ライマン・フランク・ボーム
「オズの魔法使い」
もはや古典、と思うのも、映画でおなじみになっているからではあろう。かかし、ブリキのきこり、ライオンともに、欲しがっているものを、じつは最初から持っている、というのは奥深い。〔2022・10・30(日)〕


ラドヤード・キプリング
「ジャングル・ブック」

少年モウグリ、ヒグマのバルー、黒ヒョウのバギーラ、蛇のカーがメインキャストなんだね。人間のバカなところも描かれて、考えさせられるのであった。〔2019・11・20(水)〕


ラ・フォンテーヌ
「ラ・フォンテーヌ寓話」

いなかのネズミと都会のネズミ、首の長い器に入ったご馳走を食べられないキツネなど、知っている話がいくつかある。独特な挿絵が魅力。〔2019・7・18(木)〕


リタ・メイ・ブラウン&スニーキー・パイ・ブラウン
「町でいちばん賢い猫」
トラ猫ミセス・マーフィが主役のミステリ・シリーズ第1弾。
読み始めてから知ったのだが、町長の妻で通称ビッグ・マリリンと、その娘でリトル・マリリンが登場!
私が猫好きなので、猫が活躍するミステリーに、どんなのがあるかなと思って探してみたら、こんなのが見つかったというわけ。
町の郵便局長ハリー(女性)は、トラ猫のミセス・マーフィと、コーギー犬のティー・タッカーを飼っている。
小さな町の郵便局長ということで、ハリーは郵便局の私書箱に手紙を取りにくる人々と、毎日のように顔をあわせて世間話などもする。
ハガキの内容も、ほんとはいけないことだけど、見てしまったりして、今回はハガキが事件とも関係するので、なおさらハリーは事件に巻き込まれることになる。
ミセス・マーフィとティー・タッカーは、いいコンビ。事件に興味をもち、他の猫や犬とも協力して、いろいろと調べちゃう。
動物たちの会話は、人間には、ただ鳴き合っているとしか聞こえない。
ハリーは別居中の獣医の夫と離婚しようかという難しい段階にある。精神的にもキツイ時。そういう人物関係の工夫で話をおもしろくする。
正直いって、推理の部分はライト。軽い。そこに重きは置いていないように思える。
動物、人間のキャラクターで読ませるシリーズみたいですね。
著者の名前にある、スニーキー・パイは、リタ・メイ・ブラウンの飼い猫。この本は、じつはスニーキーが書いた、というユーモラスな設定も。
軽く読めるし、マリリン関係だし(名前だけ)、続編も読んでみようか。〔2009・4・14(火)〕

「雪のなかを走る猫」
シリーズ2作目。
猫と犬がいて、納屋があって馬がいて…という、自然のなかの素朴な暮らしの描写が、なんだかいいなあと思うのだ。
ビッグ・マリリンとリトル・マリリン母娘も元気です。ビッグのほうは出番が少なかったかな。
ついに離婚したハリーだが、となりの土地に、モデルの仕事をしている男性が都会から引っ越してくる。
この男が感じのいい人間で、となりのよしみもあって、暮らしていくうえの相談に乗ったりするうちに、ハリーと彼の仲は、いいムードに。
朝、早く起きて、動物の世話をしたりしてから、猫のミセス・マーフィと犬のティー・タッカーといっしょに長い距離を歩いて職場の郵便局に行くハリー。
決して裕福でなくても、日々、自然とともに生きる充足のようなものが感じられる。
こういう暮らし、してみたい。でも映画もたくさん観たいから、田舎すぎても困るんだよね。そこが難しいところです。
今回は、猫、犬、馬に加えて、オポッサムとフクロウとヘビも、最後の犯人逮捕に活躍するという、豪華さ(?)。
オポッサムって、どんな動物だ?と思いながら読んでいたが、このシリーズにはイラストがついていて、そこにオポッサムの絵も出てきた。
ネズミの仲間かなと思ったが、あとで調べてみたらカンガルーやコアラと同じ有袋類だそうだ。見かけはネズミっぽっくもあるんだけど、これは何かといったら、オポッサムだとしかいえないんだろうなあ。
犯人に関係するものかもしれないイヤリングを見つけて、それをつけてパーティーに出るなんて、ハリーは今回も無茶してます。怖くないんですか、あなたは。
それとは関係ないまでも、結局は危ない事態に巻き込まれるハリー。これから、ずっと、そういう運命、そういうお約束なのだろうか。ヒロインも大変です。〔2009・6・2(火)〕

「かくれんぼが好きな猫」
「トラ猫ミセス・マーフィ」シリーズ第3弾。
今回は、第3代アメリカ大統領トマス・ジェファーソンがらみの話。
ジェファーソンの邸宅だった「モンティチェロ」の発掘調査中、黒人女性の住居跡から白人の遺骨が発見される。その頭部には、陥没したような形跡が。
黒人奴隷の家で、白人男性が殺された?
その謎を解こうとするなか、さらに事件が起きる…。
正直いって、家系がどうの、先祖に、こういう人がいて…と言われても、頭の中に系図を組み立てられないので、よく分からなくなる。
しかもジェファーソンに興味はないから、なおさら分からない。というか、分かろうとする気があまりない。
でも、ヒロインのハリーや、おなじみのご近所さんたち、猫や犬が活躍するので、そういうところが楽しめるわけですね。
ハリーと元夫の仲が修復されてきたり。(第2巻で仲良しになったお隣りの男性は、今回いらないとばかり、外国に行って不在なのだ! ええっ!?)
ミム(マリリン)の性格が、ある出来事のために、よくなっていたり。
トマス・ジェファーソンは、アメリカ独立宣言の起草委員で、奴隷制度に反対する一方、多くの奴隷を所有していたとも言われる。
そんな内輪の話も出てくるし、今回の事件は、黒人差別の根が深く横たわっていることが原因といえるもの。
犯人については、今回は工夫ありです。
猫や犬たちは、タイトルになっていても、それほどには事件解決のメインではなく、大事なポイントで役立っているというところ。
邦題については、どうやら「〜(な)猫」で統一するつもりらしく、原題とは、まったく違いますね。〔2009・6・17(水)〕

「森で昼寝する猫」
シリーズ第4弾。
町の銀行にコンピューターウイルスが!?
一方、不審な人物が登場し、やがて事件が…。
男ひとりに女ふたりの三角関係は、一触即発に。
さらに、主人公にも、ふたりの男との三角関係が。どうするんでしょうね。
今回は、男を奪い合う2人の女の存在が、すごいです。
周囲では、たいしたことない男なのに、なんて言ってたりするのが、ありそうな話で笑える。
しかし、思い返してみても、ミセス・マーフィ、森で昼寝はしていなかったような…。
読んだけど忘れたのか?
それとも、テキトーなタイトルですか?
原題の“PAY DIRT”を調べると、口語で「、もうけもの、掘り出し物」という意味があった。
なるほど、こちらのほうは、内容との関連性、分かります。〔2009・9・22(火)〕


ルイザ・メイ・オルコット
「若草物語」

図書館にあった、子ども向け編集のものを。映画で知ったストーリーをなぞっていった感。本作はお父さんが家に帰ってきたあたりで終わっていて、映画は原作の続編も含んでいるんだなとわかった。〔2022・1・19(水)〕


ルイス・キャロル
「スナーク狩り」

ルイス・キャロルの作品に、トーベ・ヤンソンが絵を描き、穂村弘が五七、五七…七の長歌形式でテンポよく大胆に翻訳した、ノンセンス叙事詩。ヘンリー・ホリデイ挿画版も以前にある。…まあ、ナンセンスですわな。人生と同じように、ただ、そうなっているだけなのか。〔2018・2・24(土)〕

「不思議の国のアリス 新訳
以前読んだときも、特段面白くはないと思っていて、今度も同様。子どものときに読んだら面白いのか。ナンセンスに慣れちゃったというか、客観的に見てしまうのがいけないのだろう。訳:佐野真奈美〔2020・12・10(木)〕


ルーシー・フリーマン
「なぜノーマ・ジーンはマリリン・モンローを殺したか」
マリリンの死を、精神分析の視点で解説した1冊。
以下はすべて、本書によれば、という話である。多くのことは真実だと思うが、そうでないものもあるかもしれないからだ。
マリリン本人でなければ分からないこともあるのではないかと考えるからだ。
とはいえ、マリリンの心の寂しさに思いをめぐらせると、ほんとうに悲しい気持ちになる。
ノーマ・ジーン(マリリンの本名)の父親は、彼女が生まれたときから、いなかった。母子を捨てて、去っていたのだ。
残った母親も、娘を他人に預け、週末に会いにくるだけだった。しかも後に精神病院に入院してしまう。
幼いときに、親の愛情をじゅうぶんに受けずに育った人間が、精神的にトラブルを持ちやすい、とは、よく言われることだ。
ノーマ・ジーンの場合は、孤児院にもいたことがある。また、里親には、愛情をもって育てられなかったのだろうか。
本書によれば、彼女は早い時期に、幼児期の心の瑕(きず)に向き合って解決しなければならなかったのだという。
『歪んだ子供時代を過ごしたマリリンが、しだいに恐怖や怒りや苦悶を募(つの)らせ、何度も自殺未遂を犯したあげくに、怒りと恐怖が生きる意志を凌駕(りょうが)してとうとう自殺に成功したことは、いわば運命の必然だった。
マリリンは生前、自分を傷つけた人間を亡きものにしたいという願望を隠し、破壊衝動をまっすぐに自分の精神の暗い部分に投げこんだ。隠れた願望と対峙しなかった代償が、自殺だったということだ。…』(屋代通子・訳、以下同)
本書では、マリリンは自殺ということになっている。たとえ事故や他殺だったとしても、そのことが起きなかったら、自殺していた、という立場になる。
上記の「自分を傷つけた人間」には、両親も入る。
『…短い人生で関わった多くの男性との場合、マリリンは両親が自分にした仕打ちをそっくり再現している――要するに完全な切り捨てだ。…』
それは、自分を捨て、再会を拒む父親への復讐の代わり。
マリリンは晩年に、マリアンヌ・クリス(フロイトの娘のアンナと友人関係にあった人)と、これも著名な医師だったラルフ・グリーンソンという2人の精神分析医にかかったが、彼女の過去の苦しさは、すでに簡単に向き合って対処できるものではなくなっていて、ついに両親を理解して許すことにも至らず、最後にはマリリン自らを滅ぼした。
ノーマ・ジーンとマリリンの葛藤については、映画「ノーマ・ジーンとマリリン」を思わせる。
マリリンが言う。『…あの娘を振り払うことはできないみたいなの。振り払いたくても、ノーマ・ジーンはわたしのもうひとりの自我ね。…』
マリリンと付き合いがあった監督エリア・カザンの言葉も分かりやすい。
『常に危機に瀕(ひん)し、けっして自分に自信がもてず、自分という人間の正体に確信がもてずにいた』
マリリンの書いた言葉からも、このことは理解できる。
『わたしは大衆のもの、世界のものです。けれどそれは才能があるからではなく、まして美しいからでもなく、ほかのどこにも、誰のもとにも居場所がなかったからなのです』
なんて悲しい。どうにも彼女を助けることはできなかったのか。
『…マリリンはか弱いみなし子として育ち、映画を通じてそれを世間に訴えていた――マリリンの人生はまるごと哀れみと愛を乞う嘆願書だったのだ。』
〔2006・4・6(木)〕


ルース・レンデル
「殺す人形」
ルース・レンデルは、イギリスの女流作家。警部もののミステリからスタートして、ノンシリーズでは異常心理ものに特徴がある。
アメリカ、イギリスで賞を取っている。
バーバラ・ヴァインの別名でも書いている。
「ロウフィールド館の惨劇」を映画で観て、原作も読んでみたかったのだが、図書館で見つけたのは、この「殺す人形」だった。
冷徹で客観的な心理描写。
壊れて行くって、ほんとに、こんなふうなのかもしれないと思わせる。
なぜか翻訳されていない著書が多いようで残念。〔2002・7・3(水)〕

「ロウフィールド館の惨劇」
アッパー・ミドル(中流の上)の階級に属する一家の屋敷に、新しい家政婦が来る。家事の手腕は素晴らしかったが、隠されていた彼女の心の中は、石のように冷たかった。彼女は、ひとりの女性と友人付き合いを始め、すべてが悲劇に向かって動き始めた…。
この小説を映画にした「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」を、すでに観ていたので、話の筋は知っていた。
ちなみに、この映画は、クロード・シャブロル監督、イザベル・ユペール、サンドリーヌ・ボネール、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・カッセル、ヴィルジニー・ルドワイヤンが出演、という豪華なものだ。
小説で読んでみると、温かい感情を持っていない人間の描写が鮮烈。
これまでに読んできたレンデルの小説の印象といえば、詳細で冷徹な筆致といったものを感じるが、この作品は、犯罪者の造型の点でも素晴らしいのではないか。
まるで、実話のドキュメンタリーのようだ。
字が読めないこと(文盲)が、それほど大きなコンプレックスになるとは、思いもよらないが、人の気持ちは分からない。
たいしたことではないと決めつけることはできないのだね。
良心や愛情を持てない人間が、なぜ生まれてくるのか。育ってきた環境の影響が大きいと思うのだが…。〔2004・7・5(月)〕


レイモンド・カーヴァー
「必要になったら電話をかけて」
掲示板でBさんに教えてもらった作家。
この本は、カーヴァー氏の死後、発見された5編の短編を集めたもの。
共通するのは、「何かがダメになっても、それを乗り越えて人間は生きようとする」というようなことだろうか。
どの話も、何かの終わりだけでなく、前へ行こうとする意思がある。
この本の5編は、作者が生前に発表しなかったものなので、作者が納得するほど充分に練れてはいないのだろう。
でも、埋もれるよりは、世に出たほうがいいものだろうなあ、と思える。
火事、アルコール依存症、夫婦の別れ、といった話が盛んに出てくる。特に最後の2つの話は、同じテーマを少し変えて書いてみた、というふうで、発表前の段階、という雰囲気を強く感じる。〔2002・11・7(木)〕


ロアルド・ダール
「チョコレート工場の秘密」

映画で観ましたね。だいたい同じ話だったと思うけど、イボダラーケ・ショッパーとか、バイオレット・アゴストロングとか、訳者の柳瀬尚紀さんによって、子どもの名前が意訳されている。〔2018・9・17(月)〕


ローラ・チャイルズ
「ダージリンは死を招く」
ティーショップの経営者が、素人探偵に。
広告業界の仕事に疲れ果て、ティーショップをもったセオドシア。
茶葉鑑定人と菓子職人と、3人で切り盛りする店は、順調にいっている。
ところが、出張ティーサロンの夜、会場でカップを持ったまま死んでいる男が発見された!
容疑をかけられた友人の無実を証明するため、セオドシアが素人探偵となって殺人事件に挑む。
読みやすいコージー・ミステリ。
(コージーとは、居心地がいい、などという意味で、くつろいで読めるもので、ウィキペディアによれば、日常的な場面でのミステリー、探偵役が素人、容疑者が狭い範囲のコミュニティに属している、暴力表現を極力排除している、などと説明されている。)
謎解きとしては、たいして期待はしないほうがいい。コージーなんだから。
一流のティーショップ(?)だけあって、日本や中国のお茶も登場してくる。
ストーリーとは別に、レシピも付いている。
「お茶と探偵」シリーズの1巻目なので、さて、続きを読むかどうかは…気分しだい?〔2011・7・18(月)〕


ローレン・ウォーク
「その年、わたしは嘘をおぼえた」
アメリカで最も優れた児童文学に贈られるニューベリー賞の2017年受賞作。嘘をついているのは、どちらなのか。少女は自分が信じたことを貫くために自ら小さな嘘をつかざるをえない。繊細さの上に、こうして心の強さを少しずつ加えて成長していくんだねえ。〔2020・10・7(水)〕


ロバート・スレイツァー
「マリリン・モンロー 他殺の証明」
1993年出版。原題は“THE MARILYN FILES”。マリリンのファイル、です。「他殺の証明」なんていう、世間をさわがして注目させるような、あざとい題名は、やめてくれないかな。さまざまな論点から見て、ロバート・ケネディのせいで亡くなったとする。私の意見を言わせてもらえば「真相は永遠に分かりようがない」ですが。〔2015・1・9(金)〕


ロバート・ブロック
「ポオ収集家」
ロバート・ブロックは「サイコ」の原作者として知っているが、読んだことはなかった。ホラー作家といえるようで、ラヴクラフトに惹かれていたらしい(と解説に書いてあった)。
これは短編15編を収めた本。ホラーに、SF風味も混ざる。
でも、あんまり面白くなかった。最後はスピードアップして読んだ。〔2002・7・22(月)〕

それは、とても奇妙な出来事だった。
映画「サイコ」の原作者としても有名なロバート・ブロック。彼の短編集「ポオ収集家」の記事を書くために、ボーが検索していると、彼は自分のサイトの記事を発見してしまったのだ。
その記事を見ると、ボーは2002年に、すでにこの本を読んでいたのだった!
なんという恐怖!
さわさわと冷たいものが背筋をはい上がってくるのを感じた。
再読だったのに、読んでいる間そのことに気づかなかった。それ以前に、読んだことを忘れて図書館で借りたのである。
覚えていないというならば、前回読んだことは無駄だったのだろうか。いや、そうではあるまい。そのときの経験として、意味はあったのだ。
今回は、なかなか面白いと思った。
15編を収録。タイトルを書き留めておこう。そのタイトルを見て、いつになっても内容を思い出せるかどうか。
「冥府の守護神」(1936年)、「恐怖の粘土人形」(1939年)、「鉄仮面」(1944年)、「バルザックの珍獣たち」(1944年)、「サド公爵の髑髏」(1945年)、「凍れる恐怖」(1946年)、「愛のトンネル」(1948年)、ポオ収集家」(1951年)、「灯台」(1953年)、「地獄行き列車」(1958年)、「禿げ頭の蜃気楼」(1960年)、「クライム・マシン」(1961年)、「闘牛の角の下で」(1962年)、「ジュリエットの玩具」(1967年)、「生きている屍」(1967年)〔2009・10・31(土)〕