ライフ・イズ・ミラクル

LIFE IS A MIRACLE (ZIVOT JE CUDO)
監督 エミール・クストリッツァ
出演 スラヴコ・スティマチ  ナターシャ・ソラック  ヴェスナ・トリヴァリッチ  ヴク・コスティッチ  アレクサンダル・ベルチェク  ストリボール・クストリッツァ  ニコラ・コジョ
脚本 エミール・クストリッツァ  ランコ・ボジッチ
撮影 ミシェル・アマテュー
編集 スヴェトリク・ミカザイッチ
音楽 エミール・クストリッツァ  デヤン・スパラヴァロ
2004年 セルビア=モンテネグロ、フランス作品 154分
評価☆☆☆☆★


最高に面白い!
ユーモア、音楽、動物たち(人間も含めて)。
皮肉、絶望、希望。
ストーリーは、混沌として入り乱れるがごとき、にぎやかさ。
人間そのものの生を画面に焼きつける、なんとパワフルなことか!
悲しみさえも笑いとばそうとするエネルギーに満ちている。
こんな映画は、そうそうない!

エミール・クストリッツァ監督は、旧ユーゴスラビアのサラエボ生まれ。彼の映画では「アンダーグラウンド」の1本を観ただけだが、戦争というものの影響が「アンダーグラウンド」でも「ライフ・イズ・ミラクル」でも、そのベースにある。
戦火の混乱の中での人間を、戯画的に誇張して描き、ブラスの音楽で騒々しく盛り上げる作風は、しかし、合わない人には、きっと面白くないだろうと思う。

「アンダーグラウンド」は大傑作だったが、本作も負けず劣らず。
監督も参加するジプシー・ブラスバンド、ノースモーキング・オーケストラの演奏が素晴らしい。映画の中で聴くと、生きていくことの象徴のようにも思えるパワーを感じるのだ。

戦争を知らずに平和に生きている私たちには、祖国の悲劇を経験した監督の思いを100パーセント受け取ることは無理だろう。でも、かなりのところは、彼の映画から受け取ったと思いたい。

運命に押し流される中で懸命に生きている。それが人間。あっけなく死ぬ。しぶとく生きる。
そして、ここに登場する動物たちも、同じように生きている。ロバ、クマ、犬、猫、ニワトリ…。人も動物も合わせて「命」なのだと、感覚で感じさせるのだ。
動物たちの演技も、信じられないほどに絶品!!

そして、最後は、あの光景でなければならなかった。守護天使に守られながら、敵も味方もなくなった幸せな光景
監督の平和への思いが痛いほどのラストショットだ。

まだ、うまく言い足りないのだが…とにかく、「アンダーグラウンド」が好きな人は、必ず本作も気にいるはずだ。




〔2005年7月24日(日) シネスイッチ銀座1〕


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