本作で第3作目となる「ジェイソン・ボーン・シリーズ」。
スパイアクション映画として、立派に名を残すシリーズになったのではないだろうか。
記憶をなくしたボーンが、CIAでの自分の過去の秘密に迫る。
アルティメイタムとは「最後通告」。最後の決戦に挑むボーン。
CIAの新しい作戦を取材する新聞記者ロスに接触するボーンだが、すでにロスはCIAにマークされていた。
ロスの命が危ないと知ったボーンは、ロスを誘導しながらCIAの追跡をかわそうとする。
この攻防が、ドキドキワクワク、すごく緊迫感があって、おもしろすぎるほど、おもしろい!
CIAの科学技術を駆使した追跡を、知力をはじめとするスパイとしての能力を存分にボーンが発揮して逃げ切れるのか。
ひとつ、引っ掛かったのは、ボーンがロスと連絡を取る手段について、あんなに都合良く準備できるか?という点。(ネタばれしたくないので、分かりにくい表現になってしまうが。)
この新聞記者がらみの場面だけでも、すごいと思うのだが、さらに、まだまだ、追跡・逃走劇あり、カーチェイスあり、殴り合いありの、相手の裏はかきまくるわで、退屈しない。
監督は前作と同じで、短いカット割りを重ねて、たたみかけていく手法と、カメラぶれの臨場感は相変わらず、どころか、エスカレートしているようだ。
私が、もっとも驚いたシーンは、映画の中盤に現われる。
前作のラストシーンが、なんと! 本作と、こんなふうにつながるなんて!
私は、こんな工夫には、過去に観た映画の中で出合った記憶はない。
もちろん、続編でなければ使えない手だが、一体これは、前作を作ったときから考えてあったのだろうか、それとも、後から、いいこと思いついたとばかりのナイスアイデアか。
頭のいい脚本に感心する。
ボーン抹殺に躍起になる上司と対立する、CIAの職員パメラ・ランディ(ジョアン・アレン)の存在が利いている。
悪者ばかりいるような印象に取られがちな組織内の「良心」を代表し、CIAの評判が落ちるのを防いでいる。(半分冗談。)
3部作すべてを通じて、ボーンと関わるCIA支局員ニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)は、今回、もっとも活躍した感がある。
ボーンとの昔の関係がどんなものだったのか、なにやらありそうですね。
ボーンの姿と、テレビニュースを見るニッキーの姿を、交互に見せるラストも印象的。上手い。
ただ、これはどうなのかと引っ掛かった場面を、先にあげた点に加えて、さらに言えば…。
まず、ボーンが、どうやって○○○に侵入できたのか。これは謎ですねえ。
そして、カーチェイスで少なくとも2度は普通なら死ぬかケガするだろうというところを、平気でいること。「ダイ・ハード」じゃないんだから、これはスーパーマンすぎるのではないかと思った。
カーチェイスに強すぎるボーン。カーチェイスならボーンにおまかせ。
知恵を使ったリアルさと、屈強なスーパーマンという嘘っぽさを両立させようという狙いなのだろうか。両方の、いいとこ取りで面白くなるのは分かるが、スーパーマンぶりが、少し行きすぎているのではないかと感じた。