ミスト

THE MIST
脚本・監督 フランク・ダラボン
出演 トーマス・ジェーン  マーシャ・ゲイ・ハーデン  ローリー・ホールデン  ネイサン・ギャンブル  アンドレ・ブラウアー  トビー・ジョーンズ  ウィリアム・サドラー  ジェフリー・デマン  フランシス・スターンハーゲン  アレクサ・ダヴァロス
原作 スティーブン・キング
撮影 ロン・シュミット
編集 ハンター・M・ヴィア
音楽 マーク・アイシャム
2007年 アメリカ作品 125分
サターン賞…助演女優賞(マーシャ・ゲイ・ハーデン)
評価☆☆☆☆


スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督のコンビ作で有名なのは、「ショーシャンクの空に」(1994年)、「グリーンマイル」(1999年)とある。
「ショーシャンクの空に」は一度見ただけで、いまは、ほとんど覚えていないという、ていたらく。多くの人が名作に挙げる作品なのに。
「グリーンマイル」は、私の名前の一部ジングルズの元ネタ映画。

そんなこんなで(?)、ホラーやサスペンスが、けっこう好きな私は「ミスト」も観ちゃえー、ということで。

いやはや、このラストは!!
何の宣伝文句も知らずに観たこともあって、このハリウッド映画らしからぬ、言ってみれば掟破りのエンディングには、唖然(アゼン)!
好きでなかった。
…だけど、しばらく経ったら、これもいいかなと思えてきた。こんなこともあるよなあって。

このエンディングは監督のアイデアで、原作者キングに言ってみたら、それはいい、原作もそうすればよかった、みたいな返事をもらえたのだそうだ。
非常に重い終わり方である。人間として、これ以上ないくらいに絶望的。これ以上ないくらい意地悪な脚本。
だが、それゆえに、(監督が企んだとおりに)記憶に残る映画になった。好き嫌いは別にして。いい悪いは別にして。

意地が悪いといえば、やっと恋人同士になった2人が、悲惨な終わりを迎えるのも、めちゃくちゃ意地悪。

全体としても面白かった。
ミスト、つまり霧が出て、いったい何が起こるのか、何が恐ろしさのもとなのか、なかなか分からないような話の展開になるのかと思っていたら、あっという間に敵のおよその正体が分かってしまった。それは意外。

しかし、話の中心は、そんなことではなかった。
閉じ込められた店内で、大勢の人間が恐怖や絶望におち、宗教に救いを求める者がいたり、人の話を信じない者がいたり、人それぞれの地が出てくる。
極限状態で人間が、どんな行動をするか。これが面白く、怖いのだ。

ホラーとしては素材は決してA級とは言えないが、人間ドラマとしては、よくできているのではないか。

閉じ込められた人々の中の有志が脱出しようとして、その試みが失敗しそうになったときに、その局面を打開した方法。
やはり、それしかないのか、と考えてしまう。暴力に対しては暴力か。相手の気持ちを萎(な)えさせるには、それしかないのだろうか。

狂信的な女性を演じたのは、マーシャ・ゲイ・ハーデン
「ポロック 2人だけのアトリエ」(2000年)で、映画はつまらなかったが彼女はアカデミー助演女優賞をとり、「ミスティック・リバー」(2003年)も印象にある、実力派。
今回も、さすがのマーシャ。
過激な宗教は、よくないです、ほんと。
身をもって教えてくれました、さすがにマーシャ。

記憶に残る、密室(でもないけど)SFサスペンスホラー脱出劇、極暗・絶望風味。
はじめは好きではなかったが、最後をここまで思い切ってやったことは、やはり評価したい

しかし、主演のトーマス・ジェーン。ジェーンって、ふつう、女性のファーストネームじゃない? 不思議。本名はトーマス・エリオットらしい。




〔2008年5月11日(日) シネ・リーブル池袋1〕


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