABM−2システムの構成要素の1つであったと思われるSH−08ガゼル用の誘導レーダー。3基のアンテナを持ち、ミサイルに指令を送る。

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□キャット・ハウス目標追跡・識別用レーダー

 モスクワ南方(北緯55度08分、東経37度09分)に建設された、目標追跡・識別用のフェイズド・アレイ型レーダー。ABM−1システムに引き続き、ABM−3システムでもその構成要素の1つとなっている。宇宙区間を飛翔中の目標の初期識別を行い、その目標情報を戦闘管理(BM)レーダーに伝える役割を果たす。

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□ペチョラ早期警戒レーダー

 ペチョラ(ロシア名:ダイヤル)は、ABM−3システムの開発着手とほぼ時を同じくして開発された新型フェイズド・アレイ型早期警戒レーダーで、発信部と受信部が数百m離れて設置されているのが特徴でだ。発信部と受信部はそれぞれ幅90m、高さ30m以上という巨大な構造物で、最大探知距離は6000kmにも及ぶ。

 このレーダーのプロトタイプはコミ自治共和国北東部の都市ペチョラ近郊に、1978年から建設が始まり、1983年に完成した。以後、10年間の間にペチョラと合わせて10ヶ所のレーダー基地が建設された。現在の稼動基地は7ヶ所である。

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AD2005/02/04 Update

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