キャットウーマン

CATWOMAN
監督 ピトフ
出演 ハル・ベリー  シャロン・ストーン  ベンジャミン・ブラット  ランベール・ウィルソン  アレックス・ボースタイン  フランセス・コンロイ
撮影 ティエリー・アルボガスト
編集 シルビー・ランドラ
音楽 クラウス・バデルト
衣装 アンガス・ストラティー
キャラクター創造 ボブ・ケイン
原案 テレサ・レベック  ジョン・ブランカート  マイケル・フェリス
脚本 ジョン・ブランカート  マイケル・フェリス  ジョン・ロジャース
2004年 アメリカ作品 104分
ゴールデンラズベリー賞…作品・監督・主演女優・脚本賞
評価☆☆☆★


まさに、ハル・ベリーを見るための映画。
フツーのビジネスウーマンから、ボンデージ・ファッションのキャットウーマンに大変身。
そのうえ、ムチまで振りまわすんだから、タマラナイ。いや、その気はないんだけど、根が単純なもので、かっこいいな〜と思うのさ。

ペイシェンス・フィリップス(ハル・ベリー)は、化粧品メーカーのヘデア社で働くデザイナー。きょうは社長(ランベール・ウィルソン)に怒られた。こんなデザイン、だめじゃん! おまえはクビじゃ! しかし、妻のローレル(シャロン・ストーン)がペイシェンスを助けてくれた。結局、デザインをやりなおせ! ということに。
ペイシェンスという単語には「忍耐」の意味がある。まったく、悪い意味で、その名前にぴったりの出来事が起きたわけであった。
しかし、デザインをやりなおすことになったおかげで、彼女の運命が大きく変わってしまう

社長の妻ローレルは、ずっと会社の化粧品モデルをしてきたが、今回、とうとう若手のモデルにその地位を、しぶしぶながら譲ることになっている。そのモデルと夫とは、なにやらアヤシイ関係があるようだ。よくありがちな話。当然、家庭内不和である。
そして、会社の内部にも、ある重大な秘密があった…。

ペイシェンスは、ある事件によって、キャットウーマンの能力を身につける。その後の変身ぶりが驚き。
それまでの、かよわい女性が、まるで何かから解放されたかのように、衣装も、メイクも、ノリノリだっ。
変われば変わるもんだねえ。女は化けるねえ…怖いよ…じゃなく、えーと、感心しました。

ハルちゃん(なれなれしくて、すいません)は、楽しんでやってるのが好感が持てるのだ。
アカデミー賞で主演女優賞をとったほどのスターなのに、「X-MEN」シリーズでもそうだけど、コスプレ大好きっぽいもんね。
オスカー女優が、なんでまたアメコミ娯楽アクション映画に出るの?という問いに対する答えが、月刊誌の「TV Taro」に載っているので、紹介させていただく。
「…私は今まで、白人と同じ能力が自分にもあることを証明し、自分自身もそれを納得したくて努力してきたの。それはオスカーを受賞することで叶ったわ。だから次は、ピープル・オブ・カラーの俳優も、大作を背負って立ってスタジオに利益をもたらすことができると証明したいのよ」
黒人差別というのは、実際にその立場でなければ理解できないことだと思う。そんな中で頑張るハルちゃんは偉い! しかも、コスプレを喜んでやっちゃうあたりが、もっと偉いのだ。

ハル・ベリーの映画である、とはいえ、シャロン・ストーンも頑張っちゃっている
私が彼女の映画で好きだなあといえるのは「クイック&デッド」(「スパイダーマン」のサム・ライミが監督。1995年)の女ガンマン(ガンウーマン?)役で、ほんとに、かっこよかったのである。
しかーし。
今回の「キャットウーマン」では、もはや若くないんだよ、あたしゃ。とばかりに悲壮な決意…は微塵もなく、堂々とハルちゃんと対決する。
新作化粧品を塗りたくるのにも、自社の製品だから、ではなく、じつは、ものすごい理由があったりするのだね、これが。
女同士の凄絶バトルの最後は、なんとも可哀想というか、うおーっ、こ、これは…と5メートルくらい引いてしまう結果になっている(笑)が、ここはシャロン様の女優根性を誉め称えるべきだろう。業界で生き残るためには、恥も外聞もかなぐり捨てて、何でもやっちゃうわよ、あたし。お見事です、シャロン様。

刑事役のベンジャミン・ブラットだが、「デンジャラス・ビューティー」(2000年。「映画感想/書くのは私だ」に感想あり)での刑事役が印象にあって、他の映画でも刑事だったような気もして、どうもブラットといえば刑事、と連想ゲームが働いてしまう。
そういうのは損だと思うのだが、役を選んでいないのだろうか。それとも、同じ役でも、映画が気に入ったなら断らないのかな、三田村邦彦。いや、ちがった、ベンジャミン。

ティム・バートン監督の傑作「バットマン リターンズ」(1992年)で、ミシェル・ファイファーが演じたキャットウーマンは、記憶に残る存在だ。ミシェルそのものが、まさに猫っぽかったし、男の前で「ミィヤォ」とささやくあたりなどは絶品だった。
今回のハルちゃんも、一度「ミャオ」と言うのだが、どこか、「おまけ」のように発しているだけだった。もしかしたら、先輩のミシェルに対するご挨拶だったのかもしれない。

ハルちゃん版のキャットウーマンは、ボンデージ衣装もあいまって、猫というより、同じ猫科だけれど、しなやかな黒豹みたい。
かっこいい。もう、それだけで、いいんにゃ。

神秘の猫エジプシャン・マウをはじめ、多数の猫ちゃんが登場するのも見もの。
猫おばちゃんの家では、何匹もの猫が縦横無尽に歩き回っていたっけ。(余計な心配だが、エサ代がたいへんそう…)

監督は「ヴィドック」(2001年。「映画感想/書くのは私だ」に感想あり)のピトフ
どうも、この人の名前を聞くと、絶対に「ポトフ」を思ってしまうよね。野菜や肉を煮込んだ料理。
本名は、なんとかピトフか、ピトフなんとか、で、名字か名前を省略しているのだろうか。まあ、ピトフ、だけのほうがインパクトはあるかな、確かに。
ピトフはフランス人だが、昔のフランス映画で俳優の名前のクレジットを見ると、1つの単語だけの名前の俳優を、たまに見かけることがある。有名なところでは、フェルナンデルなんて俳優がいた。
フランスでは、1つの単語だけの芸名というのは、割合と普通のことなのだろうか。

「スパイダーマン」などの見事なCGアクションを見なれた目からすると、多少ぎくしゃくした感があり、見ていて驚きの少ないキャットウーマンの動きだが、ハルちゃん自身が頑張ってかなりアクションをこなしているというのだから、それを信じて、これもまた人間的な動きで、いいじゃないかと、わけの分からない納得をする私であった。

私はとても楽しめたが、最悪映画を選ぶラジー笑、いや、「ラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)」の候補になる恐れもありそうだ。
とくに、シャロン・ストーンの最悪助演女優賞ノミネートは、期待大
ハルちゃんが候補になる可能性も…ないではない。作品や監督賞部門も、場合によっては有り得る。
でも、ラジー賞には、ほんとに最悪な映画もあるが、観る人によっては面白いよ、または、いい演技じゃん、などと思えるものもあると思う。愛情のあるお遊びの場合もあるから、本作が仮に受賞しても、恥じることはない。喜んでいればいいのだ。
(この感想を書いたあと、本作は、ものの見事にラジー賞4部門を受賞。ハル・ベリー嬢は授賞式に出席! 彼女のお母さんが、「良き敗者にならなければ、良き勝者にもなれない」と言ったから、なのだそう。しかし、出席するなんて、いいねえ。ジョークが分かるよ。好感度、上がるね!)

なにしろ、ハルちゃん好きにとっては、たまらない、ハル・ベリー満載の娯楽作である。

〔2004年11月7日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕


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