巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)

PAS SUR LA BOUCHE
脚本・監督 アラン・レネ
出演 サビーヌ・アゼマ  イザベル・ナンティ  オドレイ・トトゥ  ピエール・アルディティ  ランベール・ウィルソン  ジャリル・レスペール  ダニエル・プレヴォー  ダリー・コール
原作 アンドレ・バルド
音楽 モーリス・イヴァン
撮影 レナート・ベルタ
衣装 ジャッキー・ブダン
音響 ジャン=マリー・ブロンデル
2003年 フランス作品 115分
セザール賞…助演男優(ダリー・コール)・衣装・音響賞
評価☆☆★


先に観たミュージカル風の「五線譜のラブレター DE-LOVELY」がよかったので、同じ映画館で上映しているフランス製ミュージカルにも興味をもって、観に来た。
しかし、私には、あまり合わなかったようだ。
映画のタイトルは、「パリの恋愛コンチェルト」と読む。

予備知識としては、「アメリ」に主演したオドレイ・トトゥが出ていることしか頭になかった。
監督がアラン・レネであることも、まるで知らなかった。レネ監督というと「去年マリエンバードで」という映画が有名だ。私は未見だが、不条理で難解な映画らしい。
そんな著名な監督が6年ぶりに作ったのが、この作品。

1925年に2年間のロングランヒットとなったオペレッタが原作だという。
実業家ジョルジュ(ピエール・アルディティ)の妻ジルベルト(サビーヌ・アゼマ)は、芸術家の若い男シャルレ(ジャリル・レスペール)に言い寄られながら、その関係を楽しんでいる。
ある日、夫のジョルジュが仕事の関係で連れてきたアメリカ人が、なんと、ジルベルトの前夫エリック(ランベール・ウィルソン)だったから、さあ大変。ジョルジュは、ジルベルトが再婚だということを知らないのだ。「女は最初に抱かれた男を一生愛するもの」という変な哲学を持ったジョルジュに、そんなことを知られるわけにはいかない。
そこに、シャルレが好きだという娘ユゲット(オドレイ・トトゥ)と、ジルベルトが好きな男ファラデル(ダニエル・プレヴォー)、さらに未婚の、ジルベルトの妹アルレット(イザベル・ナンティ)が加わって、恋の大騒動になる。

オペレッタとは、19世紀中頃にパリやウィーンで完成した、歌や踊り、芝居による、通俗的な音楽喜劇、とされる。オペラとの違いは、必ずハッピーエンドで終わること、音楽のないセリフがあること、セリフが多いこと、話が身近で親しみやすいこと、などとなるらしい。

このセリフの多さに疲れてしまった面がある。
たいして面白くもない話に、歌混じりのセリフがごちゃごちゃと入ってきて、体調が悪いわけでもないのに観ていると疲れてきて、眠気まで襲ってきた。ミュージカルは好きなのに…。
曲はまるで知らないし、聴いていて、いいなあと思う曲もなかった。
俳優では、芸術家役のジャリル・レスペールの顔を、私は受けつけなかったので、彼に惚れるトトゥ嬢にも感情移入はできなかった。

原題は英語で言えば“Not on the Lips”、つまり「唇にはダメ」という意味。キスはダメということだ。その曲名からすると意外だが、女性ではなく、エリック役の持ち歌だ。
エリックを演じたランベール・ウィルソンを、私は「マトリックス」シリーズや、最近では「キャットウーマン」でも見たが、今回の映画ではコミカルな面を見せて、配役の中では少しは面白い

それから、アルレット役のイザベル・ナンティも、俳優陣では印象に残った。彼女は以前「アメリ」に出演していたのだが、観ている間は、まるっきりそのことには気づかなかった。ごめんね。
ちっちゃくて、気のいいおばちゃんで、姉のピンチに付き合って振りまわされるのだが、最後に、ちょっといい目にあうのが、よかったねー!という感じだ。

終盤、1軒のアパルトマン(というのかな?)に偶然みんなが集まってドタバタ騒動になるあたりは、テンポもよくなって、ちょっと面白かった。
ここで、管理人のおばさんとして登場するのが、ダリー・コールという俳優。男である。
まるで志村けんが、おばちゃんに化けたようなもので、観ていて、これはどう見ても男だよ、と思っていたのだが、やはりそうだった。
彼はこれで、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞を取った。
なんとなくタナボタ。

昔ヒットしたオペレッタが、こういうものだったのだなあ、と知ることができたことは、よかったと思う。
が、こりゃ、巴里の「恋愛競争曲」か「恋愛狂奏曲」としたほうがいいんじゃない?

〔2004年12月29日(水) シャンテ シネ2〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ