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SA−7グレイル携帯用地対空ミサイル

SA-7 Grail Surface-to-Air Missile

 

Specifications

形式 携帯用地対空ミサイル
名称 ロシア名: 9M32ストレラ−2

NATO名: SA−7グレイル

海軍型: SA−N−5(NATO名)

部隊配備年 1966年
全長 1.44m
直径 7.2cm
翼幅 30cm
ミサイル重量 9.2kg
発射機 携帯式
誘導方式 赤外線ホーミング
燃料 2段固体燃料
最大射程 SA−7: 3600m

SA−7B: 4200m

最大射高 SA−7: 1500m

SA−7B: 4300m

最小射高 SA−7: 150m

SA−7B: 23m

最大速度 SA−7: マッハ1.5

SA−7B: マッハ1.95

弾頭 1.15kgHE破片効果
設計 Kolomna設計局
使用国 ロシアを含む56ヶ国
     

Development & History

<開発>

SA−7グレイルはロシアの第1世代の携帯用小型地対空ミサイルで、1959年に開発が

始まり、1966年に部隊配備が開始された。これがSA−7Aであったが、このミサイルは

欠陥があったといわれ、1971年にはシーカーやモーターを改良したSA−7Bグレイル

が登場している。SA−7の最大の特徴は極めて小型なことで、歩兵が肩にかついで発射

することができ、歩兵部隊も有力な対空戦闘能力を持つに至ったことは特筆すべきこと

である。しかし、この種のミサイルは安価であるため、世界中に拡散しており、現在ではテ

ロリストによって使用される危険性も指摘されており、事実、2002年11月にはイスラエ

ルの旅客機がケニアのモンバサの空港を離陸直後にSA−7グレイルによる攻撃を受け

ている。

 

<設計>

SA−7グレイルは携帯用の小型地対空ミサイルで、誘導方式は赤外線ホーミングを採用

いている。つまり、熱源、特に航空機のエンジン排気などにホーミングする方式である。

そのため、SA−7は常に遠ざかる航空機を背後から射撃し、ミサイルは目標機の後部

直後で爆発する。一方、改良型で後期型のSA−7Bグレイルは射撃角度がやや広くなり

、目標機の中心線から30度以内の範囲内であれば射撃できるようになった。また、ヘリコ

プターなどの風防に反射した光が熱源になって、これにホーミングすることもあったとい

う。

目標機を後方から射撃するため、ミサイルは常に目標機を追いかける形になる。このた

め、初期型のSA−7は、飛行速度500ノット以上の航空機には射撃できず、最も効果の

あるターゲットは飛行速度250ノット以下の航空機に限られた。

SA−7のシーカー・ヘッドは、現代のミサイル違って、感度を上げる冷却タイプではない。

そのため、目標でない擬似の熱源に対してホーミングしてしまうことが多くあった。例えば

、ミサイルの飛翔方向から20度以内に太陽があれば、目標よりも太陽に向かって飛翔

してしまう。また、射角が20度〜30度以下になると、ミサイルは地上の熱源を捕らえて

落下してしまうことがあった。このため、匍匐飛行するヘリコプターなど、超低空を飛行す

る航空機には命中しないことも多かった。

1970年代に登場した改良型のSA−7Bでは、より精巧な誘導装置を採用し、シーカー・

ヘッドに新たにフィルターをつけている。また、射程と有効最高高度も大きくなった。事実、

オマーン空軍のホーカー・ハンター戦闘攻撃機は、高度3423mを飛行中に撃墜されて

いる。

 

<使用方法&交戦要領>

まずは、目標を発見することであるが、SA−7グレイルの射手は、目視で敵味方の識別

を行い、目標を捕捉する。ただし、小隊は無線で対空警報を受領することもできる。次に

、射手は使い捨て式のファイバーグラス製容器ごとSA−7ミサイル本体を発射機に装填

する。そこで、撃鉄を押してシーカーを作動状態にする。このシーカーには、熱源に敏感

な反射式光学器材が入った自動追跡装置が密封されている。また、飛翔安定用のジャイ

ロとしての作用も兼ねるといわれるが、これがSA−7の不安定性の原因にもなっている。

シーカー・ヘッドが作動を開始すると、目標捜索が始まり、発射機の赤色灯が点灯する。

そこで、射手は発射機を目標機に向ける。もし、シーカー・ヘッドの赤外線探知機が敵機

の熱源を捕捉すると、緑色灯が点灯する。この状態になって射手はミサイルを発射する

ことができるのである。

まず、ミサイルは、発射筒内で第1段ロケットが噴射し、射手から安全距離外に飛翔す

る。そこで尾翼が開き、第2段ロケットが噴射を開始してミサイルは最高速度まで加速され

る。シーカー・ヘッドは、反射する熱源の角度を測定し、誘導装置は、ミサイルの可変翼を

動かして、シーカー・ヘッドの向きとミサイルの飛翔方向を一致させる。飛翔中のミサイル

は弾道を安定させるため、反時計回りに回転する。こうして、ミサイルは見かけの追跡コ

ースを飛翔し、目標に命中、敵機を破壊する。ただし、15秒飛翔しても目標に命中しない

場合は自爆するようになっている。

 

<運用>

SA−7グレイル携帯用地対空ミサイルは、旧ソ連軍では自動車化狙撃小隊の対空自衛

火器として使用されていた。小隊のSA−7射手は、APCのハッチを解放して立姿で対空

射撃の準備を整える。小隊が下車攻撃を行う場合、射手は、相互に15〜20mの間隔を

保って、中隊の第1線の後方20〜30mを前進する。防御の場合は、各小隊の拠点内に

射撃陣地を占領する。

1973年の中東戦争におけるエジプト軍は、もっと集権的な方法をとり、3名の射手で1個

グループを編成して一斉射撃する戦法を採用した。また、旧ソ連軍もエジプト軍も、車載

した3連装または4連装の発射機も使用していた。

SA−7グレイルは、地対空のみならず空対空ミッションにも用いられている。これは197

0年以降のことで、Mi−2ホプライト、Mi−24ハインド、ユーゴスラビアのガゼルなどの

ヘリコプターに搭載された。さらに、旧ソ連海軍でもSA−7を使用し、海軍バージョンの

SA−7を西側ではSA−N−5と命名している。

 

<回避方法>

初期のSA−7グレイルは、妨害手段に極めて脆弱で、落ちていて対処すればかわすの

は容易である。例えば、SA−7は目標機から放出されるデコイ(おとり)に簡単におびき寄

せられた。後期型では、擬似熱源の影響を遮断するため、シーカー・ヘッドにフィルターを

組み込んだといわれるが、これも光度の違うフレア(デコイ)を一斉に投下すれば、SA−7

のシーカーがどのようにセットされていても、ミサイルはおとりをロックオンしてしまう可能

性が高い。

また、急旋回して太陽の方向に飛行するのも有効である。大部分の初期の熱源ホーミン

グ・ミサイルと同様に、航空機を急旋回して太陽の方向に飛行すると、SA−7ミサイルは

太陽に向かって飛翔してしまう。

 

<実戦運用>

SA−7グレイル携帯用地対空ミサイルは1967年の中東戦争で初めて使用され、1969

年からは北ベトナム軍にも配備され、ベトナム戦争に投入された。当初は、米軍の攻撃

ヘリコプターや輸送ヘリコプターに対して、33%という高い撃破率を誇り、O−2E、A−1

スカイレーダー軽攻撃機、C−130ハーキュリーズ輸送機などの低速固定翼機も数機撃

墜している。そのため、これらの低速機は高度1830m以上で行動することを余儀なくさ

れた。その後、奇襲効果が無くなって、戦果も減少した。SA−7の撃破率が低い理由は、

誘導システムの不確実性によるもので、大部分は、「イルカ」のような飛び方をし、命中し

ないことが多かった。

SA−7が最も大量に使用されたのは1973年の第4次中東戦争の時である。この戦争で

、アラブ軍がSA−7を大規模に使用し、一説には発射機数1468基、発射弾数は4356

発にのぼると言われている。しかし、その戦果は思いのほか少なかった。完全に撃破、つ

まり撃墜されたイスラエル軍機は、わずか2機である。そのほか、SA−7によって撃破さ

れたと推定されるもの4機、尾翼を破損し数時間の修理を要したもの28機、エンジンに損

傷を受けて数日飛行停止を余儀なくされたもの数機であった。SA−7のこうした戦果の少

なさは弾頭威力の不足、妨害に対する脆弱性、敵機の後方からしか射撃できないという

制限、操作要員の訓練不足などが原因になっている。

SA−7はアフガニスタン紛争でも使用されている。皮肉なことにSA−7のターゲットにな

ったのはSA−7を開発したソ連の航空機であった。1983年1月にはSA−7でソ連軍の

Mi−8ヒップ輸送ヘリコプター8機が撃墜されたという。しかし、自国製であるがゆえにソ

連側のSA−7対策は早かった。ソ連はSA−7ミサイルの弱点を知り尽くしていた。SA−

7の誘導手段が赤外線ホーミングであることを逆手にとって、戦闘機やヘリコプターにオト

リの赤外線源を発射するフレアディスペンサーを搭載したのである。これによってSA−7

による被害は減少した。

 

<拡散する脅威〜テロリストによる民間航空機攻撃〜>

SA7ミサイルの効果は必ずしも満足の行くものでは無いが、操作容易なSA7は、世界各

地のゲリラや反乱軍、テロリストにとって魅力的な兵器である。SA7を調査した米軍によ

ると、1日の訓練でSA7を扱える射手を養成できるという。例えSA7に性能上の欠陥があ

ったとしても、ゲリラにとっては性能の悪い反乱軍鎮圧用の航空機に対して十分な効果を

発揮する有効な対空用戦闘兵器である。

近年ではこの種のミサイルがテロリストの手に渡ることが心配されるようになった。これま

で、離着陸時の軍用輸送機などはよく狙われていたが、これと同じように民間旅客機まで

もが離着陸中に攻撃を受ける事態が2002年11月に発生した。イスラエルの旅客機が

ケニアのモンバサ空港を離陸直後にSA7ミサイルによる攻撃を受けたのである。この便

には多くのイスラエル人観光客が乗っていたが、幸いにもミサイルは命中しなかった。

しかし、この事件ではミサイルは命中しなかったが、離着陸中の航空機はミサイルにとっ

て最も撃墜しやすいターゲットであると言える。そのため、今後も携帯用小型地対空ミサイ

ルによるテロ事件の発生が懸念される。

 

Variants

○SA7Aグレイル(9M32ストレラ−2): 最初の量産型

○SA7Bグレイル(9M32ストレラ−2M): シーカー、弾頭、モーターを改良した発展型

○SA7C: 新しい発射管のグリップとパドルアクセンブリを取り付けたタイプ

○SA−N−5: SA−7グレイルの海軍バージョン

 

 

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AD2003/03/22 Update

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