少々退屈だった。
妻は、なぜ殺されたのか。アフリカの地を舞台に、人命を軽視した製薬会社の悪行をつきとめようとする夫。
サスペンス・ミステリーを縦糸に、夫婦愛を横糸に、アフリカの現実を絡めて、つむいだ話なのだが、企業が悪いことをして、それを暴こうとするために生命が危険にさらされる話は、ありふれているし、どきどきするようなサスペンスもない。
昼食をとったあとに観たせいもあるのか、ちょっと眠くなった。面白ければ眠くはならないと思うのだが…。
妻が最後の日々に追いつづけていた事件を、さかのぼって夫が調べることで、より深く妻のことを知り、共有するものが増えていき、彼女に思いを馳せ、愛が強くなる、というのは分かる。
でも、私には平凡で、物語、俳優、映像など、どこといって惹かれるところがない、たいして面白みのない作品だった。
平凡といえば、たとえば、死体を見て気分が悪くなって吐く、という、おなじみのシーンも、いいかげんにやめてくれないだろうか。多くの映画で、判で押したように同じでしょう?
レイチェル・ワイズはアカデミー賞助演女優賞をとった。
映画の中ではメインの女優なのだから、主演でもいいじゃないかと思うのだが、彼女は初めから亡くなってしまう役なので、主演のレイフ・ファインズを回想場面で助ける助演といっても、まあ、いいか。
彼女の映画では「ハムナプトラ」の2作と「スターリングラード」を思い出す。
彼女も特別、素晴らしいとは思わない。妊婦ヌードは目を引いたけれども。
監督のフェルナンド・メイレレスは「シティ・オブ・ゴッド」で名をあげた人。この前作では、子どもたちが生き生きと描かれていたが、今作も、アフリカの子どもたちの生命感、躍動感は素晴らしく捉えられていて、そういうところは、この監督が得意な部分かと思えた。
ただ、私は「シティ・オブ・ゴッド」も、たいして面白いとか、すごいとは思わなかったんだよねえ。
ラストのレイフ・ファインズの行動は、よく分からない。私だったら、たぶん、あんなふうにはしないと思える。唐突だし、ちょっとキレイすぎるのではないか。
…と思って、帰りにジョン・ル・カレの原作本の最後のほうを、さっと見てみたのだが、…(結果は、これから読む人のために、書かないでおく。)
悪いヤツの役でビル・ナイが出ているのが嬉しい。「ラブ・アクチュアリー」で、中年ロックンローラーを演じて大注目。その後「アンダーワールド」などで、お目にかかっている。「パイレーツ・オブ・カリビアン」の続編には敵役で出演、楽しみである。
彼のご面相は、味わい深いものがあって、よいのだ。
ピート・ポスルスウェイトも、出てくると、印象的な顔&いい味、というのは一緒で、この2人を見られたことは、よかった。
ジョン・ル・カレは、リアルなスパイ小説がうまい作家ということだが、いままでに観た、彼の小説を原作にした映画2本は、つまらなかった。
その2本は、「寒い国から帰ったスパイ」(1965年)、「ロシア・ハウス」(1990年)。
詳しくは、もはや、あまり覚えていないが、なにしろ地味イコール面白くない、という感じだった気がする。
ただし、「テイラー・オブ・パナマ」(2001年)は観ていない。というか観る気がない。
原題の“The Constant Gardener”というのは、「こつこつと庭いじりする人」みたいな? そういう人間が、不正な社会に対抗して立ちあがるわけだ。
いろんな映画評を読むと、なにか、この作品の良さが分からないのは大人じゃないと言われそうな雰囲気だが、実際、一度観た限りでは、私には面白くないのだから、それでいいのだ。