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十面埋伏 HOUSE OF FLYING DAGGERS
監督 チャン・イーモウ
出演 チャン・ツィイー  金城武  アンディ・ラウ  ソン・タンタン
撮影 チャオ・シャオティン
脚本 チャン・イーモウ  リー・フェン  ワン・ビン
衣装デザイン ワダ・エミ
音楽 梅林茂
2004年 中国作品 120分

評価☆☆☆★


チャン・ツィイー、金城武、アンディ・ラウの3人による愛憎劇。
チャン・イーモウ監督が「HERO」に続き、ほとんど同じスタッフで撮った任侠ものだ。
画面の美しさ、色彩の美しさ、チャン・ツィイーの舞いの美しさ、戦いの場面の美しさなど、美的なセンスなどない私をも刺激する。
「HERO」同様、ワダ・エミさんの衣装デザインは注目。
映画全体に、惚れ惚れするような様式美、色彩美があり、それは「HERO」から受け継がれている。
そして、そこにラブストーリーが加わる。

目が見えないという役のチャン・ツィイー。それで激しい動きをこなすのだから、見事である。私だったら、絶対に目が動くぞ。
チャンちゃんのことは、私は「グリーン・デスティニー」「初恋のきた道」「HERO」と観てきて、好きな女優さんだ。いかにも東洋的な、のぺっとした顔の小娘だが、好きだなあ。(女好きと言わないでほしい。好きな女優が出ているから観るんだしね…?)
本作のとき、彼女は24歳くらいか。アジアンスのCMでもお馴染みの売れっ子です。
19歳の頃の「初恋のきた道」でデビューして以来、キャリアのうえでは、なんの挫折もなく順調に来ているのではないだろうか。

彼女が見せる、太鼓の舞は、序盤のクライマックス。こんなユニークな舞いは見たことがない。しかも、彼女は実際にやっているのだという。もちろん、うまく行くのは稀で、数分の場面を撮るのに10日以上もかかっているそうだ。とにかく、この舞いの美しさは必見だ。

今後は、木村拓哉も出ている、ウォン・カーウァイ監督の「2046」に登場、そして何と、鈴木清順が監督する「オペレッタ狸御殿」という、歌と踊りのエンターテインメント時代絵巻映画に出演! これは来年5月公開予定。楽しみである。

金城くんについては、「Returner リターナー」で以前見たことがある。演技という面では上手いとも下手ともつかず(笑)、ひょうひょうと演じているように見える。本作では、男前でカッコいいというキャラクターのままでいいのではないかな。

アンディ・ラウは名のしれた俳優らしいが、私ははじめて見たと思う。激しい感情を隠した役どころをうまく演じていると思う。途中、あんまり出てこなかったから、役柄的には、ちょっと損かもしれない。

だけど、どうしたって男の私は、チャンちゃん中心に観るのだ。チャンちゃん良ければそれで良し。…しょうがないねえ。

物語は、唐王朝の末期。「飛刀門」という反乱軍を一網打尽にするべく、捕吏のリュウとジンが一味の娘を利用する…という展開だが、この映画、飛刀門の首領役で、アニタ・ムイという女優さんが出演する予定で、脚本もそれを想定して書かれていたそうだ。しかし、彼女は子宮ガンのために他界した。
できあがった映画では、首領が出てくるのは1場面だけ、それも姿がよく分からないようになっていた。彼女が出演できていたら、少し違った話になっていたのかもしれない。

最後の、3人の場面。それぞれの思いが激しく交錯し、ひとつの結末に到る。
観た瞬間は、どう解釈すればいいのか分からなかったところがあったが、あとで、こういうことだよな、これしかないよな、と考えついた。
人を思う心、愛の尊さと、受け入れられない愛、嫉妬の悲しさが入り混じる。
ちょっと深い味わいがある場面だ。

ただ、竹やぶを飛んで歩いたりする超自然な(?)ワイヤーアクションは、好きなのだが、いくつもの映画で似たようなものを観てくると、少し食傷気味になりそう。
次回、こうした感じの映画があったら、よほど興味を引かれる部分がなければ、観に行かないかもしれない。
でも、誘導ミサイルのように自由に飛翔する短刀は、かっこよかったなあ。ああいうのは大好き。

原題の「十面埋伏」は、あたり一面の待ち伏せ、という意味らしい。
行く手に絶えず現われる敵、味方のはずが敵になったり、敵が味方かもしれないような、油断のできない状態か。
英題は、飛刀門の一派、みたいなことで単純。
日本だけは、恋人たち、という意味のタイトルだよ。それもまあ、いいか。

絵(画面)の美しさを楽しみたかったり、主役3人の誰かのファンだったりするなら、観て損はない。
また、少女マンガの世界だ、という評もあるので、そういうのが好きな人であっても楽しめるのかもしれない。

〔2004年9月26日(日) 池袋東急〕


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