モンローのような女

監督 渋谷実
出演 真理明美  佐田啓二  森光子  加藤武  千之赫子  笠智衆  山本圭  賀原夏子  川津祐介  長門勇  宝みつ子  春川ますみ  国景子  津川雅彦  三上真一郎
原作 舟橋聖一
脚本 白坂依志夫  渋谷実
撮影 長岡博之
編集 杉原よ志
音楽 黛敏郎
タイトルバック 真鍋博
1964年作品 96分
評価☆☆★


さて、同時上映の「喜劇 仰げば尊し」を観たあとは、真打ち「モンローのような女」だ。
噂には聞いていた、マリリン・モンロー・ファンには幻の(?)日本映画
映画館で観られるとは思わなかった。マリリン・ファンであれば興味を持たないわけがない。

主演は、真理明美。舟橋聖一の原作を映画化するに当たって、主演女優を募集して合格した人だ。1943年5月4日生まれだから、映画撮影中は20歳だろう。
「モンローのような女」だから、当然のようにマリリンの「マリ=真理」が芸名に付いたのだろうか。
なにしろ、この「真理明美」という女優さんを観ることができるだけでも、マリリン・ファンたる私は嬉しいのだ。
彼女はテレビシリーズ「プレイガール」(1969〜74年)に出演していたのだが、残念ながら、私は観た記憶がない。他にも映画やテレビに出ていたというが、たとえ私が見たことがあるとしても、覚えてはいないのだった。
その後、彼女は、監督の須川栄三(1998年没)と結婚して引退したとのこと。

スクリーンに登場した真理さん。…やっぱり素人。当たり前だが。
俳優たちの中にいると、いかに素人かが、よく分かる。
声も可愛いとは言えず、マリリンと似通っているといえそうな点は、ひとつもない
スタイルで選ばれたのだろうか。

お話のほうは、17歳の高校生、島いち子(真理明美)が写真のモデルになって、最終的にヌードを撮らせるかどうか、というもの。
「モンローのよう」なのは、「ヌード写真のモデル」「母親が精神病院に入っている」ことくらい。
近所の娘・まさ枝(千之赫子〔ちのかくこ〕、宝塚歌劇団出身で、東千代之介と結婚した。1985年没)が、いち子に、「ナイアガラ」観てきたのよ、と言ってパンフレットを見せ、マリリンの真似をしてヒップを振って歩いてみせたり、いち子がマリリンの写真を見ていたり、彼女自身もお尻を振って真似したり。そのあたりがマリリンと直接関係があるところだ。

「お笑い担当」といえそうなのが、加藤武。近年の映画では、名探偵・金田一耕助シリーズの等々力警部役で「よし、分かった!」というフレーズで有名ではないだろうか。
私が加藤さんを知ったのはNHKテレビの「警部マクロード」シリーズ(1975〜77年)の声優として。マクロードが宍戸錠さん、加藤さんはマクロードの上司の役だった。
本作では、森光子さんのパトロンのような役で、最後に、いち子にも手を出そうとする。
「お調子者」な演技を、じつに軽々と楽しんでいるようだ。

いち子の叔母であるお鈴(森光子)が切り盛りする店が、小料理屋のような見かけなのだが、お色気も多少サービスしているようで、しかも、なじみの客には、お風呂を提供する、という変な店なのだ。カップルは、そこで、いちゃいちゃできるというわけ。
そんな仕事をしている母親への反発もあり、息子(山本圭)が家出。いかにも典型的な頭の堅い青臭いガキである。(笑)

いち子の父親役は笠智衆。飲んだくれるばかりで見せ場なし。飲んだくれるか、いち子を怒っているか、どっちかみたいな印象。

精神病院のシーンは、なんだかシュールでもある。いきなり見知らぬ男がいち子と話していて、なんだこりゃと思ったら、患者の男(?)だったり、部屋にいるニワトリを窓から外へ放り出したりと、唐突っぽい展開が見られる。それが精神病院らしいといえば、いえるかもしれないが。

物語の最後では、大きな事件が重なって起きるが、映画はサラリと流していて、いち子を追い詰めるだけの出来事としてしか使われていない。こういうやり方でいいのかいな、と観ているほうが思ってしまう。

エンディングでは「第一部 終」とかなんとか出ていた。当初は続編を作る意志があったんですね。
この程度の出来の映画では、続編は無理だったか…。




〔2007年3月21日(水) シネマヴェーラ渋谷〕


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