| Armament
| 魚雷 |
533mm魚雷発射管×4門 53−45魚雷8本搭載 |
| 対空砲 |
2M−8 25mm連装対空機関砲×1基 |
Systems
| ソーナー |
・タミール5Lアクティブソーナー ・MARS−16KEGパッシブソーナー
・MG−23スヴィートM逆探 |
| レーダー |
・RLK−101ナーカト(スヌープ・トレイ1) |
Development & History
AIP開発史
ケベック級潜水艦(ロシア名:プロジェクト615)は、世界最初のAIP(大気独立型推進)方式の実用潜水艦である。
従来のディーゼル・エレクトリック推進の潜水艦は水上ではディーゼル機関で航行しながら蓄電池を充電し、水中では電動モーターによって推進するするが、この方式では速力を上げると蓄電池の電力があっという間に尽きてしまうし、水中航続距離も短く、水中での行動が著しく制限されてしまう。
そこで、研究されたのが空気に依存しない推進方式で、原子力機関もAIPの一種と言える。原子力機関以外では、CCD(クローズド・サイクル・ディーゼル)や燃料電池、スターリング機関などがある。
旧ソ連ではこの種のAIP機関の研究に熱心で、まだ潜水艦が実用化され始めたばかりの1912年には、既にクローズド・サイクル・ディーゼル方式(CCD方式)のAIP研究を開始している。さらに、1930年代には実用型CCD型システムを開発可能なまでになっていた。
実際、M−92潜水艦(プロジェクト80)はREDOと呼ばれるCCD機関を搭載し、試験に従事していた。計画は、ナチスの侵略によって計画は大幅に遅れることになった。しかし、戦争中もAIP研究が続けられ、戦後になってM−92は、REDOの発展型YeD−VVDエンジンに換装している。
一方、プロジェクト80と平行してプロジェクト95と呼ばれる計画も進行していた。プロジェクト80がYeD−VVDエンジンを採用したのに対して、プロジェクト95ではYeD−KhPlエンジンを採用し、大戦中にM−401と呼ばれる実験用潜水艦によってテストされた。
また、大戦後、ソ連はドイツのワルター・タービンの技術も入手している。ソ連はワルター・タービンを搭載した実験艦ホエール級(プロジェクト617)を建造した。しかし、ワルター機関は使い物にならず、またドイツの技術から得るものは無かったので、ソ連のAIP潜水艦の開発にはほとんど影響を与えなかった。事実、ワルター・タービン艦は翌年に爆発事故を起こし、ワルター機関は破棄された。
ケベック級の開発
戦前または第二次世界大戦中、沿岸防衛用の潜水艦はM級が主力であった。このM級潜水艦の改良型がプロジェクト96で、1942年に出現したさらなる改良型をプロジェクト105という。これらの潜水艦は、戦後の沿岸防衛用潜水艦の基礎となった。
1944年、戦術技術要求(TTZ)が出され、水上速力16ノット、水中速力8ノット、艦首に4門、艦尾に2門の魚雷発射管を備えた300トンクラスの沿岸防衛用潜水艦の開発が要求された。さらに、1946年には船体規模が400トンクラスに拡大している。
この要求を満たすために、2種類の潜水艦が開発された。1つはプロジェクト612で、従来型のディーゼル・エレクトリック機関を採用し、M級潜水艦の直接的な後継艦と言えるプロジェクトである。もう1つは、CCD方式のAIP機関を採用したプロジェクト615(ケベック級)で、M−401(プロジェクト95)から発展した艦である。
ケベック級のカタログデータは非常に高性能であった。そのため、ソ連の次期沿岸防衛用潜水艦としてCCD機関を搭載したケベック級が建造されることになった。
ケベック級の設計作業は、TsKB−18設計局が担当し、1953年5月にケベック級のプロトタイプ「M−254」(プロジェクト615)が完成した。
設計
ケベック級の船体はサドルタンク式で、ジェラルミン製のセイルを有する。船体内部はA、魚雷室 B、居住区・電池室 C、発令所・居住区・ギャレイ D、居住区・液体酸素タンク E、M−50ディーゼルエンジン F、37−Dディーゼルエンジン 以上7つの区画に分かれている。
ケベック級の最大の持ち味はAIP(大気独立型推進システム)艦であるということである。そのため、長時間浮上する必要が無い。ケベック級は、AIP機関にクローズド・サイクル・ディーゼル(CCD)方式を採用している。
CCD方式は基本的に酸素とアルゴンのような不活性ガスを混合した「人工空気」を使って、水中でも通常のディーゼル機関を駆動しようとするもので、酸素含有量は大気と同じ21パーセントに保たれる。ディーゼルエンジンから出た排気は、二酸化炭素・不活性ガス・水蒸気の混合物で、350〜400度の温度がある。これをまず80度程度に冷却し、セパレーターを通して不活性ガスを回収、次に海水に混合して二酸化炭素を溶解させてから艦外に放出する。
ケベック級は3軸推進で中央軸に32−Dディーゼルエンジンを装備し、左右軸にそれぞれ加速用にM−50航空用ディーゼルエンジンを装備する。また、無音潜航用にPG−106(68軸馬)電動モーターと23−MU 60セル電池を装備している。ただし、このM−50ディーゼルエンジンは運転寿命が300時間と非常に短い。
全ディーゼルエンジンは緩衝材付きの据付台座に載せられ、特にディーゼルエンジンでの潜航時の航走雑音の低減に配慮している。
武装としては、53cm魚雷発射管を艦首に2門装備していた。
生産型「プロジェクトA615」
プロトタイプのM−254の試験中に、いくつかの問題点が明らかになった。
まず、M−50ディーゼルエンジンの信頼性の低さと、運転寿命の短さが問題になった。また、液体酸素の気化による水中航続距離の減少も問題であった。
そのため、これらの欠陥を改良した生産型のプロジェクトA615が開発されることになり、設計は新しく開設されたTsKB−16設計局に移された。
主な改良点は、2つあった液体酸素タンクを1つに統合し、気密性を向上させたことと、M−50ディーゼルエンジンの出力を700馬力に落として運転寿命の倍増させたことである。また、左右軸には新型のクラッチが装備された。逆に、電動機の出力は68馬力から100馬力にパワーアップされている。
武装も、53cm魚雷発射管の数が4門に倍増、予備の魚雷を搭載できるようになり、魚雷の搭載数が8本になった。
AIPの問題
1955年、ケベック級潜水艦の配備が開始された。しかし、部隊での運用を通して、ケベック級のAIP推進機関の問題が再びクローズアップされた。
ケベック級は、高圧酸素タンクを搭載し、その酸素でディーゼルエンジンを駆動するクローズド・サイクル・ディーゼル(CCD)方式のAIP機関を採用していたが、高圧酸素の取り扱いは非常に難しく、その配備期間を通して、頻繁に発生する火災と、爆発事故に悩まされた。
1950年代後半には改良型のプロジェクトM615が開発され、改良工事が施されたが事態はそう改善せず、依然として信頼性は低いままであった。
そのため、プロジェクト633(ロメオ級)潜水艦やプロジェクト631潜水艦へのCCD機関の採用は中止となった。
歴史
ケベック級、1953年〜1962年にかけてレニングラードのスドメク造船所(第196造船所)において31隻(計画では96隻+)が建造された。うち、1番艦M−254はプロトタイプのプロジェクト615で、最終艦M−361は改良型機関を搭載した試験艦で、プロジェクト637と呼ばれる。なお、プロジェクト637を含まず、プロジェクト615だけなら、建造数は30隻となる。
ケベック級は1960年代を通して現役に留まっていたが、その信頼性の低さが災いし、次第に現役を退いていった。最後の艦が退役したのは、1970年代前半のことである。
信頼性の低さが問題となった一方で、AIP機関を搭載したケベック級が卓越した性能を有していたことも事実である。1961年には、ケベック級のM−321がバルト海を潜航したまま1周することに成功した。さらに、1962年にもM−356が同じ偉業を成し遂げている。これらの記録は、従来のディーゼル潜水艦の能力を遥かに超えるものであった。
しかし、海軍の関心が原子力潜水艦に移ったため、ケベック級の後継艦が建造されることは無かった。ちなみに、次にAIP機関を搭載した実用潜水艦が建造されたのはロシアでは無くスウェーデンで、1996年にゴトランド級が就役している。世界初のAIP潜水艦ケベック級の就役から、実に43年後であった。
建造艦データ
| No |
艦番号 |
造船所 |
起工 |
進水 |
就役 |
DATA |
| 1 |
M-254 |
SY196 |
1950/3/17 |
1950/8/31 |
1953/5/30 |
プロトタイプ |
| 2 |
M-255 |
SY196 |
1954 |
1954 |
1955 |
|
| 3 |
M-256 |
SY196 |
1954 |
1954 |
1955 |
|
| 4 |
M-257 |
SY196 |
1954 |
1954 |
1955 |
1956火災事故 |
| 5 |
M-258 |
SY196 |
1954 |
1954 |
1955 |
|
| 6 |
M-259 |
SY196 |
1954 |
1954 |
1955 |
1956爆発事故 |
| 7 |
M-260 |
SY196 |
1954 |
1955 |
1956 |
|
| 8 |
M-261 |
SY196 |
1954 |
1955 |
1956 |
|
| 9 |
M-262 |
SY196 |
1955 |
1955 |
1956 |
|
| 10 |
M-263 |
SY196 |
1955 |
1955 |
1956 |
|
| 11 |
M-264 |
SY196 |
1955 |
1955 |
1956 |
|
| 12 |
M-265 |
SY196 |
1955 |
1955 |
1956 |
|
| 13 |
M-266 |
SY196 |
1955 |
1955 |
1956 |
|
| 14 |
M-267 |
SY196 |
1955 |
1956 |
1956 |
|
| 15 |
M-268 |
SY196 |
1955 |
1956 |
1956 |
|
| 16 |
M-269 |
SY196 |
1955 |
1956 |
1957 |
|
| 17 |
M-295 |
SY196 |
1955 |
1956 |
1957 |
|
| 18 |
M-296 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1957 |
1957沈没 |
| 19 |
M-297 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1957 |
|
| 20 |
M-298 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1957 |
|
| 21 |
M-299 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1957 |
|
| 22 |
M-300 |
SY196 |
1956 |
1957 |
1957 |
|
| 23 |
M-301 |
SY196 |
1956 |
1957 |
1957 |
|
| 24 |
M-321 |
SY196 |
1956 |
1957 |
1958 |
|
| 25 |
M-351 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1956 |
|
| 26 |
M-352 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1956 |
|
| 27 |
M-353 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1956 |
|
| 28 |
M-354 |
SY196 |
1956 |
1956 |
1956 |
|
| 29 |
M-355 |
SY196 |
1956 |
1957 |
1958 |
|
| 30 |
M-356 |
SY196 |
1957 |
1957 |
1958 |
|
| 31 |
M-361 |
SY196 |
1958 |
1959 |
1962/8/24 |
プロジェクト637 |
Variants
・ プロジェクト615: プロトタイプ。M−254がこれに当たる。
・ プロジェクトA615: 生産型。
・ プロジェクトM615: 改良型。
・ プロジェクト637: 発展型AIP機関の試験艦。M−361がこれに当たる。

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