スパイダーマン 2

SPIDER-MAN 2
監督 サム・ライミ
出演 トビー・マグワイア  キルスティン・ダンスト  ジェームズ・フランコ  アルフレッド・モリーナ  ローズマリー・ハリス  J・K・シモンズ  エリザベス・バンクス  ブルース・キャンベル
原案 アルフレッド・ガフ  マイケル・シェイボン  マイルズ・ミラー
脚本 アルビン・サージェント
撮影 ビル・ポープ
音楽 ダニー・エルフマン
編集 ボブ・ムラウスキー
2004年 アメリカ作品 127分
ユタ映画批評家協会賞…作品賞
アカデミー賞…特殊視覚効果賞
サターン賞…ファンタジー作品・監督・主演男優・脚本・視覚効果賞
評価☆☆☆☆

いや〜、面白かった!

摩天楼の間を飛び回るスパイダーマンの躍動感は、より痛快さを増す。アクションシーンのスピード感の切れも素晴らしい。

特撮だろうが何だろうが関係ない。すごいアクションに素直に喜び、人の弱さや優しさに感動する、単純な観客としては、これは見事な出来の娯楽映画だと思う。

大いなる力には大いなる責任がともなう。
前作で、その持てる力を発揮して悪をこらしめる大活躍をした、スパイダーマンこと、ピーター・パーカー。

街角でパトカーのサイレンを聞けば、スパイダーマンの衣装をつけて事件現場へひとっ飛び。
連日の悪人退治のおかげで、ピーターは忙しい。大学の勉強もままならない。
もっと悪いことには、ガールフレンドのメリー・ジェーン(MJ)の舞台を観に行くことができない。(彼女は舞台女優、さらには広告のモデルとしても売れてきているのだ。)
そんなわけで、ピーターが好きなMJにとっては、もやもや状態が続いている。

ピーターとしては、もしMJを恋人にしたら、「スパイダーマンの大事な人」として、MJが悪人に狙われることが考えられる。だから、彼はMJのことが好きであっても、自分の気持ちに正直に打ち明けて行動することができないのだ。
悩みは深い。

しかも、スパイダーマンの活躍を、正しく書かない新聞がある。銀行を襲った怪人と戦ったときも、スパイダーマンが銀行を襲ったかのような見出しを載せる。確かに、戦いのおかげで銀行はめちゃくちゃになってしまったのだが。
面白そうな見出しで人目を引いて、新聞が売れればいい、くらいにしか考えていないのだ。
そんなことも重なって、ピーターはスパイダーマンを続けることに、心の奥で疑問を感じはじめていた

今回の見どころは、主人公ピーターの葛藤だ。
スパイダーマンを辞めれば、自分は楽になる。勉強もできるし、愛を成就することもできる。
だが、その一方で、事件に出会っても、彼はそれを見過ごすしかなくなるのだ。
スパイダーマンになれば助けることができるのに。
これは苦しいと思う。
自分のわがままで、人が不幸になる…。大いなる力を得てしまったばっかりに、こんな苦しみがある。
スーパーヒーローになるのも良し悪しである。いや、これでは「悪し」しかないようにも思えてくる。
そんな状態に置かれたピーターが、どうするのか。

そうした心の葛藤がベースにあるから、観ているほうはピーターに感情移入できる。そのうえで、ピーターと周囲の人々との関係を、しっかり描いていった、この続編は、期待以上の出来映えだ。
このスーパーヒーローは、けっして特別ではなく、彼が助けるところの一般庶民と同じ世界に生きる、ひとりの人間でもあるのだ、という印象を強くした。
ここまで普通っぽく悩めるスーパーヒーローが、かつてあっただろうか。

特に、電車のシーンでの、乗客とスパイダーマンの交流は、涙ものだ。私なんか、泣きのツボにハマって、肩が震えるくらいだった。
この場面が感動的なのは、ある事実にもよると思う。これを言ったらネタばれなのだが、某めざましテレビが事前に見事にネタばれしてくれた。ただ、私の場合は、知っていても感動できたから、不幸中の幸いだったと言えるだろう。

この映画、感情に訴える、つまりエモーショナルな描写が、ふんだんにある。
電車のシーンはもちろん、メイおばさんとのシーンもそう(私には、少なくとも2度、泣きのツボがくる)、ガールフレンドのMJとのシーンもそう。友人ハリーや、下宿先の大家の娘とのシーンでさえ、エモーショナルだと思う。人物の気持ちが、よく感じ取れるのだ。

ユーモアの面も、忘れていない。
コインランドリーのシーン(よく考えると、そんなこと、以前に経験してないのかよ、学べよ、って感じもあるが、そこまで厳しく見る必要はないのである)、エレベーターのシーン(爆笑。ただ、もう一押しがあってもよかったかも、と思う)、嫌味な劇場案内人のシーン(案内人を演じたのは、サム・ライミ監督の出世作「死霊のはらわた」〔1983年〕に主演して以来、ライミ監督と親交のあるブルース・キャンベル)。おばさんが怪人にさらわれるシーンさえ、ユーモラスな描写を交えて楽しませる。

敵キャラのドクター・オクトパス(ドク・オク)。体型が相撲取りみたいで面白い。あまり精悍に見えないところが、かえってリアル? もともとが科学者なんだから、問題なしでしょう。
ドク・オクの病院でのシーンは、怖いくらいの迫力だった。
4本のアームに操られる科学者。悪人ゆえの迫力はないけれど、彼の行動は、ちゃんと説得力はある。
アームを使って、ドシドシ地響きを立ててやってくるのは、まるで怪獣出現のよう。目的地まで来る途中に気づかれないのが不思議だったりして。(実は、静かに歩くこともできて、目的地の近くまで来ると、こけおどしのためにズンズンと歩くのかも。)

東洋人っぽい女性が流しで歌うスパイダーマンの歌が印象的だった。登場したのは2回で、それぞれ短いフレーズしか歌っていないが、スパイダーマンに寄せる世間の声というものを端的に表わしていて、上手い

また、「シービスケット」で、ジェフ・ブリッジスの奥さんを演じていた美人のエリザベス・バンクスが、新聞社の社長秘書みたいな役で出ているのを知ったのは嬉しい発見。1作目から出ているのだけど、彼女とは気づかなかった。まだよく顔を覚えていないんだね。

次作の敵キャラ紹介、のようなシーンまで盛り込んだのは、ソツがないというか、え、そんなことになっちゃうの?と興味を抱かせる。原作では、どうなるのだろう。知らないほうがいいな、これは。

ラストでMJが取った行動は、大いに突っ込みがいがあるもので、ある映画を彷彿させ、陳腐ぎりぎりなのだが、それを照れずに堂々とやることを、逆に評価したい(笑)。

そして、ピーター・パーカー、スパイダーマンは、新たな気持ちを胸に、摩天楼を縫って飛翔する。

〔2004年7月11日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕


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