1908年7月25日から8月5日まで朝日新聞で連載された夏目漱石の短編「夢十夜」の映画化。
私がこの映画を観た動機は、当然のごとく、小泉今日子さんが出ているからである。偶然にも彼女の誕生日の2月4日。
小泉さんは第1夜の物話に登場。輝かしいトップバッターである。
「こんな夢を見た。
腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。」
という出だしで原作は始まる。
脚本は久世光彦、監督は実相寺昭雄。久世さんは2006年3月に、実相寺さんは2006年11月に世を去った。
死に関連した夢幻的なこの第一夜を観ると、亡くなっていった彼らに、どこかイメージ的に似通っていた作品なのかも、と不思議な思いもする。
久世さんは、小泉さんをテレビドラマでも、よく演出していた人。つながりは深い。
映画を観たときには、まさに、それぞれ「十話十色」といった、ほんとうに夢で見たような、バラバラなイメージの話の洪水のために、統一感などは感じなかったが、それでいいわけか。
それぞれのイメージを楽しめばいい。1話が10分ほどしかないから、つまらなくても、すぐに終わる。(笑)
あとで原作をウェブ上でざっと読んでみたが、基本的なストーリーは、ちゃんと踏襲していた。そうか、アレンジしているとはいえ、漱石の頭の中のイメージは崩していないのだね。
第二夜は、市川崑監督。禅で悟りを開こうとする男の話をサイレントで。つまらなかった。けど、原作とほぼ同じだから、どうしようもなかったか。
第三夜は、「呪怨」の清水崇が脚本・監督。背負った子どもが…というホラー風味は、さすがに彼らしいところか。
第四夜は、清水厚監督。彼はプロローグとエピローグも担当している。実相寺昭雄に師事した人で、映画には「ねらわれた学園」(1997年)などがある。男の夢の中にいるような少女のイメージがいい。
第五夜は、2003年BS-iのドラマ「怪談新耳袋」で監督デビューした豊島圭介の脚本・監督。市川実日子が馬で駆けるシーンがいい。並んで走っていた奇妙な化け物じみたものも面白かった。
第六夜は、第一夜で出演もしている松尾スズキの脚本・監督。仏像を彫る名人、運慶をダンスパフォーマーにしてしまったところが面白い。ノリがいいという点では、ずばぬけた一編で、楽しめる。
第七夜は、アニメーション。天野喜孝と河原真明の共同監督。美しいアニメで目先が変わる。
第八夜は、「リンダ リンダ リンダ」(2005年)などの山下敦弘が共同脚本と監督。話自体がよく分からないし、面白くもなかった。
第九夜は、「ゆれる」(2006年)などの西川美和が脚本・監督。お百度を踏む緒川たまきさんが美しいこと! 惚れます。彼女は2月11日生まれということで、私と2日違いで嬉しいです。テレビの「トリビアの泉」で「…うそつき」と毎回おっしゃっていた方です。
第十夜は、「地獄甲子園」(2002年)などの山口雄大が共同脚本と監督。脚色は、漫☆画太郎が担当。原作でも、男が絶壁から飛び込まなければ、「豚に舐められますが好うござんすか」と女に言われるという、理不尽な、また、女は怖い、という話。(笑)
スプラッター&ギャグなストーリーである。
そんな、いろんな夢を見た。