この映画の、いい評価を目にしたのがきっかけで、観に行ってみた。コーラスを扱った映画だという以外、内容はほとんど知らずに。音楽に関わる映画は、けっこう好きなので、その面では、ちょっと期待はできた。
好きな女優さんや監督の作品であるわけでもない。気にいるかどうか。まったくの勘に頼ったわけである。
その結果は…素晴らしかった!!
スウェーデン映画というと、イングマル・ベルイマン監督の映画くらいしか観たことがない。
まず、雪に覆われた村に主人公がやってくるところから、心に迫るものがあった。風景が、なにか、いいなあと思ったのだ。こんなところに住んでみたいような。寒いだろうけど。田舎暮らしに憧れているのかもしれないな、自分。
主人公は高名な指揮者のダニエル・ダレウス。彼は心臓を悪くして、生まれ故郷に戻ってきたのだ。静かに暮らそうと考えていた彼だが、聖歌隊の指導を頼まれる。
映画は、再び音楽に情熱を傾けるようになるダニエルの姿、そして、村人たちの、さまざまな人生を浮かび上がらせる。
まったく甘くない映画。コーラスの話だから楽しい、嬉しいお話なのだろうと思ったら大間違い。
確かに、歌う歓びは、ある。それは感動的な響きをもって奏でられる。とくに、ガブリエラ役のヘレン・ヒョホルムは歌手であり、彼女のソロの場面は素晴らしい。だが、映画はそれが主題ではないのだ。コーラスの場面を期待して観に行くと、不満が残る可能性ありだ。
人間は、いかに生きるのか、いかに死ぬ(べきな)のか、そのひとつの生き方を見せてもらったような気がする。だからといって、決して優等生的、模範的な生き方をしていたというのではない。落ち込んだり、喜んだり、迷いながら、それでも進むしかないのだ。
主人公ばかりか、村人たちそれぞれの人生も、辛いこと、苦しいことが、いっぱいだ。嫉妬があり、暴力があり、いじめがあり…。
コーラスは、そんな負の気持ちを、一時でも忘れさせ、心を歓びで満たす。
恋することに積極的な娘レナを演じるフリーダ・ハルグレンがいい。心臓がボロボロで健康に不安をもつダニエルに対して、生きるエネルギーを与えるがごとく、明るく咲いた花のようだ。
エンディングも甘くない。もしもアメリカ映画なら、こんな終わり方をするだろうかと、ふと、思った。
これが幸せなのか、そうでもないのか、不幸なのか、次に観るときには、また違う感慨を抱くのかもしれない。
「どうして好きって分かる?」
「顔を見ると幸せ」
「それから?」
「いつも想ってる」
「それから?」
「一緒にいると幸せを感じる」