お熱いのがお好き

SOME LIKE IT HOT
監督 ビリー・ワイルダー
出演 マリリン・モンロー  トニー・カーティス  ジャック・レモン  ジョージ・ラフト  ジョー・E・ブラウン  ジョーン・ショウリー  デイブ・ベリー  パット・オブライエン  ネヘミア・パーソフ
脚本 ビリー・ワイルダー  I・A・L・ダイアモンド
撮影 チャールズ・ラング・ジュニア
編集 アーサー・P・シュミット
音楽 アドルフ・ドイッチ
衣装 オリー・ケリー
1959年 アメリカ作品 121分
アカデミー賞…衣装デザイン賞(白黒)
ゴールデングローブ賞(コメディ・ミュージカル部門)…作品・主演女優(マリリン・モンロー)・主演男優賞(ジャック・レモン)
評価☆☆☆☆☆


アメリカ映画協会(AFI)が選ぶ、アメリカ映画のコメディベスト100で第1位に輝く傑作
マリリン・ファンの間でも、この作品をベストに推す人は多い。
確かに面白い。
が、私は「マリリンの」映画として選ぶならば、本作は1番目には選ばない。
なぜか。これはマリリンだけの映画ではないから。
マリリン、トニー・カーティス、ジャック・レモンの3人の主役に、同じだけの重みがあるからだ。
マリリンの、いちばん面白い映画を選ぶなら「お熱いのがお好き」かもしれないが、「マリリンの映画」を選ぶなら、私は「紳士は金髪がお好き」か「バス停留所」を選ぶと思う。

それは、また別の話。
この映画が傑作であることは間違いない。
2人の男に女装をさせて、女だけのバンドに放り込むというアイデアが生まれた時点で、ほとんど成功といえる。まじめに考えれば無理な話っぽいが、そこはそれ、映画である。
しかも、そこに女の中の女、色っぽい女の容姿の代表のようなマリリン・モンローがいたら?
女装男とマリリン、その対比は、考えただけで面白いはず。

ビリー・ワイルダーとI・A・L・ダイアモンドという、コメディ脚本の強力コンビが、そのアイデアをもとにストーリーを作れば、面白くないものができるわけがない。

本作は、ゴールデングローブ賞のコメディ・ミュージカル部門で、作品賞、主演女優賞(マリリン・モンロー)、主演男優賞(ジャック・レモン)を受賞している。
ある意味、アカデミー賞よりも信頼感のあるゴールデングローブ賞を受賞したことを、私は誇りに思う。
ゴールデングローブ賞をとったということは、当然、マリリンはアカデミー賞をとっても不思議はないわけだから。
しかし、この年、1959年度のアカデミー賞主演女優賞を得たのはイギリス映画「年上の女」に出演したシモーヌ・シニョレだ。
マリリンはアカデミー賞には候補にさえ上がらなかった。
候補になれなければ勝負にもならない。アカデミーには偏見があったのではないか。不公平である。
ちなみに「お熱いのがお好き」からは、マリリンの衣装を担当したオリー・ケリーだけが、アカデミー賞を受賞している。

この映画でも、マリリンは撮影を手間取らせたという。調子の悪いときの彼女は、短いセリフでも何度も間違えていたらしい。
ビリー・ワイルダーが語るマリリンについては、マリリンのページの、マリリン・イン・「ビリー・ワイルダー自作自伝」にも書いてあります。
ワイルダーによれば、撮影では散々な状態が多かったマリリンだが、フィルムを編集して映画の映像になってみると、他の誰にも真似のできないような、信じられない輝きを、そこに発していたのだ。
それこそが、天性の女優というものではないだろうか。

主演3人だけではなく脇役も光る。
ニヒルなギャング役といえばこの人、みたいな大物のジョージ・ラフトが、やっぱりギャングの親分スパッツ・コロンボをクールに演じ、1930年代頃から喜劇役者として活躍したジョー・E・ブラウンが、女装のジャック・レモンにプロポーズする富豪オズグッド・フィールディング3世の役をコミカルに演じる。
ブラウンには、「大口ブラウン」というあだ名があった。口が大きいからというわけだろう。そのまんまだが、本作でも「がまぐち」などと言われていた。(笑)

マリリンの歌は3曲。お馴染みの色っぽい名曲“I Wanna Be Loved By You”、スタンダードな名曲“Running Wild”、情感あふれる名曲“I'm Through With Love”。言うことなしですね。

「お熱いのがお好き」は、永遠の、懐かしの名画コメディの傑作であり続けるだろう。マリリンの役名シュガーとともに。…あ、ジョセフィンとダフネもかな?

なお今回の文芸坐での公開は、「荒馬と女」と「お熱いのがお好き」の2本とも、昔のプリントのままだった。訳は清水俊二さん! 字幕翻訳の草分け的存在だ。
背景が白く明るいところでの字幕は、読みにくいときがあった。




〔2005年10月2日(日) 文芸坐〕


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