こんなに前向き、ポジティブ・パワー大爆発のミュージカル映画は、私が知る限りでは他にないかも。
能天気、陽気という面では、本作と同じくジョン・トラボルタが出演している「グリース」を思い出すが。
映画が始まって、すぐに流れてくる1曲目から、私は、この前向きパワーや、あふれる楽しさに直面して、うれしさと感動のあまり涙をダーダーと、こぼしていた。
知っている曲がないから、乗れないかもしれないと多少は思ったが、それは要らない心配だった。
楽しい! うれしい!
人をハッピーにさせるミュージカルを狙ったなら、本作は、ものの見事に大成功といえる。
もちろん、現実ではない。
テレビのオーディションに、これほど簡単に合格することは難しいだろうし(しかも、容姿がイマイチな太めの女の子だ)、人種差別のデモに白人で1人だけ加わったりするのも気軽にはできないこと。
ラストの大団円(?)も、番組司会者の力が強すぎる。普通ならプロデューサーやスポンサーの意向のほうが勝つだろう。
自分が信じるなら、やるんだ! という父親も単純すぎる。
…だけど、いいのだ。映画だから。
こうであってほしい、こうなったら素晴らしいだろうなあ、と観客は、うれしくなる。幸せになる。夢を見る。映画の中で理想を体験させてもらう。
そして、映画の描いたことが人々の心に残り、それが現実の方向に少しでも働いたなら。
それは何と幸せなことだろう。
…などと難しいことを言わなくても、この映画の楽しさは満点。
オーディションで選ばれたという主役のニッキー・ブロンスキーの歌もイケる。
超おデブな母親に扮したトラボルタは、歌うと、やはり彼の地声が出る(「グリース」などで聞いているから分かるのだけど)が、彼だと知らずに観たら、最後まで誰なのか分からなかったと思う。
エンドロールで、おデブお母さんの姿とともに「ジョン・トラボルタ」の名前が出る。ここで、「ええーーっ! そうだったのかあ!」と驚いてみたかった。
ミシェル・ファイファーが出ていることは、観るまで知らなかった。
あれ、ミシェルみたいだなー、やっぱり、そうだぞ、と私は喜んだものである。
彼女も歌はうまいのだ。「グリース2」(1982年)に出ていたし、「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」(1989年)でも美声を披露していた。
もっと歌の場面があればよかったのになー。
お父さん役はクリストファー・ウォーケンだし、番組が黒人出演者になる「ブラック・デー」のDJ役はクイーン・ラティファ。
強力なスターで周囲を固めているわけだが、私が注目したのは、主役の女の子の親友役を演じたアマンダ・バインズ。(下の方に写真あり。)
ちょっと調べたところでは、13歳の頃から、自身のテレビショーを持っていたという。すごい。「恋するマンハッタン」のホリー役でも人気だったとは、テレビドラマに疎(うと)い私は、知るよしもなかった…。
監督のアダム・シャンクマン。まったく知らなかったが、こちらも調べてみると、ダンサーから振付師、そして映画監督になった人。
この「ヘアスプレー」では、振付も担当している。
で、ある意味、いちばん驚いたのが、番組司会者を演じたジェームズ・マーズデン。
んー、聞いたことはある名前だなあ…と思ってたが。
映画を観終わって、帰宅して、ネットの記事を見て初めて気がついた。
「X-MEN」シリーズのサイクロップスだよ!
ミュージカル番組の司会者と、まーーったく、結びつかない。
そもそもサイクロップスが地味すぎたんだよな…とブツブツ。
…ともあれ、最高級に楽しくなれるミュージカル。
観ながら踊りたかったよ。
楽しくて、うれし泣きすぎた。