こういう下町の人情ものっぽい映画は、観る気が起きない。あまりにベタに笑わせたり、泣かせにくるような気がして、イヤなのだ。観るのが気恥ずかしいのかもしれない。
(いい例が「フーテンの寅さん」であり、食わず嫌いではあるが「釣りバカ」シリーズなども同様。)
この映画は、チケットをいただいたので観に行った。
で、これが…なかなか良かったのである。
終盤は、泣きっぱなし。これでもか、これでもかと泣かせにくるのに、すっかり乗せられてしまったのだった。
お医者さんの悲しいお話、母を訪ねて三千里な話、クリスマスから正月にかけての出来事、あたりのところですね。
とくに吉岡くんと小雪さんのクリスマスの晩のエピソードには、やられました。ノックアウト。こんなベタな話を見せられちゃ、たまんないよー、やめてよー、と思いながら、心地よく肩を震わせて泣きましたっす。
子どもたちが、いいね。映画に出てくる子どもというのは、見ていて微笑ましいし、文句はつけられない。セリフがひどい棒読みだったりしない限りは。
堀北真希さん。テレビで、ちらっと見たことはあったけど、はじめて、じっくりと見た。素直そうで、将来が期待できそう。
薬師丸ひろ子さんの、下町のお母さん役というのは、なにか珍しい気がしたが、違和感もなく、よかったです。
三浦友和さんが年配の人の役をやるようになったのか…と、時の流れも感じた。
映画の画面では、東京タワーが建築中で、だんだん出来あがっていったり、テレビで力道山の試合をみんなで見ていたりで、昭和33年の東京、日本を、うまく象徴的に見せていた。
家の様子や町並みなども、よく、昔の風景を再現したなあ、と感心した。
CGを活用しているのだろうが、昔懐かしい光景は、私でも多少、しみじみとする。もう少し上の年代の方なら、かなり胸に、じーんとくるのではないだろうか。
原作はどうなのか知らないけれど、自動車修理販売店と駄菓子店の2つの「家族」に的を絞った脚本は、分かりやすくていい。
ひとつ疑問。エンドクレジットでは「家族」単位での集合写真のショットがあったのだが、タバコ屋の、もたいまさこさんは、ひとりで映っていた。「家族」ではなく、ひとり暮しの彼女を映すことに何か意味があるのだろうか。
単に、女優としての特別扱いだとしたら、それは、やめてほしかった。
すべてがうまくいったわけではない状態。だけど、希望がいっぱいのラストだった。
未来には希望があった。
今の時代、文明は進んだけど、どこかで閉塞感があって、希望が持ちにくい。
だから、あの時代を懐かしんで、あったかい気分になったり、ある種の憧れをも抱いてしまうのかもしれないね。