嫌われ松子の一生

脚本・監督 中島哲也
出演 中谷美紀  瑛太  黒沢あすか  香川照之  市川実日子  柄本明  伊勢谷友介  柴咲コウ  ゴリ  劇団ひとり  宮藤官九郎  荒川良々  武田真治  BONNIE PINK  AI  土屋アンナ  木村カエラ  蒼井そら  片平なぎさ
原作 山田宗樹
撮影 阿藤正一
編集 小池義幸
音楽 ガブリエル・ロベルト  渋谷毅
2006年 130分
アジア映画賞…女優賞(中谷美紀)
評価☆☆☆☆


BJ「男運に恵まれず、怒涛(どとう)の転落人生を一直線にすべり落ちる、ある女の人生を描いた、娯楽快作
ノーマ「ん、娯楽快作?」
「快作というのが、ふさわしいね。決して、大作じゃないよ」

監督が『下妻物語』の中島哲也だというので、観に行ったんだよね」
「そう、あれはホントに、スカーンとクリーンヒットしたような快作だったからね。
ポップで映像的に面白い感覚のある、それまで見たことがなかったタイプの映画だった」

「『人生終わったと思いました』とか、思いがけず不幸な目に遭うと『なんで?』と言ったりして、不幸せになりたくないと自覚はしてるけど、不幸になっていく」
「いっしょうけんめい生きているつもりなのに、教師をクビになると家出したり、売れない作家とくっついたり、果ては人殺しまでしちゃうんだから、ほんとうは自分の行動に問題がありそうだよね」
「そうね。でも、自分では、どうしようもない選択なのかもしれない」
「それを、おちゃらかしてエンターテインメントにしているのではなくて、感動させるところは、きちんと作っているから、バランスがいいんだと思う」

「最後は泣いちゃった。あれは、きっと天国に行って救われるといっていいんだよね」
「うん、あのくらいしてあげないと、可哀想すぎるよ。それにしても、松子の死んだ原因には、言いようのない虚しさがあった」
「あまりにも、ひどい話。皮肉で可哀想で…これ、まともなドラマにしてたら見ていられない」
「CMを作るような、ミュージックビデオを作るような、過剰すれすれに演出して作りこんだ『絵』が、そこで生きてくる」

「ソープ嬢や刑務所の場面は、曲に合わせたミュージックビデオのような作りになっていたわよね」
とくに刑務所のほうは、あそこのシーンだけ取り上げても立派に通用するミュージッククリップになっていたよ」
「中谷美紀、よかったなあ。瑛太もよかったし。面白い映画って、けっきょく、みんながいい演技をしているってことになるのかしら」
「肯定的に観ている映画だから、俳優のほうも、よく思えるんだろうね。実際、こいつダメだ、なんて思えたキャストはいなかったな。
上に書いた以外にも、大勢のキャストが出ているね。挙げておくと、竹山隆範、谷原章介、谷中敦、本田博太郎、木野花、山本浩司、あき竹城、嶋田久作…」

「黒沢あすかのAVソフト制作会社社長役はハマってた」
「ドスのきいた姉御ふうな美しさ(笑)、みたいなものがあったね。
谷原章介の歯がキラリ!なんか、もうマンガのギャグのノリだよね」
「荒川良々は、優しくて、よさそうな人だけど、彼女が殺人犯と知ったら、豹変したかもね」
「松子は不幸になるべく運命づけられているから、きっとそうなっただろうな」
「最後は、あそこまで落ちなくても…と思う。人間って、そんなに強い人ばかりじゃないけど、もうちょっと頑張ってほしかった」
「確かにね。でも、ああなってしまうくらいハードな人生を送ってきたってことなんじゃないかな。
子どもにとって、親の愛が、どれほど大切なものなのかが分かる。
松子の晩年のシーン、人は見かけで判断しちゃいけないんだ、と思った。その人の人生には、見かけからは決して分からない、美しいものが心の中にあるかもしれないんだって」

「きっと中谷さんは、何かの女優賞をとると思う。とって当然の演技だったわ。監督が厳しくて、彼女にとっては、いちばんキツイ現場だったという話だけど、それだけの結果は出ているよね」
「女優賞だけでなくて作品賞や監督賞もとれそう。
観に行った映画館で、リピーター割引券をくれたよね。1300円、つまり前売券と同じ値段で観られる。また行く?」
「余裕があって、気が向いたら。他の映画を観る予定もいっぱいあるでしょ?」
「そうなんだよねー。また観てもいいな、という気持ちはあるんだけどね」




〔2006年6月4日(日) テアトルダイヤ〕


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