CGの威力は、すごい。実在しない巨大ゴリラ、コングを画面の中に生き生きと造りあげてしまった。
動きや表情は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラム同様、俳優アンディ・サーキスが演じたものCGに置き換えたもので、リアルな迫力がある。
でもねえ、ドラマとしては、どうなんだろう。ピーター・ジャクソン監督にとって、オリジナル版「キング・コング」(1933年)はリメイクしたくてしょうがなかった、バイブル的な映画。その作品に尊敬を込めて作るなら
ば、オリジナル版以上に深い物語は要らないのかもしれない。コングの怖さ、強さ、優しさを存分に描いていれば、それで満足すべきなのかもしれない。
「スター・ウォーズ」エピソードT〜Vのときと同じような気持ちなのだ。
大作アクション映画ゆえの、ストーリー面での物足りなさというのか、安直さというのか。
ネタばれになるのであまり書かないが、少しだけ。(少しでも物話の内容を知りたくない方は、次の段落を飛ばして読んで!)
谷底で変な虫に襲われる場面がある。ああいう変な虫は、他の映画でも見飽きた感があるのだ。興ざめだし、そもそも、この場面、必要がないと思う。
からみついた虫を、銃で撃つのだが、弾が人に当たらないのが不思議でたまらない。注意して撃て、とは言っているが、それは無理じゃないのか。
最後の助けられ方も、またか、と思う。ワンパターン。前と同じ手を使うなんて、がっかり。…もしかしてギャグか?
他の場面では、転落しても、ツルみたいなのに引っ掛かって助かったり、でも、その位置が偶然にも、恐竜に食われそうな位置だったりしてスリルが続いたりする…。
うまいことできてるが、できすぎてると思ってしまうのだ。
草食恐竜のくだりは、ちょっと笑ってしまいそうな展開だった。面白いこと考えるなあ、と。
島へ着くまでの序盤は長いけれど、ユーモラスな場面を入れていることもあって飽きなかった。
とくに、監督役のジャック・ブラックと映画スタッフのコリン・ハンクス(トム・ハンクスの息子)が、女優探しで「フェイ・レイはどうだ、彼女なら完璧だ」「RKOで撮影中です」「監督はクーパーだったな…」みたいな会話を交わすのには、ニンマリ。
メリアン・C・クーパー監督がフェイ・レイ主演で撮ったRKO映画は、オリジナル版「キング・コング」なのだ!
お笑い系俳優のイメージのジャック・ブラックだが、軽薄、調子のいい男の役なので、さほど違和感がなかった。
「リトル・ダンサー」の子役の印象が強いジェイミー・ベルが船員の若者の役。こんな兄ちゃんになったんだねえ…。
そして、ヒロインのナオミ・ワッツさん! 言うことありません。彼女は素敵です。
ニューヨークでのコング。彼女と一緒に、氷の張った池(?)で遊ぶ、束の間の幸せ。このシーンは、よかった。
その後は終焉に向かって、怒涛のごとく物語は進むのだ。
「飛行機じゃない、美女が野獣を殺したんだ」というジャック・ブラックの最後のセリフは、自分の責任をちっとも感じていないように見える。この男は、生涯、反省もせず、お気楽に生きるのだろうか。
いろいろと文句を言いつつ、コングのアクションは充分に楽しめるので、観るのならば、ビデオやDVDではなく、大きなスクリーンと良い音響設備の映画館で観るべきだ。