歓びを歌にのせて

SA SOM I HIMMELEN (AS IT IS IN HEAVEN)
脚本・監督 ケイ・ポラック
出演 ミカエル・ニュクビスト  フリーダ・ハルグレン  ヘレン・ヒョホルム  レナート・ヤーケル  ニコラス・ファルク  インゲラ・オールソン  ペア・モアベア  ウルヴァ・ルーフ
脚本協力 アンダース・ニューベア  ウーラ・オルソン  カリン・ポラック  マーガレータ・ポラック
撮影 ハラル・ゴナ・パールガー
編集 トマス・テン
音楽 ステファン・ニルソン
2004年 スウェーデン作品 132分
トロムセー国際映画祭…観客賞
評価☆☆☆☆★


この映画の、いい評価を目にしたのがきっかけで、観に行ってみた。コーラスを扱った映画だという以外、内容はほとんど知らずに。音楽に関わる映画は、けっこう好きなので、その面では、ちょっと期待はできた。
好きな女優さんや監督の作品であるわけでもない。気にいるかどうか。まったくの勘に頼ったわけである。

その結果は…素晴らしかった!!

スウェーデン映画というと、イングマル・ベルイマン監督の映画くらいしか観たことがない。
まず、雪に覆われた村に主人公がやってくるところから、心に迫るものがあった。風景が、なにか、いいなあと思ったのだ。こんなところに住んでみたいような。寒いだろうけど。田舎暮らしに憧れているのかもしれないな、自分。

主人公は高名な指揮者のダニエル・ダレウス。彼は心臓を悪くして、生まれ故郷に戻ってきたのだ。静かに暮らそうと考えていた彼だが、聖歌隊の指導を頼まれる。
映画は、再び音楽に情熱を傾けるようになるダニエルの姿、そして、村人たちの、さまざまな人生を浮かび上がらせる。

まったく甘くない映画。コーラスの話だから楽しい、嬉しいお話なのだろうと思ったら大間違い。
確かに、歌う歓びは、ある。それは感動的な響きをもって奏でられる。とくに、ガブリエラ役のヘレン・ヒョホルムは歌手であり、彼女のソロの場面は素晴らしい。だが、映画はそれが主題ではないのだ。コーラスの場面を期待して観に行くと、不満が残る可能性ありだ。

人間は、いかに生きるのか、いかに死ぬ(べきな)のか、そのひとつの生き方を見せてもらったような気がする。だからといって、決して優等生的、模範的な生き方をしていたというのではない。落ち込んだり、喜んだり、迷いながら、それでも進むしかないのだ。

主人公ばかりか、村人たちそれぞれの人生も、辛いこと、苦しいことが、いっぱいだ。嫉妬があり、暴力があり、いじめがあり…。
コーラスは、そんな負の気持ちを、一時でも忘れさせ、心を歓びで満たす。

恋することに積極的な娘レナを演じるフリーダ・ハルグレンがいい。心臓がボロボロで健康に不安をもつダニエルに対して、生きるエネルギーを与えるがごとく、明るく咲いた花のようだ。

エンディングも甘くない。もしもアメリカ映画なら、こんな終わり方をするだろうかと、ふと、思った。
これが幸せなのか、そうでもないのか、不幸なのか、次に観るときには、また違う感慨を抱くのかもしれない。

「どうして好きって分かる?」
「顔を見ると幸せ」
「それから?」
「いつも想ってる」
「それから?」
「一緒にいると幸せを感じる」




〔2005年12月25日(日) Bunkamuraル・シネマ1〕


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