これがまた、観に行ったのが、舞台あいさつ付きの回ということで。御大・中村勘三郎を見たくて駆けつけた人も、大勢いたんだろうなあと思いますね。
私は、もちろん、小泉今日子さんが目当てですよ!
小泉さん、今年の年初には歌手活動もやるのかと、多少期待させましたが、過去のアルバムを再発したくらいで、すっかり女優業に集中しているかのご様子。
この「てれすこ」では、品川の花魁(おいらん)役。
きっぷの良さをセリフで出すところは、なかなか魅せてくれますねえ。
私にとっては、どんな役をやっても、どうしてもアイドル時代からのお付き合いの印象で、かわいさが根本に見えてしまうけれど、これだけ映画出演が続くのは、世間では女優として認められているわけで、めでたいことです。
映画は、弥次喜多道中に落語ネタをミックスしたもの(らしい)。
らしい、というのは、恥ずかしながら、私は「狸賽(たぬさい)」しか分からなかったので…。(「狸賽」は、狸の恩返し。ばくち場で、子ダヌキがサイコロに化ける話ですね。)
品川の遊郭も舞台になった、とくれば、やはり落語をもとにした映画「幕末太陽傅」(主演:フランキー堺、監督:川島雄三、1957年)があります。
舞台あいさつで、中村勘三郎さんが大好きな映画と言ってましたし、監督さんともども、「幕末太陽傅」は、かなり意識していたようですね。
オープニングクレジットが、ちょっと面白いんでございますよ。
ジョージ・ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を、和楽器を使って和風にアレンジしておりまして。
「ラプソディ・イン・ブルー」といえば、ジーン・ケリーのダンスが圧倒的だった「巴里のアメリカ人」(1951年)で印象的な名曲。
「和モダン」な雰囲気で、いいですねえ。
アニメも、中村勘三郎の顔が丸、柄本明の顔が四角、小泉キョン2の顔が逆三角形で、三人三色、面白いんですよ!
そうですよねえ、小泉さんはアゴがとがってて、エレベーターのボタンをアゴで押した、という伝説がアイドル時代にありましたから!
え、お話は、どんなんだって? それじゃあ、少しばかり話してお聞かせしましょうか。
花魁のお喜乃(小泉)が、おとっつぁんが病気で、ひと目会いたいっていう理由をつけ、弥次郎兵衛(中村)に頼んで、足抜けを手伝ってもらうわけです。
足抜けってのは、遊郭を脱走することですね。遊女は借金のために遊郭を逃げられないわけですが、そこを無理やり逃げるんですよ。
喜多さん(柄本)は、芝居で大失敗して、大阪で修業しなおすという一応の名目で、2人にくっついていくことになる。
その道中の出来事です。
酒グセの悪い喜多さんに、絶対酒は飲まないように、と弥次さんは念を押します。
こういう場合、たいてい飲んじゃうわけですが。
喜多さんの酔いっぷり、暴れっぷりも、見ものと言えましょうか。
てれすこ、というのは、正体不明の巨大生物。
下半身は銀のウロコで覆われ、魚のよう。大きさ1.8メートル。頭が大きく、オタフクのような顔で、粉をふく羽根のようなトサカがあり、人面魚のようでもあり。イノシシのような醜い牙と、シカのような角もある。…と、パンフレットには書いてあります。
まったくもって、なんじゃ、こりゃ〜です。
弥次さんが最後に「てれすこ」を食べることに、あいなりますが、さあ、いったいどうなりますか。
じつは、この場面、泣けるんですねえ。私は一気に嗚咽しそうになるほど、キマシタ。
すんばらしいです、勘三郎! イヨッ!
江戸時代の庶民の生活なんてえものを、笑って、ときには、じんわりホロリと。
人と人とのつながり、人情の機微が、いい具合です。
これといって派手でもなく、ゆるりと進むお話は、勘三郎さんも言ってましたが、この映画の肝(キモ)は、一見、見つけにくいかもしれません。