アメリカン・スプレンダー

AMERICAN SPLENDOR
脚本・監督 シャリ・スプリンガー・バーマン  ロバート・プルチーニ
出演 ポール・ジアマッティ  ホープ・デイビス  ジェダ・フリードランダー  ジェームズ・アーバニアク  マデリン・スウィーテン  ハービー・ピーカー  ジョイス・ブラブナー  トビー・ラドロフ
撮影 テリー・ステイシー
編集 ロバート・プルチーニ
音楽 マーク・スオッゾ
原作 ハービー・ピーカー  ジョイス・ブラブナー
2003年 アメリカ作品 101分
サンダンス映画祭…グランプリ
カンヌ映画祭…ある視点部門/国際映画批評家連盟賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー…演技賞(ポール・ジアマッティ)
ニューヨーク映画批評家協会賞…主演女優(ホープ・デイビス、対象は本作と「ザ・シークレット・ライブズ・オブ・デンティスト」。主演女優賞受賞者は以下同じ)・新人監督賞
全米映画批評家協会賞…作品・脚本賞
オンライン映画批評家協会賞…新人監督賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞…作品・脚本賞
シアトル映画批評家協会賞…作品・主演女優・脚本賞
ボストン映画批評家協会賞…脚本賞
エジンバラ国際映画祭…新人監督賞
サンディエゴ映画批評家協会賞…脚本賞
トロント映画批評家協会賞…新人監督賞
シカゴ映画批評家協会賞…最も有望な監督賞 他
評価☆☆★

メジャーの映画製作・配給会社を通さない、いわゆるインディペンデント系(独立系)の映画ながら、映画賞レースで次々に受賞をして注目された作品。
何が受けたのだろう。
初めての長編映画を手がけた新人監督(2人は姓が違うが、夫婦とのことである)が、実在のユニークな人物を、ユニークな映画として描ききったこと。
だが、私には、あまり好みではなかった。
はっきりした興味というまでのものがないまま、なんとなく観てみようかなあ、と思って観たのが失敗だった。私の場合、あまり興味がなくて観た映画は、よくても、まあまあかな、という程度のことが多いのだった。
わくわくどきどきもしないし、感動もあまりなかった。

自分の冴えない日常を、漫画の原作にした男。その物語を、本人自身の語りと出演も交えて描く。
途中で、映画にナレーションをつけている男にカメラが切り替わり、それが主役のポール・ジアマッティに似ているなあと思ったら、なんと、それがポールが演じている人物ハービー・パーカーその人である、というのは面白い。
本人が出演しているとは思わなかった。

映画には、ハービーばかりではなく、奥さんのジョイスやハービーの同僚のトビーも登場している。
そして、実際のハービーや、オタクキャラのトビーのテレビ出演映像も使われ、俳優たちと本人たちが自由自在に入り混じって登場しているのだ。
さらに、漫画と実写を合わせたりと、面白い工夫はある。

主役の2人、冴えない普通の人ともいえるのだけれど、やっぱり、ちょっと変で個性的でもあると思えてしまう。それこそ、漫画の題材にぴったりだ。
漫画のモデルにならなければ、世間に知られることはなかっただろう人間が、有名になった影響をどう受けとめて、どう利用して生きていっているか、というお話。

「アメリカン・スプレンダー」は、病院の書類整理係を地味にこなしていた、バツ2の冴えない男、ハービー・パーカーが37歳のとき、1976年から、年に1回のペースで発売された漫画というが、年1回でそんなに人気が継続するものだろうか。自費出版だったらしいが、日本だったら、人気が出たら、もっと書け、もっと出せ、と誰かが言いそうなものだ。
と思ったら、どうやら、途中からアングラコミックの出版社が出版を引き受けてくれたようだ。
アメリカ人を美化せず、ありのままに描いた稀有なコミック、という評判が立ったのだ。
ハービーは、その漫画を仲介役として、奥さんをゲット。
テレビに出て漫画を宣伝し、さらには、絶望的な闘病記までも漫画にしてしまう。
漫画にして公開することで、病気と戦おうというところは、ちょっと感動的ではある。
最後は、家族や友人に囲まれて、それなりに幸せな姿のハービーだった。

主役のポール・ジアマッティは、以前観た「デュエット」の主役のひとりで印象に残っていた。歌がうまかったし。今回は、ごく普通のぱっとしない男を好演。
主人公の奥さんを演じていたのが、「アバウト・シュミット」でジャック・ニコルソンの娘役だった女優(ホープ・デイビス)だとは気がつかなかった…。

オタクのトビーは、すごいキャラ。真正オタクって、いったい何がオタクの定義なのか、よく分からないが、しゃべりかたもオタクという感じだし、姿かたち、考え方、すべてがオタクの雰囲気としか言えないのだろうなあ、これ。
悪いけど、あんまり好きじゃないのです、こういうキャラは。

六本木ヒルズの中にある映画館に、はじめて入ったというのは、いい思い出になる。
場所柄、外国の人たちが観ていて、笑うところが日本人とは違うのを実感した。どういう場面かすら忘れてしまったが、なんでここで笑うの?というほどに、笑いの箇所が違うところがあるのだった。

〔2004年7月24日(土) ヴァージンTOHOシネマズ 六本木ヒルズ〕



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