フリーダム・ライターズ

FREEDOM WRITERS
脚本・監督 リチャード・ラグラヴェネーズ
出演 ヒラリー・スワンク  パトリック・デンプシー  スコット・グレン  イメルダ・スタウントン  マリオ  エイプリル・リー・エルナンデス  ジェイソン・フィン  ハンター・パリッシュ  クリスティン・ヘレラ
原作 フリーダム・ライターズ  エリン・グルーウェル
撮影 ジム・デノールト
音楽 マーク・アイシャム  ウィル・アイ・アム
編集 デヴィッド・モリッツ
2007年 アメリカ作品 123分
評価☆☆☆☆


問題児の多いクラスを立て直す先生。
よくあるテーマといえば、そのとおり。
奇跡のような出来事が、しかし実話をもとにしていると知ると、少し驚きだ。

1994年、アメリカのロサンゼルス郊外、ロングビーチ。ウィルソン公立高校203教室。
クラスの中には、黒人をはじめ、さまざまな人種がひしめく。
彼らはお互いの人種同士でまとまって、他とは交わらない。
ギャングのような生活を送る子もいる。肌の色の違う者との抗争、拳銃の撃ち合い。
ある少女は、外へ出れば戦場、と話す。
203クラスの中でも、銃を突きつけられたことがある者、知り合いを亡くした経験がある者が多数。

人種の「るつぼ」と言われるアメリカの現実が、これほどのものとは。この映画を観て改めて認識した。今も似たようなものなのか。
苛酷な現実を生きている子どもたちを、先生は、どうやって指導していくのか。

新人教師であるエリン・グルーウェル(ヒラリー・スワンク)は、自分の信念にしたがって考え、行動していく。
彼女は生徒に読ませる本を買うために、アルバイトまでする。
当然、彼女が家庭のためにかける時間は少なくなる。はじめは理解がある夫だったが、やがて…。

やはり、そこまで家庭生活を犠牲にしなければ、奇跡のような教育を行うことはできないのか。
ひとつを得るためには、ひとつを失うのだろうか。
そんなことを思った。
仕事いちずに打ち込む妻を支えきる夫というのも、いないことはないとは思うけれど、よほど出来た人でないと無理なのか。

先生の頑張りと、生徒たちの好演で、感動的な場面は生まれる。
私も泣けたし、館内でも、鼻をすすりあげる音が、そこかしこで聞こえた。
このクラスに関しては、素晴らしい教育効果があったのは確か。
最高の教育である。

ただし、問題はある。
2年間だけ受け持つはずのクラスだったのに、ミスG(グルーウェル先生は、このように生徒に呼ばれる)は203クラスを、4年間、最後まで担当しようと教育委員会に働きかける。
つまり、特殊なのである。このクラスの指導法は。
ミスGでないと、このクラスはやっていけない。

もうひとつ、ミスGが新人教師だったからこそ、できた教育という面もある。
ベテラン教師だったら、あれだけ思いきった新しい授業はできないはず。オーソドックスなやり方は無視しているような授業に見える。それが許される学校だったことが、まずラッキー。
彼女は、生徒の問題に合うと思われる授業をすることができた。それが奇跡のようなものではないか。

だから、理想の授業、理想の先生というのは、どの先生もミスGのように、そのクラスに合った方法で生徒に接するしかないわけで、カリキュラムなどは無視するしかなくなるかもしれない。
加えて、ふつうは、この203クラスで成功した例のように、問題がはっきりしているわけではないだろう。
それは、まさに至難の業。今の日本の教育の実態では、もちろん、実行可能には思えない。

難しい問題だが、ひとつの教育パターンを紹介する映画として、問題提起として、本作は意味があるように思う。




〔2007年7月29日(日) シャンテ シネ3〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ