オリジナルは1972年の「ポセイドン・アドベンチャー」。私が映画を観始めた頃に、名画座ではなく、大きな映画館で観て、かなり印象に残った、ある意味、自分の映画史の中で記憶されるべき映画なのである。
また、この映画の後に、「タワーリング・インフェルノ」の公開が続き、パニック・アクション大作の“走り”となった作品だ。
ジーン・ハックマンの神父、太っちょのおばさんのシェリー・ウィンタース、可愛らしいキャロル・リンレー…懐かしいなあ。
船が転覆して、そこから脱出する、というアイデアが秀逸で、船の内部のセットが、すべて逆さまに作られているのが面白かった。
海上へ向かって、船の中を上へ上へと進むわけだが、それは、船の構造的に言えば、船底へと向かう冒険になる。そのへんが、気が利いている面白みなのだ。
「モーニング・アフター」という主題歌も印象的で、映画の中の主題歌というものを認識した映画でもあった。歌ったのはモーリン・マクガバン。この曲はアカデミー主題歌賞をとっている。
オリジナルのほうの話は、このくらいにして、リメイクであるが。
すっきりと、まとめていて、これはこれで面白い…かな。
船は、すぐに引っ繰り返って、脱出行がスピーディーに進む。
情感なんてものは、おあいそ程度に付けてあって、感動も何もあったもんじゃないですね。浅いです。
だから、そういう深いドラマティックな方面は捨てて、ただ、脱出のスリル、アクションを狙ったのだとすれば、それでもいいのでは?というところ。
オリジナルに、かなうわけがないんだから、と開き直って作ったのかもしれない。(笑)
脱出のしかたは、オリジナルとは、ずいぶん違うのではないかと思う。(オリジナルをはっきり覚えているわけではないけれど。)
狭いところを通ったり、水中を潜ったり、高いところを渡ったり。なにしろ、スリルを生むには苦労しない状況なのだ。
今回、100分足らずで、短めに、まとまっているのも、よかった。これが長かったら、つらい…というか、話が簡単だから、長くならないか。
脱出メンバー全員が、あんなに水中で息を止めていられるわけないじゃん、とか、アンタ、足を挟まれてたわりには元気じゃん、とか、ツッコミを入れたい場面もありますが、まあ、映画だし、いいか。
ジョシュ・ルーカスが、はじめは一匹狼的で自分勝手な男なのかと思ったら、けっこう、いいヤツなのが意外な展開ではあった。
私のお目当ては、「オペラ座の怪人」の歌姫エミー・ロッサム嬢なのは、いうまでもない。歌は歌わなかったが、まあ、いいでしょう。(映画が違うんだから、歌わないって。)
観ている間は楽しめるけど、あとに残るものは、あんまりないなあ。
オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」での主題歌に匹敵する歌も、なかったし。
こう見てくると、「まあ、いいか」が、いっぱいな映画だね。