「8人の女たち」を観てから、私にとって気になる監督になったフランソワ・オゾンの新作。
ある夫婦の離婚の場面で始まり、時間をさかのぼって、最後は出会い(正確には再会)の場面で終わる。
離婚に至るまでの出来事のうちの5つの場面を描いて見せて、その5つの節目が、夫と妻それぞれの立場で存在する、というわけで、原題は「5×2」なのだった。
離婚後と出会いという2つの場面は、さておいて。
あとの3つは、簡単に言えば、パートナーへの性的な裏切りと、出産時に喜びを分かち合えなかったこと。性的な裏切りについては、ありふれた話といえばありふれている。本作で描かれるシチュエーションには、少し、びっくりさせられるけれども。
出産の場面では、夫が産気づいた妻のもとに近づこうとしない。出産後も近づかない。私には、これがよく分からない。
この夫、子どもが欲しくなかったのか。妻が不倫しているのかとでもいうのか。
とにかく、そういう心のすれ違いが重なっていった結果が、離婚、という形になりうるのは当然の話ではないだろうか。とりたてて驚くことでもない。
恋は終わるもの。とか何とか宣伝で書かれていた。だから輝く日々を大切に。…という解釈をするのも、どんなもんかと思う。
浮気したり、気持ちがすれ違ったりしたとして、それが離婚につながるのかどうかは、いろんなパターンがあるだろう。
この夫婦の話は、この夫婦の話でしかないのではなかろうか。
たとえば、ずっと幸せに過ごす夫婦も、いないこともないと思うし。
とにかく、オゾン監督らしい辛口テイスト。
とくに、どうという話でもないのだが、観ていて、悪い気分ではない。
なにか、「人生だねえ〜」と思えてしまうのは、なぜだろう。それこそがオゾン映画なのだろうか。
泳ぐ2人のロングショットの背景で、だんだんと夕陽が落ちて地平線に消えていく場面は、すごく印象的。