ネバーランド

FINDING NEVERLAND
監督 マーク・フォースター
出演 ジョニー・デップ  ケイト・ウィンスレット  ジュリー・クリスティ  ラダ・ミッチェル  フレディ・ハイモア  ニック・ラウド  ジョー・プロスペロ  ルーク・スピル  ダスティン・ホフマン  イアン・ハート  ケリー・マクドナルド  ケイト・メイバリー  アンガス・バーネット  ローラ・ドゥグッド
原作 アラン・ニー
脚本 デビッド・マギー
撮影 ロベルト・シェイファー
音楽 ヤン・A・P・カチュマレク
2004年 イギリス・アメリカ作品 100分
ヴェネチア国際映画祭…ラテルナ・マジカ賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー…作品・音楽賞
サウスイースタン映画批評家協会賞…作品トップ10 第6位
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞…作品トップ10 第3位
ブロードキャスト(放送)映画批評家協会賞…若手男優(フレディ・ハイモア)・ファミリー映画〔実写〕賞
ユタ映画批評家協会賞…監督・主演男優・男優(21歳以下・フレディ・ハイモア)賞
ラスベガス映画批評家協会賞…作品トップ10、第4位・主演女優(対象作品は本作と「エターナル・サンシャイン」)・若手俳優(フレディ・ハイモア)・ファミリー映画賞
アカデミー賞…音楽賞
評価☆☆★


ぎくしゃくした奥さんとの仲を、どうにもしないで、未亡人一家と遊びまくる主人公に違和感あり! まず根本的に、そこから気にいらない。

イギリスの劇作家ジェームズ・マシュー・バリが「ピーター・パン」を書いた背景にあったのは、ある一家との交流だった。映画は、そのあたりの話を、実話をベースにして描いている。
監督はハル・ベリーがアカデミー主演女優賞をとった「チョコレート」のマーク・フォースター。主演はバリにジョニー・デップ、バリが関わる一家の未亡人にケイト・ウィンスレット、未亡人の母親にジュリー・クリスティ、バリの作品を上演する劇場主にダスティン・ホフマン、未亡人の三男ピーターにフレディ・ハイモア。

今年の映画館始め、1本目だが、あまり嬉しい結果にはならなかった。
観ていて、とにかく引っ掛かってしまったのだ。主人公のバリが、奥さんがいながら、未亡人とその子どもたちと一緒に過ごしてばかりいることに。
奥さんといる時間より、彼らといる時間のほうが長いなんて、あんまりひどいではないか。
友人のアーサー・コナン・ドイル卿に「噂になってるぞ」と言われて、「友人として付き合っているんだ」と答えるが、そんなことが世間に通用しないことくらい、分かっているはず。

未亡人一家を助けてあげたい、幸せにしてあげたいという気持ちは偉いけれど、たとえ友情であっても、あの関わり方は行き過ぎ。
奥さんとの仲がうまくいっていないから、他の家族との関係に、のめりこんでいるようにも見えてしまう。
奥さんにしてみれば、夫が他の女とぴったりくっついてばかりいたら、心穏やかでは、いられない。
私には、バリに夫婦仲を修復しようという努力を見ることができなかった。少なくとも映画の中では。
修復できない仲ならば、ちゃんと離婚してから、そのあとで思う存分、未亡人一家と遊べばいい
バリのやり方では、奥さんが可哀想だ。

結婚というものは、うまくいかないことがあるものだなあ、というのが最もこの映画から感じたことだ。
バリの奥さんは、社交界に興味があるけれど、バリはそうしたことに関心がない。
いろいろと「性格の不一致」がありそうだ。お互いのどこに惹かれて結婚したのだろうかと考えてしまう。
2人の違いを象徴的に表したシーンがある。2人がそれぞれの部屋のドアを開けて入ろうとするとき、奥さんのほうは何もなく普通なのに、バリのほうはドアを開けると向こうの部屋の中が夢の世界のように輝いているのだ。
現実のみの世界と、夢のある世界。2人の行く道はまるで違っていた。

俳優も格別いいとは思わなかった。ジョニー・デップにしろ、ケイト・ウィンスレットにしろ、いつも、このくらいは、やってるでしょ、ということだ。ダスティン・ホフマンは、ほんの端役で見るべきところはなかったし、注目されている子役のハイモア君だって、たいしたことはない。(可愛いと思わなかったせいかもしれないが、感じたままを正直に言わせてもらう。)
奥さん役のラダ・ミッチェル、未亡人の母親役のジュリー・クリスティは、いい。

終盤は泣けてしまったが、それはそういう話の展開だからであって、そうやって泣かせにくるのは卑怯だぞ、あざといぞ、とも考えてしまった。実話から作った物語だから、まるっきりの作り話で泣かせているわけではないのだけれど。
ただし、これが気にいっている映画だったら、もうどっぷりと浸りきって感動しまくっているところだったかもしれない。(笑)

ピーター・パン劇でピーター・パンを演じたケリー・マクドナルドが可愛かったのと、アンガス・バーネットの犬の役が面白くて、もうけ役だなあと、そのほうが印象に残った、ひねくれ者の観客なのであった。

なお、バリが気にかけていた一家の、実際の子孫が、映画に出ている。ローラ・ドゥグッドという女性で、ピーター・パン初演のあと、ピーターに向かって「あなたがピーター・パンね」と言う観客の役だ。

他人を優しく思いやることの美しさ。かたくなな心に凝り固まらず、夢を持ち、想像に遊ぶことの楽しさ。夢や可能性を信じること。この映画の、そうしたテーマは素晴らしいと思う。
避けることのできない現実は、ここに厳然としてある。けれど、夢と癒しのある世界も心に抱いていようじゃないか。
ね。

〔2005年1月15日(土) 日比谷映画〕


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