天空の草原のナンサ

THE CAVE OF THE YELLOW DOG
脚本・監督 ビャンバスレン・ダバー
出演 ナンサル・バットチュルーン  バヤンドラム・ダラムダッディ・バットチュルーン  ウルジンドルジ・バットチュルーン  ナンサルマー・バットチュルーン  バドバヤー・バットチュルーン  ツォーホル  ツァレンプンツァグ・イシ
撮影 ダニエル・シェーンアウアー
音楽 べーテ・グループ
2005年 モンゴル・ドイツ作品 93分
カンヌ映画祭…パルムドッグ賞
サンセバスチャン映画祭…特別賞
評価☆☆☆☆


いやされるよ〜。
予告編で、モンゴルの見渡す限りの大草原を見て、いいなあ、いやされたいなあ、と思って観に行ったわけだが、大正解なのだった。
草原の真ん中で、ゲル(移動式住居)を立てて生活している遊牧民の家族5人。
周りには他の住居は見当たらない。

演じるのは、俳優ではなく、素人さん。監督は彼らと一緒に暮らしながら、撮影をしたという。
一家の生活をフィルムの収めた、半分ドキュメンタリーといってもいい作りだ。
必要最小限のストーリーはあるけれど、監督の大きな目的は、このモンゴルの遊牧民の素朴な暮らし、文化を伝えることだったと思う。

3人の子どもたちが可愛い!
ナンサという役名をもらった長女は6歳で、次女、長男と続く。
長男は、まだ、よちよち歩きの赤ちゃん。服装や髪飾り(!)が、お姉ちゃんたちと同じようなので、観ている途中までは女の子だと思っていた。

お話は…。
ナンサが洞穴の中で犬を見つけて、家に連れ帰る。父親は、野犬だったら狼を呼ぶから飼えないぞ、と言う。
母親は、思い通りにいかないことだってあるのよ、とナンサに教えるが、かといって強引に犬を捨てさせようとはしない。そのあたりが、いいのだよ、お母さん。お母さんも犬を可愛いと言ってたしね。

この犬、ツォーホルが、また、いいのだ。人なつっこいかと思えば、どこかへ行っちゃったり。勇ましかったりもする。ホント、可愛い。
体は主に白いのだが、頭のあたり全体が黒い。ちょっと珍しい模様かも。
ツォーホルは、カンヌ映画祭でパルムドッグ賞を受賞した。最高賞の「パルムドール」をもじって、ワンちゃんに与えられる賞がパルムドッグ。
最近では「ドッグヴィル」のモーゼが受賞してますね。

「黄色い犬の伝説」を、老婆がナンサに語ってくれる。
古くからの、人間と犬との関わりの密接さ。こういう話って、いいよね。
ずっと語り継がれて残ってほしい。

ゲルを解体する過程を、じっくり映すところは興味深かった。
バラバラにした「家」を荷車に積み、次に住む場所へと旅をする。出かける前には、ゲルを設置していた土地に感謝を捧げる。いいねえ。
素朴。じんわりとする。
人間って、こうやって自然の中で、たいしたものを持たないでも生きていけるんだよなあと、うらやましくも思った。
ナンサは、たった6歳で馬に乗って、羊の番をするのだ。すごいぞ! たくましいよ。

遊牧の暮らしを捨てて町へ出る者が増えている現実も示される。
ナンサの父親は町へ行くつもりがある。母親は遊牧の暮らしも悪くないと言う。ナンサは長期間、家を離れて学校に行ってしまうことになる。
この一家、この先は、どうするのだろうか。

自然、ワンちゃん、素朴な暮らし、可愛い子どもたち。
ほっと癒されたい方は、ぜひ、どうぞ。




〔2006年1月28日(土) シャンテ シネ3〕


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