ビヨンドtheシー 夢見るように歌えば

BEYOND THE SEA
監督 ケビン・スペイシー
出演 ケビン・スペイシー  ケイト・ボスワース  ウィリアム・ウルリッチ  ジョン・グッドマン  ボブ・ホスキンス  ブレンダ・ブレシン  キャロライン・アーロン  グレタ・スカッキ
脚本 ケビン・スペイシー  ルイス・コリック
音楽監修 フィル・ラモーン
撮影 エドゥアルド・セラ
編集 トレバー・ウェイト
2004年 アメリカ・ドイツ・イギリス作品 118分
評価☆☆☆☆


俳優ケビン・スペイシーが、スタンダード音楽にスウィングを持ち込んだといわれる歌手、ボビー・ダーリンの伝記風映画を作った。
ケビンは、主演のみならず、監督・製作・脚本までも、こなしている。

私にはボビー・ダーリンという人についての知識は、まるでなかった。1960年代を中心に活躍し、「マック・ザ・ナイフ」「ビヨンド・ザ・シー」の歌が有名だという。「マック・ザ・ナイフ」は映画「三文オペラ」の曲で、これは以前から曲を知っていた。
そして、映画の中でケビンが「ビヨンド・ザ・シー」を歌ったとき、「ああ、この曲か!」と思った。聴いたことがあるメロディだったのだ。(この曲は、公式HPで聴くことができます。)

ボビー・ダーリンは、1960年に映画「九月になれば」で共演したサンドラ・ディーに一目惚れ、結婚する。サンドラを演じたケイト・ボスワースが可愛い。ちなみに、ディー&ダーリンのコンビでの映画は他に「電話にご用心」(1962)、「おかしな気持」(1965)がある。

ケビン・スペイシーは、ボビー・ダーリンの大ファンらしく、映画製作の権利を得るところから10年以上の歳月をかけて作り上げたという。
また、ケビン本人が歌っているのだが、これが抜群に上手い! ダーリンの歌とパフォーマンスを4年間練習したらしいけど、もう、俳優だけじゃなくて、歌手になってもいいんじゃない?と思えるほど。

ボビー・ダーリンの子ども時代をウィリアム・ウルリッチが演じるが、彼もまた芸達者。ブロードウェイでの経験も、かなりあるようだ。
大人のダーリン=ケビンと、子どものダーリン=ウィリアムが共演する場面が面白い。
母親の葬儀から、「マック・ザ・ナイフ」のナンバーへと移るところに、ジーンときた。愛する母の死を乗り越えていく…。

とにかくケビン・スペイシーの、歌の上手さを含めて、ボビー・ダーリンが好きで好きでたまらない、持てる力のすべてを注いで、彼の映画を作るんだ! というパワーが素晴らしい。
才能があるから出来ることだが、もう、すごい!の一言。好きこそ、ものの上手なれ、だよね。

ボビー・ダーリンは、リューマチ熱のために心臓を悪くして、よくて15歳までしか生きられないと宣告された。だからきっと、その時その時を、いっしょうけんめいに生きただろう。亡くなったのは37歳、1973年のことだった。
だが、映画は、ミュージカル風だったり、ユーモラスな場面もあって、楽しめる。
ダーリン(Darin)という芸名の由来なども、ほんとかよ、といいたいような、よくありそうな話で面白かった。
ラストの持っていき方も、私の好み。いい意味で、アメリカ的、ハリウッド的な明るさが覆っているように思う。
ケビンの思い入れがたっぷりで、事実そのままではなく、脚色もしていることを堂々と表明している。よくできた映画です。

共演陣は、ジョン・グッドマン、ボブ・ホスキンス、ブレンダ・ブレシン、グレタ・スカッキ、と魅力的な顔ぶれ。
 
そして…1967年に離婚しているが、妻だったサンドラ・ディーは、つい先日の2005年2月20日、62歳で亡くなっている。
このニュースを聞いたとき、「『避暑地の出来事』くらいしか出ている映画を知らない女優さんだったなあ」と思っていたのだが、きょう、この映画を観て、ほんの少しだけだけれど、身近な存在になったような気になった。

でも、どうして邦題は、「ビヨンドtheシー」って、theだけ英語、なんていう変なことになるのだろう…。

〔2005年2月26日(土) シネスイッチ銀座1〕


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