サンシャイン2057

SUNSHINE
監督 ダニー・ボイル
出演 キリアン・マーフィ  ローズ・バーン  クリス・エヴァンス  ミシェル・ヨー  トロイ・ギャリティ  クリフ・カーティス  ベネディクト・ウォン  真田広之  マーク・ストロング
脚本 アレックス・ガーランド
撮影 アルウィン・H・カックラー
音楽 ジョン・マーフィ  アンダーワールド
編集 クリス・ギル
2007年 イギリス作品 108分
評価☆☆☆☆


すごく刺激的な映画だった。
観念的で、少し分かりづらいところがあるけれど、SF映画好きで、多少は分からなくても食らいついていける人なら、楽しめる可能性が大きいと思う。
「2001年宇宙の旅」「エイリアン」「イベント・ホライゾン」などを、ちょこちょこと思い出すような、「宇宙船もの」である。
かなり特異な存在位置を獲得できうる独特なSF映画は、そう多くないと思うが、本作にはその資格あり、ではないか。

どんなSFかといえば、実に硬派である。
煩雑な部分は説明しない、とでもいえそうな姿勢も見え(実際、私にもよく分からない部分はある)、その突き放し加減の視点をキープしていったかのような作り手側の強い意志によって、キワ物になりそうだった後半の展開は、逆に不思議な魅力に思えてくる。
強引に話を進めていって、ブレがないのである。
まあ、観る人によっては、映画の後半はキワ物に堕した、と思うだろう。
そのあたりは、百聞は一見にしかず。すべて、受け手の感じ方による。

SF的といえば、去年の「トゥモロー・ワールド」も、ほとんど期待なしで観て大当たりだったが、この「サンシャイン2057」も、それに近い喜びがあった。こちらの内容は純粋な宇宙物、という違いはあるが。

スト−リーは、2057年、弱った太陽に核爆弾を打ち込んで活性化させようという計画のために、太陽を目指している宇宙船の乗組員たちの話。
宇宙船の名前は、イカロス2号。ギリシャ神話のイカロスは空を飛ぶのだが、羽が太陽の熱で溶けてしまって墜落する。いいのかな、太陽に向かう宇宙船に、こんな名前をつけて?

真田広之、キリアン・マーフィが出ていることは、映画を観る前に知っていた。真田さんがどんな演技をするのかが、大きな楽しみのひとつでもあった。
真田さん、画面に出てきて、さっそくセリフがあった。おお(うれしい)、と思っていたら、なんと彼が船長だというではないか!
ひゃー! 素晴らしい!
乗組員の中に、他にも見たことのある女性が! ミシェル・ヨーさんだ!
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(1998年)、「グリーン・デスティニー」(2000年)などで私の印象に残る女優さん。
他にもベネディクト・ウォンという中国系の俳優が出ているし、ダニー・ボイル監督、アジア系の人間に敬意でも払っているのでしょうか。
帰宅してからキャストを確認したら、クリス・エヴァンスの名前が。おお! 「ファンタスティック・フォー」の燃える男! 気づかなかった。
(そういえば予告編で「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」を観たのだ。面白そうだったなあ。)

太陽光線の力をビジュアルにして見せたシーンは美しく、いちばんの見どころとも言える。
宇宙船の乗組員が、強烈な日の光を浴びている描写が序盤からあり、彼らが日光(映画の原題は「サンシャイン」、つまり「日光」だ)のパワーに魅せられていることを示す。
それは、いましも太陽に灼(や)かれようとする仲間に向かって、ある乗員が問いかける場面にも表われる。
彼は仲間の心配をするというよりも、仲間の体験を知りたい、うらやましい、と、思わず感じているのだ。

主役は太陽。
その大いなる存在を前にして、人間は…。

ボイル監督といえば、私は「普通じゃない」(1997年)くらいしか観ていないのだが、今回の作品を観て、彼の他の作品もチェックしてみたくなった。




〔2007年4月21日(土) スバル座〕


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