ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方

THE LIFE AND DEATH OF PETER SELLERS
監督 スティーブン・ホプキンス
出演 ジェフリー・ラッシュ  シャーリーズ・セロン  エミリー・ワトソン  ソニア・アキーノ  ジョン・リスゴー  ミリアム・マーゴリーズ  スティーブン・フライ  スタンリー・トゥッチ  ピーター・ヴォーン  エリザ・ダービー
原作 ロジャー・ルイス
脚本 クリストファー・マーカス  スティーブン・マクフィーリー
撮影 ピーター・レヴィ
音楽 リチャード・ハートレイ
編集 ジョン・スミス
2004年 アメリカ・イギリス作品 122分
ゴールデングローブ賞…最優秀TV映画・TV映画部門主演男優賞
評価☆☆☆


もともとはテレビ映画なのだが、映画館でも行けるぞ、と関係者が判断したのだろう。日本では劇場公開された。
予告編を観て、ジェフリー・ラッシュのピーター・セラーズへの「なりきりぶり」が面白そうだなと思い、さらにシャーリーズ・セロンが出ていると知って、それでは観てみようと、映画館に行った。

ラッシュが、映画で1人何役もこなした俳優ピーター・セラーズを丹念に、しかも、かなり特徴をつかんで演じている。
ピンク・パンサー・シリーズのクルーゾー警部役で有名なセラーズ。でも彼の私生活については、私は何も知らなかったから、映画は、とても新鮮だった。 どこまでが真実で、どこからが創作なのかは分からないが、なるほど、こういう人であったのか、という点では面白く観た。

彼が、こんなに女好きだったのかと驚いたし、自分がどんな人間なのかというアイデンティティが分からないから、いろんな役になれたのか、などと考えさせられた。 劇中で本人も、そのようなことを言っているのだ。
自分というものがない。その器の中が空っぽだから、他人になりきれる。他人を演じることができる。

セラーズの2番目の妻、ブリット・エクランド役がシャーリーズ・セロン。
可愛い。可愛すぎる…。この人が「モンスター」を演っていたなんて信じられない。
エクランドがセラーズと結婚したときは、まだ若くて21歳。セラーズは38歳だった。こんなに若い娘を嫁にして…うらやましい。(笑)
ブリット・エクランドといえば、「007/黄金銃を持つ男」のボンドガール。他にも映画に出ていたようだが、私はそれしか観ていない。そのボンドガールにしても、あまり評判はよくなかった。私も、ボンドガールとしては彼女は小粒すぎるというか、印象が薄かった。
さて、シャーリーズ・セロンだが、まだ若くてキャピキャピ(死語?)、はつらつとしている21歳のスウェーデン人女性を、上手に演じていた。「モンスター」の後、28歳頃に出演したもので、役柄をとらえていて上手いと思う。

セロン嬢に比べると、最初の妻役のエミリー・ワトソンは、相変わらず落ちついた巧さがある
彼女の役は、セラーズの最初の妻アン。アンはセラーズと10年ほど結婚生活を送り、2子を得た。

ソフィア・ローレン役のソニア・アキーノも、グラマラスでよかった! 観客が楽しめるから、いいね。(笑)
あんまりローレンとは似ていなかったと思うけれど、エキゾチックなグラマーさにセラーズが惹かれたというのならば、これでいいのだろう。

ブレイク・エドワーズには、ジョン・リスゴー。エドワーズ監督がどんな顔だったか覚えていないので(監督の顔なんて、よっぽど有名でなければ覚えていないよねえ)、似ているのかどうかは不明であった…。
スタンリー・キューブリックにスタンリー・トゥッチ(といっても、よく知らない俳優だ…)。こちらも似ているのかどうか分からない。

ジェフリー・ラッシュは、さすがにウマイと唸らせる。セラーズに負けずに何役もこなす演技は、スゴすぎ。
ただ、もうちょっとコメディタッチの映画なのかと思っていたから予想外なのだった。
かなり真面目、シリアスな作品だったせいで、少々、期待と違っていたのだ。
だいたい、この邦題だったら、コメディかと思うじゃない? 原題は「ピーター・セラーズの生と死」なのに。それじゃ日本の観客に受けないと関係者は思ったのだろうなあ。
おおげさに言えば、タイトルでインチキしているわけで。
「ピーター・セラーズの愛し方」というのが、観客がピーター・セラーズをどう愛せばいいのか、ということなのかと思っていたら、ピーター・セラーズが、どう女性を愛していたのか、ということだったのかいな?(笑)

セラーズが、自分の新車にペンキを塗った子どもに対してキレて、子どものおもちゃをぶっ壊すシーンには、びっくりした。子どもは悪気でやったわけではないのに。かんしゃく持ちというより、自分も子どもみたいに我慢がきかない性質だったのだろうか。
ソフィア・ローレンに惚れている気持ちを妻子に告げるのも、その正直すぎる行動に驚く。
きっと、世渡りには不器用なのだ。

ラッシュが、セラーズだけでなく、セラーズの周囲の人間にも扮して、その人の目で、つまり外から、自身(セラーズ)のことを語るのが面白い。
セラーズ本人よりも周囲の人間のほうが、セラーズのことを分かっていた面があった、ということを、とても、うまく見せている。

オープニングが「何かいいことないか子猫チャン」のテーマ曲をバックにしたアニメーション。これが面白い。
そして劇中では、「ピンクの豹」「博士の異常な愛情」「007/カジノロワイヤル」「チャンス」といった映画のシーンが、ちらちらと楽しめるのも嬉しいところ。
映画に出る前にはBBC局のラジオショーで人気があったことや、イギリスアカデミー賞で主演男優賞を獲得(1959年作品“I'm All right Jack”にて。日本未公開)していたことは初耳だったし、ともあれ、ピーター・セラーズの人生の一部を知ることができたのは収穫だった。

〔2005年1月29日(土) シャンテ シネ2〕


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