アビエイターは「飛行家」の意味。
発音は、「エイビエイタ」(最初の「エ」にアクセントがある)だから、作品名は「ヅィ・エイビエイタ」だ。
邦題は、「飛行機野郎」でいいじゃないか。あ、「素晴らしきヒコーキ野郎」なんて映画もあったっけ…。
3月中有効の優待券をもらって、何をやってるのかなあとネットで調べてみたら、月末ぎりぎりから「あ、アビエイターが始まるじゃん、ラッキー!」ということで、行ってきた。
そんなふうだから、賞レース絡みの映画なので一応チェックはしてみたい気持ちはあっても、じつはあまり期待していなかった。
そのせいか(?)、思ったより面白かった。
少なくとも、3時間弱の長さを感じないほどに、飽きなかった。
レオ君がアメリカの伝説の富豪、ハワード・ヒューズを熱演。ヒューズといえば…うーん、じつは、よく知らない人だったのだが、本作では、彼が自分で映画を作る話も出てくるので、映画好きの私としては、興味を持って観ることができた。
スターが集まるクラブなど、映画関係の話の部分は、華やかで見た目に楽しい。
ジーン・ハーロウ(ロックバンド「ノー・ダウト」のヴォーカルであるグウェン・ステファニーが扮している)は少ししか出てこないが、パッとその場が華やぐ、いかにもスターらしい女優、といった感じがよく出ていた。
クラブで、ヒューズと名女優キャサリン・ヘプバーンが食事をしようとしているところに、ほんのちょっとだけ、エロール・フリンが登場する。ずうずうしくも、2人の席に割り込んでくるのだ。
演じるのは、ジュード・ロウ。ちょい役だが、おいしい役だ。
彼が出演していると知っていなければ、誰だか気づかなかったかも。
ジュード君が出るのは知っていたが、突然ウィレム・デフォーが出てきたときには驚いた。まあ、出るときは突然に決まっていて、予告してから、そろりそろりと出てくるわけはないのであるが。
こちらも、ジュード君と同じく、ほんの少しの登場だったが、どうも最近、彼を見ると「スパイダーマン」の敵役を思い出してしまうのであった。
キャサリン・ヘプバーンを演じたケイト・ブランシェットは、さすが! うまい!
彼女はキャサリンの映画での声をずっと聞いて練習したらしいが、喋り方は、かなり似ていると思う。
観客の中には、キャサリン・ヘプバーンって誰? オードリーじゃないの? なんていう人がいるんだろうなあ…。
映画では、ヒューズが、撮影中のヘプバーンを誘いに来るのだが、監督が座っていた椅子には「ジョージ・キューカー」と書いてあった。キューカーは女優の魅力を引き出すのは天下一品といわれた監督で、キャサリン・ヘプバーンと組んだことも多い。
エヴァ・ガードナーを演じたケイト・ベッキンセールは、ブランシェットと並べて比べられちゃうから可哀想かも。美人ではあるが、エヴァ・ガードナーとは似ていないのだ。ヘプバーンに喋り方が似ていると思わせる努力を感じさせるケイト・ブランシェットがいては、とても、かなわない。
ハワード・ヒューズは、強迫神経症的な潔癖症だったようだ。握手も、なかなかできないくらいに。
他人の襟にゴミがついていても、気になってしまう。でも、好きな女となら、いくらくっついても大丈夫みたいだったね(笑)。
ヒューズとヘプバーンが一緒に飛行機に乗る場面、潔癖症のくせに大丈夫かいな?と思っていたら、操縦桿も彼女に持たせるし、2人で同じ瓶のミルクも飲むのである。
さて、なぜにミルク? たぶん、何かの象徴としている。それが何かは、考えれば分かる。
飛行機という限られた空間の中にいることも、同様に何かの「象徴」となるだろう。
ヒューズが子どもの頃に、病気で隔離されていた経験が、映画の冒頭で示される。目の前にいる母親と2人きりの会話。
大人になって潔癖症が高じると、彼は自分で自分を隔離してしまうほどにもなってしまうのだ。
このときも、ミルクがあり、限られた空間の中にいる、というのは同じだ。
金持ちであるという恵まれた力を使って、自分のやりたい放題に、映画や飛行機に情熱を傾けるあたりは痛快ですらある。
楽なばかりじゃないと思うが、こんなに好きなことに打ち込めて生きることができたら、やっぱり幸せなのではないだろうか。
たとえ、その裏返しに、病的な潔癖症に苦しむ姿があって、その苦しさのマイナス面を帳消しにするための「やりたい放題」だったのではないかと思えるとしても。
…と、最初は書いてみたのだが、ふと思った。まず彼は、本当に映画や飛行機が大好きだったのだろうか? 一応は好きなことではあっても、異常とも言えるほど徹底的に打ち込んだのは、やはり、病気に対する反動ゆえ、だったのではないのか。
そう考えると、彼は少しも幸せではないことになる。
映画には描かれないが、ヒューズは晩年、極度に細菌を恐れ、ホテルのスイートルームに引きこもっていたという。強迫性の潔癖症が悪化したのだ。
レオ君って、いい演技をしても、童顔というのか、まだまだ小僧っ子に見えてしまう点が、損をしていると思う。
この映画だって、ヒューズの数十年間の人生を扱っているけど、レオは最後まで、ずっと同じく若く見えちゃうからね。ヒゲを生やしたりは、しているけれど。
映画の中で撮影風景やプレミア上映の様子を見せてくれた、ヒューズが作った映画「地獄の天使」(1930年)。これは、ぜひ、観てみたい! 原題は「ヘルズ・エンジェルズ」。…暴走族の元ネタ映画なのか?
レンタルであるのかな?