さて、同時上映の「喜劇 仰げば尊し」を観たあとは、真打ち「モンローのような女」だ。
噂には聞いていた、マリリン・モンロー・ファンには幻の(?)日本映画。
映画館で観られるとは思わなかった。マリリン・ファンであれば興味を持たないわけがない。
主演は、真理明美。舟橋聖一の原作を映画化するに当たって、主演女優を募集して合格した人だ。1943年5月4日生まれだから、映画撮影中は20歳だろう。
「モンローのような女」だから、当然のようにマリリンの「マリ=真理」が芸名に付いたのだろうか。
なにしろ、この「真理明美」という女優さんを観ることができるだけでも、マリリン・ファンたる私は嬉しいのだ。
彼女はテレビシリーズ「プレイガール」(1969〜74年)に出演していたのだが、残念ながら、私は観た記憶がない。他にも映画やテレビに出ていたというが、たとえ私が見たことがあるとしても、覚えてはいないのだった。
その後、彼女は、監督の須川栄三(1998年没)と結婚して引退したとのこと。
スクリーンに登場した真理さん。…やっぱり素人。当たり前だが。
俳優たちの中にいると、いかに素人かが、よく分かる。
声も可愛いとは言えず、マリリンと似通っているといえそうな点は、ひとつもない。
スタイルで選ばれたのだろうか。
お話のほうは、17歳の高校生、島いち子(真理明美)が写真のモデルになって、最終的にヌードを撮らせるかどうか、というもの。
「モンローのよう」なのは、「ヌード写真のモデル」「母親が精神病院に入っている」ことくらい。
近所の娘・まさ枝(千之赫子〔ちのかくこ〕、宝塚歌劇団出身で、東千代之介と結婚した。1985年没)が、いち子に、「ナイアガラ」観てきたのよ、と言ってパンフレットを見せ、マリリンの真似をしてヒップを振って歩いてみせたり、いち子がマリリンの写真を見ていたり、彼女自身もお尻を振って真似したり。そのあたりがマリリンと直接関係があるところだ。
「お笑い担当」といえそうなのが、加藤武。近年の映画では、名探偵・金田一耕助シリーズの等々力警部役で「よし、分かった!」というフレーズで有名ではないだろうか。
私が加藤さんを知ったのはNHKテレビの「警部マクロード」シリーズ(1975〜77年)の声優として。マクロードが宍戸錠さん、加藤さんはマクロードの上司の役だった。
本作では、森光子さんのパトロンのような役で、最後に、いち子にも手を出そうとする。
「お調子者」な演技を、じつに軽々と楽しんでいるようだ。
いち子の叔母であるお鈴(森光子)が切り盛りする店が、小料理屋のような見かけなのだが、お色気も多少サービスしているようで、しかも、なじみの客には、お風呂を提供する、という変な店なのだ。カップルは、そこで、いちゃいちゃできるというわけ。
そんな仕事をしている母親への反発もあり、息子(山本圭)が家出。いかにも典型的な頭の堅い青臭いガキである。(笑)
いち子の父親役は笠智衆。飲んだくれるばかりで見せ場なし。飲んだくれるか、いち子を怒っているか、どっちかみたいな印象。
精神病院のシーンは、なんだかシュールでもある。いきなり見知らぬ男がいち子と話していて、なんだこりゃと思ったら、患者の男(?)だったり、部屋にいるニワトリを窓から外へ放り出したりと、唐突っぽい展開が見られる。それが精神病院らしいといえば、いえるかもしれないが。
物語の最後では、大きな事件が重なって起きるが、映画はサラリと流していて、いち子を追い詰めるだけの出来事としてしか使われていない。こういうやり方でいいのかいな、と観ているほうが思ってしまう。
エンディングでは「第一部 終」とかなんとか出ていた。当初は続編を作る意志があったんですね。
この程度の出来の映画では、続編は無理だったか…。