スウィングガールズ

監督 矢口史靖
出演 上野樹里  貴地谷しほり  本仮屋ユイカ  豊島由佳梨  平岡祐太  水田芙美子  関根香菜  竹中直人  白石美帆  木野花  大倉孝二  西田尚美  谷啓
撮影 柴主高秀
音楽 ミッキー吉野  岸本ひろし
2004年 105分

評価☆☆☆★

スウィング(スイング)は好きだ。
ビッグバンド(大編成のジャズ楽団)による、ついついリズムに乗って体が揺れて(スイング)踊りたくなってしまうような、楽しいジャズ。
私は、ジャズ喫茶かどこかで、渋く流れてくるジャズを聴いて、目をつぶり、頭を優雅に振り、陶酔するような通(つう)ではないし、どこがいいんだか、さっぱり分からないと感じるジャズもある。
しかし、スウィングは、楽しい

以前、「ベニー・グッドマン物語」という映画を観て、その音楽がスウィングだということもよく知らないまま、気に入ってサントラレコードを買ったものだ。(CDではなくレコードというのが、いかにも昔だ!)
「ベニー・グッドマン物語」のサントラに入っていた「シング・シング・シング」という曲が、「スウィングガールズ」でも演奏される。それも、もちろん、すごく嬉しい。
もともと、スウィングが好きなことで、この「スウィングガールズ」をより楽しめたことは間違いない。

お話は、たわいない。
しかし、要は、高校生たちが自分の打ち込めることを見つけて、一生懸命やること、そして目の前の目標(この場合は演奏会)に向けて、一生懸命努力しているのが素晴らしいのだ。
その姿を映画で観て、ああ、一生懸命になれることがあるって、いいなあ。おらも何かやってみっぺか!(舞台が東北なので、ついつい、こんな言い方になってしまう)と思えたら最高ではないか。
たとえ実際に何かをするまではいかなくても、人が頑張る姿を見るのは感動するものだ。
この映画のノリは、かなり笑わせるほうに力を入れているので、とても軽い感触になって、それほど頑張ってるところが目に見えて感じられないかもしれないが。

矢口監督の前作「ウォーターボーイズ」の女の子版だと、はじめから思っていたから、同じノリの感覚で観た。多少ガキっぽいとは思うが、これはこれでいいのだ。
誰が観たって、映画の内容は分かるしね。

ちょっと都合のいいストーリー展開でも構わないのだ。
たとえば、私が「えっ!」と思ったのは…。
すでに仲間をはずれていて練習などしていないはずの女の子たちが、バンドをあきらめていない数人が公開演奏しているところへいきなり入ってきて、しっかり演奏しているシーンがあった。
参加するのが突然だとか、いきなり上手に演奏しているとか、それを見た瞬間は、そんなバカな、と思ったものだが、これは「極端な省略」だと思えばよろしい。
練習していない女の子たちが加わる前と、加わった後では、じつは時間の経過があるのです。
それが、ちゃんと分かるように描かれていれば、親切ではあるが、これはイマジネーションのノリだよねえ。感覚的なもの。説明することじゃないんだ、たぶん。

彼女たち(正確には、彼女たちと彼だが)は数ヵ月間(話によると4ヵ月間)練習したらしいが、とにかく、彼女たちが実際に演奏していることに価値がある
先日観た「スクール・オブ・ロック」なども同じで、演じる本人たちが楽器を演奏するのは最近の映画では当たり前のようになっているが、ほとんど素人だったものが、ともかくも聞ける演奏ができるようになったのは、なんといっても立派なものである。
ただ、やはり、まだまだ。何とか間違えずにやっている、というところだろうか。

映画は、あるテレビ局がスポンサーのひとつなので、テレビ番組に彼女たちが出演しているのを見たことがある。他にも数ヵ所で演奏会を開いてキャンペーンをしていたようだ。
聞いた話では、ジャズの本場アメリカ・ニューヨークへも演奏に行くのだという。
映画以外の場で、実際に演奏することは、映画のための努力から生まれた副産物とはいえ、素晴らしいことだし、楽器を弾けるようになってバンドを組むことができたのは、彼女たちにとっても尊い財産になるに違いない。

主演の上野樹里さん。NHK朝の連続テレビ小説に出ていたのは知っていたが、ほとんど観たことはなかった。いやあ、可愛い。これからも活躍するだろう。
雪合戦をしていて、彼女が倒れて目をつぶっているシーンは、この映画のカラーとしては実に珍しく、ちょっと色っぽいというか、一瞬アヤシイ雰囲気になりそうで、どきりとしたのであった。お兄さん、やられたわい。
演技は爽やかに素直に、伸び伸びしているし。まるっきりオッケーじゃないですかあ。

トロンボーンを吹いていたメガネの子、本仮屋ユイカさん。こちらは、次回のNHK朝ドラのヒロインに決定したそう。
ネット上の写真で、メガネを取った顔を拝見したが、印象が変わって、また美少女だった。
たしか、ベース担当の子も美人だったし(そんなとこしか見てないんかい!)(いいえ、決して、それだけではありません)、この映画から将来、どんなスター女優が出てくるのか、ちょっと、お楽しみである。

演奏が上手くなっていく過程が、もう少し画面に出ていたらよかったと思うが、そのへんを詳しく描いていたら、きっと上映時間が長くなりすぎていただろう。
軽く、楽しく、ギャグって、爽やかに。
そしてラストで、これまでの練習の成果を発表する素敵な場面。
ああ、楽しかった! ってことで、なんか、いぐねえ? それで、いいべさ!

〔2004年9月12日(日) シャンテ シネ1〕


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