アビエイター

THE AVIATOR
監督 マーティン・スコセッシ
出演 レオナルド・ディカプリオ  ケイト・ブランシェット  ケイト・ベッキンセール  アレック・ボールドウィン  ジョン・C・ライリー  アラン・アルダ  イアン・ホルム  ジュード・ロウ  ウィレム・デフォー  グウェン・ステファニー
脚本 ジョン・ローガン
撮影 ロバート・リチャードソン
音楽 ハワード・ショア
編集 セルマ・スクーンメイカー
美術 ダンテ・フェレッティ
衣装 サンディ・パウエル
2004年 アメリカ作品 169分
ナショナル・ボード・オブ・レビュー…作品トップ10、第2位
ロサンゼルス映画批評家協会賞…美術装置賞
AFI(アメリカ映画協会)トップ10映画
ワシントンDC映画批評家協会賞…助演女優賞(ケイト・ブランシェット、助演女優賞受賞者は以下同じ)
シカゴ映画批評家協会賞…音楽賞
サウスイースタン映画批評家協会賞…作品トップ10、第8位
サンディエゴ映画批評家協会賞…美術賞
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞…作品トップ10、第4位・監督賞
オンライン批評家協会賞…助演女優賞
ゴールデングローブ賞…作品・主演男優・音楽賞
アメリカ映画俳優組合賞…助演女優賞
ロンドン映画批評家協会賞…監督賞
英国アカデミー賞…作品・助演女優・美術・メイク&ヘア賞
アカデミー賞…助演女優・撮影・美術・衣装・編集賞
評価☆☆☆★


アビエイターは「飛行家」の意味。
発音は、「エイビエイタ」(最初の「エ」にアクセントがある)だから、作品名は「ヅィ・エイビエイタ」だ。
邦題は、「飛行機野郎」でいいじゃないか。あ、「素晴らしきヒコーキ野郎」なんて映画もあったっけ…。

3月中有効の優待券をもらって、何をやってるのかなあとネットで調べてみたら、月末ぎりぎりから「あ、アビエイターが始まるじゃん、ラッキー!」ということで、行ってきた。
そんなふうだから、賞レース絡みの映画なので一応チェックはしてみたい気持ちはあっても、じつはあまり期待していなかった。
そのせいか(?)、思ったより面白かった。
少なくとも、3時間弱の長さを感じないほどに、飽きなかった

レオ君がアメリカの伝説の富豪、ハワード・ヒューズを熱演。ヒューズといえば…うーん、じつは、よく知らない人だったのだが、本作では、彼が自分で映画を作る話も出てくるので、映画好きの私としては、興味を持って観ることができた。
スターが集まるクラブなど、映画関係の話の部分は、華やかで見た目に楽しい
ジーン・ハーロウ(ロックバンド「ノー・ダウト」のヴォーカルであるグウェン・ステファニーが扮している)は少ししか出てこないが、パッとその場が華やぐ、いかにもスターらしい女優、といった感じがよく出ていた。
クラブで、ヒューズと名女優キャサリン・ヘプバーンが食事をしようとしているところに、ほんのちょっとだけ、エロール・フリンが登場する。ずうずうしくも、2人の席に割り込んでくるのだ。
演じるのは、ジュード・ロウ。ちょい役だが、おいしい役だ。
彼が出演していると知っていなければ、誰だか気づかなかったかも。

ジュード君が出るのは知っていたが、突然ウィレム・デフォーが出てきたときには驚いた。まあ、出るときは突然に決まっていて、予告してから、そろりそろりと出てくるわけはないのであるが。
こちらも、ジュード君と同じく、ほんの少しの登場だったが、どうも最近、彼を見ると「スパイダーマン」の敵役を思い出してしまうのであった。

キャサリン・ヘプバーンを演じたケイト・ブランシェットは、さすが! うまい!
彼女はキャサリンの映画での声をずっと聞いて練習したらしいが、喋り方は、かなり似ていると思う。
観客の中には、キャサリン・ヘプバーンって誰? オードリーじゃないの? なんていう人がいるんだろうなあ…。
映画では、ヒューズが、撮影中のヘプバーンを誘いに来るのだが、監督が座っていた椅子には「ジョージ・キューカー」と書いてあった。キューカーは女優の魅力を引き出すのは天下一品といわれた監督で、キャサリン・ヘプバーンと組んだことも多い。

エヴァ・ガードナーを演じたケイト・ベッキンセールは、ブランシェットと並べて比べられちゃうから可哀想かも。美人ではあるが、エヴァ・ガードナーとは似ていないのだ。ヘプバーンに喋り方が似ていると思わせる努力を感じさせるケイト・ブランシェットがいては、とても、かなわない。

ハワード・ヒューズは、強迫神経症的な潔癖症だったようだ。握手も、なかなかできないくらいに。
他人の襟にゴミがついていても、気になってしまう。でも、好きな女となら、いくらくっついても大丈夫みたいだったね(笑)。
ヒューズとヘプバーンが一緒に飛行機に乗る場面、潔癖症のくせに大丈夫かいな?と思っていたら、操縦桿も彼女に持たせるし、2人で同じ瓶のミルクも飲むのである。
さて、なぜにミルク? たぶん、何かの象徴としている。それが何かは、考えれば分かる。
飛行機という限られた空間の中にいることも、同様に何かの「象徴」となるだろう。
ヒューズが子どもの頃に、病気で隔離されていた経験が、映画の冒頭で示される。目の前にいる母親と2人きりの会話。
大人になって潔癖症が高じると、彼は自分で自分を隔離してしまうほどにもなってしまうのだ。
このときも、ミルクがあり、限られた空間の中にいる、というのは同じだ。

金持ちであるという恵まれた力を使って、自分のやりたい放題に、映画や飛行機に情熱を傾けるあたりは痛快ですらある。
楽なばかりじゃないと思うが、こんなに好きなことに打ち込めて生きることができたら、やっぱり幸せなのではないだろうか。
たとえ、その裏返しに、病的な潔癖症に苦しむ姿があって、その苦しさのマイナス面を帳消しにするための「やりたい放題」だったのではないかと思えるとしても。
…と、最初は書いてみたのだが、ふと思った。まず彼は、本当に映画や飛行機が大好きだったのだろうか? 一応は好きなことではあっても、異常とも言えるほど徹底的に打ち込んだのは、やはり、病気に対する反動ゆえ、だったのではないのか。
そう考えると、彼は少しも幸せではないことになる。

映画には描かれないが、ヒューズは晩年、極度に細菌を恐れ、ホテルのスイートルームに引きこもっていたという。強迫性の潔癖症が悪化したのだ。

レオ君って、いい演技をしても、童顔というのか、まだまだ小僧っ子に見えてしまう点が、損をしていると思う。
この映画だって、ヒューズの数十年間の人生を扱っているけど、レオは最後まで、ずっと同じく若く見えちゃうからね。ヒゲを生やしたりは、しているけれど。

映画の中で撮影風景やプレミア上映の様子を見せてくれた、ヒューズが作った映画「地獄の天使」(1930年)。これは、ぜひ、観てみたい! 原題は「ヘルズ・エンジェルズ」。…暴走族の元ネタ映画なのか? 
レンタルであるのかな?


〔2005年3月27日(日) 池袋東急〕


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