期待はずれ。
バートン=デップのコンビだから期待しすぎなのかもしれないが、ただ原作をこなしていった、だけのような印象を受けた。
舞台版よりも、いくらか曲数は少ないようだが、その歌にしても魅力なし。メロディが難しく、なじみにくい。覚えてほしい、口ずさんでほしいとは考えていないように思う。
もっとも、口ずさんでほしいようなタイプのミュージカルではないといえば、それまでの話だが。
デップをはじめ、俳優たちの歌は思った以上にうまくて感心はする。
でも、まったく心に響いてこないのは何だろう。曲が好みでない、というのも大きいはずだ。
好きでない場合の例に漏れず、メロディを1曲も覚えていない。
オープニングクレジットで、血が上から下へ流れていくところは、私の大好きな映画「吸血鬼」(1967年、ロマン・ポランスキー監督)を思いださせて、よしよし、と喜んでいたのだが。
(スウィーニー・トッドは、そういえば、ある意味では吸血鬼かもしれない。)
憎しみを抱えて街に戻ってきた男。
その胸には復讐あるのみ、ということになってしまう、考えてみれば哀しい人間だ。
出会ったパイ店の女は彼に好意をもって、その協力者になる。
どちらが速く、きれいに仕上げるか、という「ひげそり競争」でジョニデと対戦したのが、サシャ・バロン・コーエン。
「ボラット」(2006年)という映画の主演で話題になったのは知っていた。わざと相手の嫌がることをしてトラブルを起こすような映画(私が相手だったら絶対に怒るだろうな)らしい。
そんな変な映画を作った男が、一応まともな芝居をしていたのは意外というか、ほほう、と思った。
彼はオーディションで「屋根の上のヴァイオリン弾き」を全曲歌いまくったとかいう話だが、審査するほうにしても、そんなに多くの時間をとったのだろうか。歌ったにしても、さわりだけか?
床屋は、復讐する前に、いつのまにか単なる狂った殺人者になっている。
つまりは、もはや普通ではないのだ。
理不尽な殺人の結果は、悲しく惨めなものに終わる。それを示したことは価値があるだろう。