ユナイテッド93

UNITED 93
脚本・監督 ポール・グリーングラス
撮影 バリー・アクロイド
音楽 ジョン・パウエル
編集 クレア・ダグラス  リチャード・ピアソン  クリストファー・ラウズ
2006年 アメリカ作品 111分
評価☆☆☆☆


2001年9月11日、アメリカで4機の民間機がハイジャックされた。
ニューヨークにあるワールド・トレード・センターに2機が激突。アメリカン航空11便が8時46分にタワー北棟へ、ユナイテッド航空175便が9時3分にタワー南棟へ。
さらにアメリカン航空77便が、9時38分にアメリカ国防総省(ペンタゴン)に突入。
そして、最後の1機、ユナイテッド航空93便は、10時3分、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外のシャンクスビルに墜落した。ハイジャックされた後、乗客たちが犯人の操縦しているコックピットに突入を企てたため、1機だけ、目標に辿(たど)り着く前に墜落したと考えられている。
この、アメリカ同時多発テロ事件の犠牲者は約3000人と言われ、史上最悪のテロ事件となった
(参考:フリー百科事典「ウィキペディア」)

ニューヨークと日本の時差は14時間。タワーへの最初の激突は、日本では午後10時46分のことだった。
このとき、私はテレビでこの事故を見ていた。旅客機がタワーに突っ込む映像を見たのは2機目の11時3分過ぎということになる。
いったい、何が起きているのか、世の中はどうなってしまうのか、漠然とした不安感をもちながら、テレビから目が離せなかった。
続いて、ペンタゴンへも飛行機が…というニュース。暗澹(あんたん)たる気持ちが広がった。

…話が少し(まったく?)それるが、この「映画感想/書くのは私だ」のコーナーでは、本作が記念すべき200本目になる。(ちなみに100本目は「スターシップ・トゥルーパーズ2」)
その200本目が、このような特別な映画になったことは感慨深いものがある。
(ちょっと自慢っぽいですが、書かないと誰も知らないことでもあるし、記録のためにも書いておきました。失礼しました。)

映画は、ユナイテッド航空93便ハイジャックの一部始終と、ハイジャックが続いて起こっていく異常事態に混乱しながらも対処していく管制と軍部の状況を見せる。
ユナイテッド航空93便の乗客の通話記録なども調べて、なるべく真実に近くなるように脚本が書かれたようだ。
管制や軍部の人間の役で、実際の事件が起きたときに関わった本人たちが、何人か出演している。
映画に出た彼らの思いは、どんなものだったろうか。あの忘れられない事件を、映画にして残すことの意義を感じていたのだろう。

徹底的なドキュメンタリー・タッチで、観る者は映画の中に引き込まれ、緊迫感が持続する。
ハイジャック犯を、ことさら悪く描くこともなく、ただ、事実と思われる出来事が推測を交えて展開していく。

乗客たちは、ハイジャックされた飛行機が他にもあり、それがワールド・トレード・センターやペンタゴンに突っ込んだことを、家族や友人との電話で知る。ただのハイジャックではない、自分たちの飛行機も、どこかに突っ込むのだと悟る。
家族に電話する乗客たちを見て、涙が止まらなかった。ほぼ、死が避けられない絶望の中で、愛する人に言葉を送る。なんという状況、なんという運命なのか。
簡単にハイジャックされることも含めて、旅客機のもつ怖さをも思った。

乗客たちは、このまま手をこまねいているよりも、ハイジャック犯が占拠するコックピットを制圧することのほうを決意する。少しでも助かる可能性を求めた。だが…。

下手な感想など必要はないのだろう。現実に起きた大事件を再現し、擬似体験をした観客ひとりひとりの心に、何かを残す。この映画の意義は大きい。




〔2006年8月26日(土) 日比谷スカラ座〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ