リバティーン

THE LIBERTINE
監督 ローレンス・ダンモア
出演 ジョニー・デップ  サマンサ・モートン  ロザムンド・パイク  ケリー・ライリー  ジョン・マルコヴィッチ  トム・ホランダー  ルパート・フレンド  フランチェスカ・アニス  リチャード・コイル
脚本 スティーブン・ジェフリーズ
撮影 アレクサンダー・メルマン
音楽 マイケル・ナイマン
編集 ジル・ビルコック
2004年 イギリス作品 110分
評価☆☆☆


「率直に言うが、君たちは私のことを好きにならないだろう。紳士諸君はうらやみ、淑女諸君は拒絶するだろう…」と、観客に向けてジョニー・デップの長いモノローグが始まる。
かっこよすぎ!

デップが演じるのは、17世紀の詩人ジョン・ウィルモット、第2代ロチェスター伯爵
公式HPによると、ウィルモットは12歳でオックスフォード大学に入り、14歳で修士号をとった秀才だった。猥褻な詩や風刺に満ちた詩を書き、そのために宮廷を追われても、すぐに許されることを繰り返していたという。
その非常識ともいえる言動は、いつも注目を浴びたが、酒と女におぼれ、最後には33歳の若さでアルコールと梅毒のために死ぬ。

そんな、破滅的な生き方しかできなかったジョン・ウィルモットの半生を、ジョニー・デップが楽しげに演じている。
いや、これはシリアスな話だから、笑顔で楽しそうとか、そういう意味ではないよ。こういう魅力的な役を演じるのが、ものすごく嬉しいだろうなあと思うのだ。
こんなにインパクトのあるキャラクターを、ここまで軽々とカッコよく、しかも観客の反発を買わずに演じることができるのは、他に誰がいるだろう?
梅毒で目が濁り、顔が汚く崩れている様子まで演じているのだから、恐れいる。

ウィルモットは、ひとりの舞台女優を指導して彼女を一流の女優に仕立てたが、そのことが映画では中心的なエピソードになっている。
女優のエリー(エリザベス)・バリーに扮するのが、サマンサ・モートン
ウィルモットの指導を受けるシーンの彼女は見応えあり。あらためて、彼女の演技は、うまい!と認識。
おでこ広くて、頭がよさそうで、童顔で、可愛い、(おまけに胸のボリュームもある)演技派!

ウィルモットの妻エリザベスには、ロザムンド・パイク。姿かたちのスラリとした、気位の高い、家柄のよさそうな雰囲気の娘を好演。彼女は「プライドと偏見」でキーラ・ナイトレイの姉の役を演じた。(…観てないんだけど。)
この映画、なぜか「プライドと偏見」にも出た俳優が多い。ウィルモットの馴染みの娼婦役のケリー・ライリー、ウィルモットの友人役でトム・ホランダー、ルパート・フレンド。コスチュームプレイ(時代物)に似合う俳優というのは、やはりあるのだろうか。

ウィルモットの母の役で、フランチェスカ・アニスが出ているのも注目。私が彼女の名前を聞いて思い出すのは、ロマン・ポランスキー監督の「マクベス」(1971年)。ずいぶん昔だね…。
17歳年下のレイフ・ファインズと11年間、恋愛関係にあって、つい最近別れた、というニュースもあったっけ。

もとは舞台劇で、アメリカ公演ではジョン・マルコヴィッチがウィルモットを演じたが、映画化に当たってのウィルモットの第1候補はジョニー・デップだった。映画でマルコヴィッチは、国王チャールズ2世を演じている。

ウィルモットを評するのに、17世紀のロック、というものもあったが、ロックンロールをやっていたわけではなかった…そりゃそうだよね、17世紀だし。ロックのような刺激的な生き方をした、ということなのか。

映画を観たあと、ジョン・ウィルモット・ロチェスター公爵のことを調べていて、作家グレアム・グリーンがロチェスター伝を書いているのを知った。
「ロチェスター卿の猿」という著作で、神と悪魔という形の悩みを抱えた近代的な人物として、ウィルモットをとらえているらしい。
猿というのは、映画のなかで出てくる、猿と一緒の肖像画にちなむのだろうか。
この本、Amazonあたりでも、現在入手できないようだ。読んでみたいけれど。

ラストシーンには泣けた。そうなんだよね、彼の気持ちは、たぶん、ずっと、そうだったんだ
ここは、オープニングと合わせて、最高の見せ場のひとつ。

ざらつき気味の映像は、時代の雰囲気がリアルに出ていて、好感が持てる。
音楽はマイケル・ナイマン。いつもながら、心にすうっと入ってくるようなメロディを書いている。

ここまで反抗的に生きたのは何故なのか、自分を破滅するに任せたのは何故なのか。そのあたりを掘り下げるには至っていないと思えるが、ジョニー・デップの快演による、いかにもドラマティックな人生を見ることができた

オープニングのモノローグを載せておく。(IMDbより転載)
Allow me to be frank at the commencement. You will not like me. The gentlemen will be envious and the ladies will be repelled. You will not like me now and you will like me a good deal less as we go on. Ladies, an announcement: I am up for it, all the time. That is not a boast or an opinion, it is bone hard medical fact. I put it round you know. And you will watch me putting it round and sigh for it. Don't." It is a deal of trouble for you and you are better off watching and drawing your conclusions from a distance than you would be if I got my tarse up your petticoats. Gentlemen. Do not despair, I am up for that as well. And the same warning applies. Still your cheesy erections till I have had my say. But later when you shag - and later you will shag, I shall expect it of you and I will know if you have let me down - I wish you to shag with my homuncular image rattling in your gonads. Feel how it was for me, how it is for me and ponder. 'Was that shudder the same shudder he sensed? Did he know something more profound? Or is there some wall of wretchedness that we all batter with our heads at that shining , livelong moment.' That is it. That is my prologue, nothing in rhyme, no protestations of modesty, you were not expecting that I hope. I am John Wilmot, Second Earl of Rochester and I do not want you to like me.




〔2006年4月8日(土) ユナイテッド・シネマ としまえん〕


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