ことの終わり

B.J.「この映画、雰囲気はよく出しましたね。グレアム・グリーン氏の有名な原作を下手な映画にはできませんし」
G.G.「ろくでもない映画にされたら原作者はたまらないね。これはよくできたほうだと思うよ」
B.J.「ニール・ジョーダン監督は作家でもあるので、原作者の気持ちが分かるかと思ったのですが、原作と映画では2つ、大きな違いがあります。私は原作のままでいいと思いましたが。これから観る方のために詳しくは言いませんが、脚色して良くなったとは思えません」
G.G.「ひとつは、原作の厳しさを手加減したような印象だな。もうひとつは、そのほうが見栄えがするというか受けがよさそう、という判断なのかな」
B.J.「映画だけを観た人に、原作もこの通りだと思ってほしくないと考えませんか」
G.G.「そう考えるよ。ただ、映画に対して、原作100パーセントそのままというのは、必ずしも期待してないさ」
B.J.「私は映画を観たときよりも原作を読んだときのほうが、ぽろぽろ泣きました。そういう原作に手をいれなくてもいいじゃありませんか」
G.G.「まあまあ、そう言わずに」
B.J.「私は映画を観たら原作も読んでほしいですね。原作では主役2人の心の動きが、男の著作と女の日記の形で細かく描写されますが、さすがに映画ではそこまで表現できません」
G.G.「表現方法が違うからね。まあ、映画化としては、よくやったさ」
B.J.「この話は、男女の愛情と、神への愛(信仰)との間の苛酷なまでの『せめぎあい』ですね。私はこのような信仰を持っていなくて嬉しいですよ。こんなに苦しまないでも済みますからね。それにしても、ジュリアン・ムーアという女優さんは何を演じても見事です。作者のイメージにも近かったのではないですか」
G.G.「彼女の存在は物語の核心だからね。ジュリアンは最高だったよ。ベストチョイスといってもいいね」
B.J.「彼女は『羊たちの沈黙』の続編『ハンニバル』に、ジョディ・フォスター嬢の代わりに出演していますが、大注目ですね。続編もジョディでなきゃ観ないなんて言ってないで、考えを改めたほうがいいですよ」
G.G.「私はそんなこと言ってないぞ」
B.J.「これは失礼…。好きな女優さんのことで、つい熱くなってしまいまして」
G.G.「いや、それが映画ファンというものさ。けっこうなことだよ。さて、私は帰るよ。家が遠いんでね。これにて『ことの終わり』」
B.J.「…え?」

(言うまでもなく、これはフィクションです。天国のG.G.氏とは何の関係もありません)

                            〔2000年11月18日(土) シネスイッチ銀座1〕
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THE END OF THE AFFAIR
監督・脚色 二ール・ジョーダン
出演 ジュリアン・ムーア  レイフ・ファインズ  スティーブン・レイ
音楽 マイケル・ナイマン
1999年 イギリス、アメリカ作品  101分
評価 ☆☆☆★