今宵、フィッツジェラルド劇場で

A PRAIRIE HOME COMPANION
監督 ロバート・アルトマン
出演 メリル・ストリープ  リリー・トムリン  ケヴィン・クライン  ギャリソン・キーラー  ヴァージニア・マドセン  ウディ・ハレルソン  ジョン・C・ライリー  リンジー・ローハン  トミー・リー・ジョーンズ
原案 ギャリソン・キーラー  ケン・ラズブニク
脚本 ギャリソン・キーラー
撮影 エド・ラックマン
編集 ジェイコブ・クレイクロフト
音楽 リチャード・ドウォースキー
2006年 アメリカ作品 105分
ベルリン国際映画祭…「Berliner Morgenpost紙」読者賞
全米映画批評家協会賞…助演女優賞(メリル・ストリープ、対象作品は本作と「プラダを着た悪魔」)
評価☆☆☆


ロバート・アルトマン監督の遺作となった作品。
私はアルトマン監督の映画には、実は、あまり興味がない。「ゴスフォード・パーク」(2001年)は面白くなかったし、「ナッシュビル」(1975年)、「三人の女」(1977年)などは、もはや、あまり覚えていない。「ザ・プレイヤー」(1992年)、「Dr.Tと女たち」(2000年)は少し面白かったか。
テレビシリーズ「コンバット!」の製作・監督としてのほうが、彼に一目置きそうな私なのである。

それを、なぜ今回観たのかといえば、メリル・ストリープだ
先日「ソフィーの選択」を観て、メリル・ストリープという女優を改めて見直したからだ。彼女の演技を見てみたくなったのだ。

お話は、ラジオ放送の音楽ショーにかかわる人々の人間模様。買収によって放送打ち切りとなる最後の一夜のステージと舞台裏、そして後日談少々を描く。
多数の俳優がカントリーを歌うのは「ナッシュビル」を思わせる。それにしても、歌のうまい俳優さんというのは、たくさんいるものです。
メリル・ストリープとリリー・トムリンが姉妹デュオを演じている。(メリルが妹役。)
メリルさん、演技だけでなくて歌もうまいのである。
最近、アバの曲を使ったミュージカル「マンマ・ミーア」の主演に決まったというニュースを聞いたが、それも納得。

メリルとリリーが女性2人組ならば、男の2人組もいる。ウディ・ハレルソンとジョン・C・ライリー。カウボーイ姿でカントリーを。
そう、ジョンはミュージカル映画「シカゴ」で美声を披露済みである。

そんななかで、ひとりハードボイルドな探偵風を気取っているのが、ケヴィン・クライン。劇場の用心棒的な役割なのだろうけど。ムードに浸りきったナレーションが面白い。役名からしてガイ・ノワールだもん、ノワールなヤツなのさ。
私はメリル・ストリープとケヴィン・クラインが共演した「ソフィーの選択」を観たばかりであり、こちらの「今宵、…」にクライン氏が出ていることは知らなかったので、この共演再現は予想外で思わず喜びました。一緒に演技する場面は、それほど多くなかったが。

さらにメリルの娘役でリンジー・ローハンが。歌手で映画経験もあるけれど、アイドルのイメージが大きい彼女をアルトマン監督が使うのは、ちょっと意外な気もする。

謎の女にヴァージニア・マドセン。劇場に、ふと、やって来る。その目的が何なのか、はじめは分からない。途中でそれが分かってからは映画に不思議な感覚が出てくる。なにしろ彼女は○○なのだから。
このあたりのストーリーは、ガンによって亡くなったアルトマン監督の心情を作品に投影させたのではないかと、いやでも思えてくる。
人生の終焉は運命に任せるよ、というか、最期を受け入れる穏やかさ、覚悟(したい気持ち?)が、ふわんと漂っているのだ。
脚本は映画で司会役を務めているギャリソン・キーラー(このラジオショーは実際にあり、彼が本当に司会をしているのだ!)が書いているが、監督のアイデアも入っているのかもしれない。

どの俳優も力が入ることなく、楽しんで演じているように見える。
全体に淡々とした印象を受けるのは、基本的に日々の人生が、そうしたものだからなのか。
人生の味わいがある…のは分かるが、私には修行が足りないのか、少し食い足りない感触なのである。
カントリー・ミュージックがそれほど好きではないのも、原因のひとつかな?

お目当てのメリルについていえば、演技面は他の俳優たちとの共同作業(コラボレーション)という感じで突出してはいない。うまい俳優が他にも多いし。
でも、そういうコラボができるのが、うまいということなんだよねえ。




〔2007年3月11日(日) 銀座テアトルシネマ〕


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