噂の二人

THE CHILDREN'S HOUR (THE LOUDEST WHISPER )
監督 ウィリアム・ワイラー
出演 オードリー・へプバーン  シャーリー・マクレーン  ジェームズ・ガーナー  ミリアム・ホプキンス  フェイ・ベインター  カレン・バルキン  ヴェロニカ・カートライト
原作 リリアン・ヘルマン
脚本 ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影 フランツ・プラナー
音楽 アレックス・ノース
1961年 アメリカ作品 108分
評価☆☆☆★


日本橋図書館で、水野晴郎さんの解説つきで鑑賞。

小さな画面なのは仕方ないが、ビデオテープなのか、雑音が多くて、聞きづらかった部分があった。
あとで文句を言おうかと思ったが、チラシを読んでみると、ソフトの状態が悪い場合もありますよ、というようなことが前もって書いてあったので、これでは文句も言えないね。。。

ウィリアム・ワイラーといえば、もう、大監督、大御所。「ローマの休日」(1953年)、「必死の逃亡者」(1955年)、「大いなる西部」(1958年)、「ベン・ハー」(1959年)、「コレクター」(1965年)等々の作品がある。
どんなジャンルでも一流の映画に仕上げた。上に挙げた作品たちも、すべて違うジャンルといえる。

さて、「噂の二人」は、ワイラー自身が監督した「この三人」(1936年)を、自分で作り直した映画である。
1936年当時は同性愛のテーマをはっきりと描けなかったから、今度は、ちゃんと作った、ということらしい。
原題は“THE CHILDREN'S HOUR”(子供の時間)だが、今回観たときのタイトルは“THE LOUDEST WHISPER”となっていた。「いちばん、うるさい、ささやき」? 意味深な題名だ。たとえ、ひそひそと囁くような噂話であっても、悪いことであれば、言われているほうにとっては、ダメージが大きな、大声と同じ。

子どもの嘘が、大人の人生を狂わせる話。
本人が否定しても、ひとたび有罪だと決めつけてしまった周囲の目は、なかなか変わることはない。理不尽でも残酷でも悲劇でも、それが社会の一面なのだ。人の噂の怖さ。
同性愛に寛容になってきた現代であれば、この話の展開は変わってくるだろう。もっと明るい話になるか、もしかしたら、そもそも物語として成り立たなくなるかもしれない。

ドラマとして、しっかりと見せる力量は、さすがにワイラー。
ヘプバーンとジェームズ・ガーナーの別れ話のあたりからは、息をつかせない。
マクレーンの告白、駆け戻るヘプバーン、毅然と前を向いて歩き去るヘプバーン(ネタばれになるので詳しくは書きませんが)…。終盤のドラマティックな描写には、うならされる。

オードリー・へプバーンにとっては「ティファニーで朝食を」(1961年)の次の作品、シャーリー・マクレーンにとっては、名作「アパートの鍵貸します」(1960年)などの後の作品になる。「乗ってる二人」の共演なわけだ。

同じ学校の生徒に脅かされる子を演じているのが、ヴェロニカ・カートライト。この名前を聞いて、おっ!と思う人は、かなりの映画好き。そう、彼女は「エイリアン」(1979年)に出ているのだ! 他にもいろいろ出ているが、やはり「エイリアン」でしょう。今も現役の女優さんだ。

原作は、リリアン・ヘルマン。「偽りの花園」(1941年)では原作に加えて脚本も担当。「ジュリア」(1977年)は彼女の自伝的な映画。(ジェーン・フォンダがヘルマン役、恋人の作家ダシール・ハメットにはジェイソン・ロバーズが扮していた。)
脚色を担当したジョン・マイケル・ヘイズは、「泥棒成金」(1954年)、「裏窓」(1954年)、「ハリーの災難」(1955年)、「知りすぎていた男」(1956年)と、アルフレッド・ヒッチコック監督作品のシナリオをたくさん書いていた人。

音楽はアレックス・ノース。マリリンの「荒馬と女」の音楽担当だ。オープニング・クレジットで音楽が彼だと知り、「荒馬と女」と似たところのある、寂しげな音楽だなあ、やっぱり、と思ってしまった。そういえば、どちらも1961年の作品だ…。

今度は、オリジナルの「この三人」も観てみたいな。




〔2007年3月10日(土) 日本橋図書館〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ