ぺネロピ

PENELOPE
監督 マーク・パランスキー
出演 クリスティーナ・リッチ  ジェームズ・マカヴォイ  キャサリン・オハラ  リース・ウィザースプーン  ピーター・ディンクレイジ  サイモン・ウッズ  ロニー・アンコナ  リチャード・E・グラント
原作 マリリン・ケイ
脚本 レスリー・ケイヴニー
撮影 ミシェル・アマテュー
編集 ジョン・グレゴリー
音楽 ジョビイ・タルボット
2006年 イギリス・アメリカ作品 102分
評価☆☆☆☆


とても可愛らしく、ファンタジックなラブストーリーだった。
こうであってほしいと(私が)思うとおりの決着を、ほとんど迎えるといっていい。(別に、ハッピーエンドとは言ってませんよ?)

名家の娘ぺネロピ(クリスティーナ・リッチ)は、ブタの鼻と耳を持って生まれた。
それは、先祖の浮気が発端になった事件に対する呪いのせい。
呪いを解くには、彼女と同じような名家の息子の愛が必要、というので、親たちはムコさん候補を次々に家に招いて、ぺネロピとお見合いさせる。
しかし、彼女の顔を一目見たとたん、彼らは逃げ出すのだった…。

男たちは逃げるときに、ガラス窓を突き破って「落っこちる」。(1階ではないから。)
この描写が何回も出てきたのが、「ヘン」に思える一歩手前で、ちょっと、おもしろい。階段を下りて玄関から帰ればいいのに、よっぽどぺネロピの顔に驚いたということだよね。
オーバーな表現だけど、女性に翻弄される男の哀しさまで象徴してるんじゃないかと深読みしてしまったよ。(笑)

新聞記者がぺネロピの写真を入手するため、ビンボーな名家の息子マックス(ジェームズ・マカヴォイ)を金で釣って雇い、ぺネロピのお見合いに送りこむ。彼の服にはカメラが仕込まれている。
マジックミラーを隔てたお見合い。ぺネロピからマックスの姿は見えるが、その逆は見えない。
だんだんと、彼の人柄に和(なご)んでいくぺネロピの様子が微笑ましい
果たして、この2人の関係は、どうなるのか…は書くわけにはいかないでしょー!

あることがきっかけで、ぺネロピは「引きこもり」をやめて外の世界に出ていく。
一歩、前に踏み出す。
ホテルの窓から街の夜景を見ているシーンは印象的。
未知の世界、あこがれ、興味、不安…。

ぺネロピの友人になるアニーを演じるのが、リース・ウィザースプーン。とがったアゴで彼女と分かった。というのは冗談。
イタリア製のオートバイ、べスパの後ろにぺネロピを乗せて走る。
ロンドン・ロケでは、「リース」と声がかかったそう。鼻を隠して後ろに乗っていたクリスティーナは、本人の弁では「気づかれなかった」。
この2人、友人なのだという。本作はリースのプロダクションが製作した映画。クリスティーナの出演は、そのへんの関係も、もしかしたら絡んでいるのかも?
それにしても、リース、製作に手を染めるなんて、実力者ですね。しかも、いい映画を作ってくれて、大成功ではないでしょうか。

クリスティーナ・リッチの演技もキマッている。
育ちのいい純粋なお嬢さんが、外の世界に出て、ちょっとずつ、たくましくなっていくさまも、まったく自然。
彼女はキルスティン・ダンストと役を取り合うことが多いとも聞くが、先日観た「ブラック・スネーク・モーン」とは、驚くほどに違う役を、見事に、こなしている。このような、ちょっと変わったヒネリのある作品で(も)、ガンガン活躍してほしい。
「ブラック・スネーク・モーン」「ぺネロピ」の2作を見れば、彼女の将来は前途洋々、な気がする。

ヒネリがある作品とはいっても、ブタ鼻は、それほど醜くなく、かえって可愛いくらいでもあった。(リハーサルのときに付けた鼻は、もっとリアルに醜かったそうだ。)
映画としては、可愛いくらいのほうがいいのだろう。リアリズム重視の映画ではないのだし。

コンプレックスに負けず、自分を好きでいなさい、というテーマは、ありふれているが、上手なおとぎ話にまとめられて、素晴らしい。
監督は、長編映画についてはデビュー作だというが、きっちりと作り上げてきた。
音楽もよかった。あとで公式HPで聴いたら、なんだか泣けてきたよ…。

ちょっと長くなったが…クリスティーナのメッセージで締めましょう。
「自分自身が、顔のせいで、家に閉じ込められてしまうのですが、『もういいんだ』と吹っ切れて行動を起こします。人は、大なり小なりコンプレックスを抱えているものですが、それにとらわれていては人生を踏み出すことができない。『白馬の王子様が迎えに来るのではなく、自分自身が白馬の王子様なんだ』ということを感じ取ってほしい。」

見終わったあとの気分は上々。ゆえに、少々甘いけど星4つ、あげる。




〔2008年3月8日(土) テアトルタイムズスクエア〕


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