姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)

監督 実相寺昭雄
出演 堤真一  永瀬正敏  原田知世  阿部寛  宮迫博之  田中麗奈  いしだあゆみ  すまけい  松尾スズキ  恵俊彰  三谷昇  寺島進  篠原涼子  清水美砂  京極夏彦
原作 京極夏彦
脚本 猪爪慎一
脚本協力  阿部能丸
撮影 中堀正夫
編集 矢船陽介
音楽 池辺晋一郎
2005年作品 123分
評価☆☆☆


京極堂シリーズの原作を読んでいる身としては、映画のキャストが発表されたときには、そりゃ違うでしょー、堤真一が京極堂? 永瀬正敏が関口? 阿部寛が榎木津? 宮迫博之が木場? まるっきりイメージと違って、目の前が、くらくらと、それこそ眩暈坂を歩いてでもいるように、卒倒寸前なのだった。

20ヵ月もの間、子どもを身ごもる女の謎。産院から赤ん坊が次々に消える謎。密室から行方不明になった男の謎。元看護婦の死の謎。憑物筋の家系の謎。こういった謎に、祓い屋でもある古書店主、作家、刑事、探偵などが立ち向かっていく。もっとも、古書店主と作家は、いつも「巻き込まれ型」であるが。

まあ、しかし、原作が強力で人気があればあるほど、それだけ多くの人々のイメージと合わないキャストになってしまうのは仕方がないだろう。
それで、こわごわ観てみたら、思ったほど違和感は、なかった
いちばん合ってないと思った宮迫くんも、いかつい感じで演じていて無難だった。もうちょっとガタイが、でかければいいんだけどなー。

堤さんは冒頭で、京極堂お得意の長ゼリフを披露。脳に関する「うんちく」です。京極堂が、こういう奴だ、というのが予備知識のない観客にも多少分かって、いい展開じゃないでしょうか。個人的には、堤・京極堂には、もうちょっと鋭さが欲しいけれど、いい線いってるかも。

脚本的には、あの長い話を、うまくまとめていると思う。どうしても原作を割愛して、謎解きの論理的な説明に多くの時間を割かざるをえないのは、2時間の映画では、避けられないこと。
途中で分かりづらいところもあったが、これでも、できるだけ分かるように作っているんだろうなあ、と感じられた。

この話は、関口の恋心が切ないんですよ。
関口自身が、夢かうつつか、というような、ぼうっとした世界の住人だから、この淡い恋も夢うつつの中に包まれているのだ。そのあたり、永瀬くんの頼りなさげな演技は、うまくいっていた感がある。

すごかったのは、いしだあゆみ。予告編でも披露していた、猫ふんじゃったような叫び。あれは、憑物系ゆえのヒステリックさを含んでいたのか。
ある場面で彼女が話しはじめたとき、えっ、これ、声が違うよ、と驚いた。…やはり憑物系ゆえの演技なのか?
だいたい、お顔自体が、メイクなのだろうけど、やつれていて怖いくらいなのだ。出番は少ないが、インパクト賞受賞の怪演!ですね。

紙芝居屋の三谷昇。彼が言うセリフは重要です。聞き逃さないように!

それから! 猫のザクロ。黒白の猫で可愛いぞ。京極堂の家だけじゃなくて、眩暈坂にも登場してくる、出たがり猫です。

原作者の京極氏も映画に、ちゃっかり登場。エンドクレジットでは、たしか「傷痍軍人(水木しげる)」という役になっていた。紙芝居で「墓場の鬼太郎」(「ゲゲゲ」だったかもしれないが覚えてない)がちらっと出てくるのは、お遊びでした。
でも、もうちょっと痩せたほうがいいです、京極さん。

京極堂の家や、久遠寺医院などがリアルなビジュアルで目の前にあるのは、映画ならではの感慨

エンドクレジットが終わったあとに、堤・京極堂の決めゼリフあり。たいしたことないけど、観たいなら、最後まで座っていましょう




〔2005年7月16日(土) 丸の内TOE I A〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ