やじきた道中 てれすこ

監督 平山秀幸
出演 小泉今日子  中村勘三郎  柄本明  笑福亭松之助  淡路恵子  間寛平  笹野高史  松重豊  山本浩司  國村隼  吉川晃司  鈴木蘭々  ラサール石井  星野亜希  藤山直美
脚本 安部照雄
撮影 柴崎幸三
編集 川島章三
音楽 安川午朗
2007年作品 108分
評価☆☆☆


これがまた、観に行ったのが、舞台あいさつ付きの回ということで。御大・中村勘三郎を見たくて駆けつけた人も、大勢いたんだろうなあと思いますね。
私は、もちろん、小泉今日子さんが目当てですよ!

小泉さん、今年の年初には歌手活動もやるのかと、多少期待させましたが、過去のアルバムを再発したくらいで、すっかり女優業に集中しているかのご様子。
この「てれすこ」では、品川の花魁(おいらん)役。
きっぷの良さをセリフで出すところは、なかなか魅せてくれますねえ。
私にとっては、どんな役をやっても、どうしてもアイドル時代からのお付き合いの印象で、かわいさが根本に見えてしまうけれど、これだけ映画出演が続くのは、世間では女優として認められているわけで、めでたいことです。

映画は、弥次喜多道中に落語ネタをミックスしたもの(らしい)。
らしい、というのは、恥ずかしながら、私は「狸賽(たぬさい)」しか分からなかったので…。(「狸賽」は、狸の恩返し。ばくち場で、子ダヌキがサイコロに化ける話ですね。)

品川の遊郭も舞台になった、とくれば、やはり落語をもとにした映画「幕末太陽傅」(主演:フランキー堺、監督:川島雄三、1957年)があります。
舞台あいさつで、中村勘三郎さんが大好きな映画と言ってましたし、監督さんともども、「幕末太陽傅」は、かなり意識していたようですね。

オープニングクレジットが、ちょっと面白いんでございますよ。
ジョージ・ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を、和楽器を使って和風にアレンジしておりまして。
「ラプソディ・イン・ブルー」といえば、ジーン・ケリーのダンスが圧倒的だった「巴里のアメリカ人」(1951年)で印象的な名曲。
「和モダン」な雰囲気で、いいですねえ。
アニメも、中村勘三郎の顔が丸、柄本明の顔が四角、小泉キョン2の顔が逆三角形で、三人三色、面白いんですよ!
そうですよねえ、小泉さんはアゴがとがってて、エレベーターのボタンをアゴで押した、という伝説がアイドル時代にありましたから!

え、お話は、どんなんだって? それじゃあ、少しばかり話してお聞かせしましょうか。
花魁のお喜乃(小泉)が、おとっつぁんが病気で、ひと目会いたいっていう理由をつけ、弥次郎兵衛(中村)に頼んで、足抜けを手伝ってもらうわけです。
足抜けってのは、遊郭を脱走することですね。遊女は借金のために遊郭を逃げられないわけですが、そこを無理やり逃げるんですよ。
喜多さん(柄本)は、芝居で大失敗して、大阪で修業しなおすという一応の名目で、2人にくっついていくことになる。
その道中の出来事です。

酒グセの悪い喜多さんに、絶対酒は飲まないように、と弥次さんは念を押します。
こういう場合、たいてい飲んじゃうわけですが。
喜多さんの酔いっぷり、暴れっぷりも、見ものと言えましょうか。

てれすこ、というのは、正体不明の巨大生物。
下半身は銀のウロコで覆われ、魚のよう。大きさ1.8メートル。頭が大きく、オタフクのような顔で、粉をふく羽根のようなトサカがあり、人面魚のようでもあり。イノシシのような醜い牙と、シカのような角もある。…と、パンフレットには書いてあります。
まったくもって、なんじゃ、こりゃ〜です。

弥次さんが最後に「てれすこ」を食べることに、あいなりますが、さあ、いったいどうなりますか。
じつは、この場面、泣けるんですねえ。私は一気に嗚咽しそうになるほど、キマシタ。
すんばらしいです、勘三郎! イヨッ!

江戸時代の庶民の生活なんてえものを、笑って、ときには、じんわりホロリと。
人と人とのつながり、人情の機微が、いい具合です。
これといって派手でもなく、ゆるりと進むお話は、勘三郎さんも言ってましたが、この映画の肝(キモ)は、一見、見つけにくいかもしれません。




〔2007年11月10日(土) 丸の内ピカデリー2〕


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