ユメ十夜

監督 実相寺昭雄  市川崑  清水崇  清水厚  豊島圭介  松尾スズキ  天野喜孝  河原真明  山下敦弘  西川美和  山口雄大
出演 小泉今日子  香椎由宇  菅野莉央  市川実日子  緒川たまき  本上まなみ  戸田恵梨香  うじきつよし  山本耕史  大倉孝二  阿部サダヲ  TOZAWA  山本浩司  ピエール瀧  松山ケンイチ
2006年作品 110分
評価☆☆☆


1908年7月25日から8月5日まで朝日新聞で連載された夏目漱石の短編「夢十夜」の映画化。
私がこの映画を観た動機は、当然のごとく、小泉今日子さんが出ているからである。偶然にも彼女の誕生日の2月4日。
小泉さんは第1夜の物話に登場。輝かしいトップバッターである。

「こんな夢を見た。
腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。」

という出だしで原作は始まる。
脚本は久世光彦、監督は実相寺昭雄。久世さんは2006年3月に、実相寺さんは2006年11月に世を去った。
死に関連した夢幻的なこの第一夜を観ると、亡くなっていった彼らに、どこかイメージ的に似通っていた作品なのかも、と不思議な思いもする。
久世さんは、小泉さんをテレビドラマでも、よく演出していた人。つながりは深い。

映画を観たときには、まさに、それぞれ「十話十色」といった、ほんとうに夢で見たような、バラバラなイメージの話の洪水のために、統一感などは感じなかったが、それでいいわけか。
それぞれのイメージを楽しめばいい。1話が10分ほどしかないから、つまらなくても、すぐに終わる。(笑)
あとで原作をウェブ上でざっと読んでみたが、基本的なストーリーは、ちゃんと踏襲していた。そうか、アレンジしているとはいえ、漱石の頭の中のイメージは崩していないのだね。


第二夜は、市川崑監督。禅で悟りを開こうとする男の話をサイレントで。つまらなかった。けど、原作とほぼ同じだから、どうしようもなかったか。

第三夜は、「呪怨」の清水崇が脚本・監督。背負った子どもが…というホラー風味は、さすがに彼らしいところか。

第四夜は、清水厚監督。彼はプロローグとエピローグも担当している。実相寺昭雄に師事した人で、映画には「ねらわれた学園」(1997年)などがある。男の夢の中にいるような少女のイメージがいい。

第五夜は、2003年BS-iのドラマ「怪談新耳袋」で監督デビューした豊島圭介の脚本・監督。市川実日子が馬で駆けるシーンがいい。並んで走っていた奇妙な化け物じみたものも面白かった。

第六夜は、第一夜で出演もしている松尾スズキの脚本・監督。仏像を彫る名人、運慶をダンスパフォーマーにしてしまったところが面白い。ノリがいいという点では、ずばぬけた一編で、楽しめる。

第七夜は、アニメーション。天野喜孝と河原真明の共同監督。美しいアニメで目先が変わる。

第八夜は、「リンダ リンダ リンダ」(2005年)などの山下敦弘が共同脚本と監督。話自体がよく分からないし、面白くもなかった。

第九夜は、「ゆれる」(2006年)などの西川美和が脚本・監督。お百度を踏む緒川たまきさんが美しいこと! 惚れます。彼女は2月11日生まれということで、私と2日違いで嬉しいです。テレビの「トリビアの泉」で「…うそつき」と毎回おっしゃっていた方です。

第十夜は、「地獄甲子園」(2002年)などの山口雄大が共同脚本と監督。脚色は、漫☆画太郎が担当。原作でも、男が絶壁から飛び込まなければ、「豚に舐められますが好うござんすか」と女に言われるという、理不尽な、また、女は怖い、という話。(笑)
スプラッター&ギャグなストーリーである。

そんな、いろんな夢を見た。




〔2007年2月4日(日) シネ・リーブル池袋1〕


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