「総統、たいへんです! 大事件です!」
「なんじゃね吉田君。そうぞうしい」
「島根でも大ヒット上映中の、あの『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II 〜私を愛した黒烏龍茶〜』に、ボーさんの名前がのってるんです!」
「なんじゃとー! もしやそれは『1万人の声優大募集』で『た〜か〜の〜つ〜め〜』という声を募集したときに、ボーさんが応募して、映画のなかで、その声が使われたということかね!」
「長々と説明しなくてもいいんですが、そういうことです」
「じゃが、わしも映画を観たが、ボーさんの名前は書かれておらんかったぞ」
「芸名じゃなくて本名でのってるんですよ」
「吉田君、そりゃ芸名とは言わん。ハンドルネームじゃろ」
「ボーさんは、自分では名前をチラッと見ただけで、99%の確信しか持てないと言っています」
「それだけ確信があれば、よさそうにも思うが」
「なので、確認してほしいそうです」
「んん〜、4788名もの声の協力者の名前がのっておったのは、エンドクレジットじゃな。博士〜、レオナルド博士、ちょっと映画の最後のところ、見ることはできんだろうか?」
「うるせえな。そう言うと思って、ちゃんと用意しておいてやったぞ。…って、できるわけねーだろ。ワァワァワァ」
「こうなったら、また映画館で観てもらうか、DVDになってからチェックしてもらうか、デラックスファイターをやっつけてもらうしかないですね」
「私を呼んだか?」
「で、デラックスファイター!」
「そーうだ、デラックスファイターだー」
「吉田君、よけいなことを言うから、よけいなヤツが出てきてしまったではないか」
「また地球征服をたくらんでるな。これでも食らえ、デラックス…」
「ちょっと待て! いつも言うように、必殺技は最後に出すもんじゃろ。100円やる、100円やるから、こっちの戦闘準備が整うまで、デラックスボンバーは、ちょっと待ってくれ」
「総統、100円は思いきりケチくさいですよ」
「うーん、100円か…」
「あ、予想外にデラックスファイターが考え込んでる。総統、これは相当、半ケツなデラックスファイターです」
「総統と相当をかけたダジャレに加えて、半ケツじゃなくて金欠じゃ!」
「いや、やっぱり、やっつけよう。デラックス…」
「うわーん、やさしく殺して、やさしく殺して、キリング・ミー・ソフトリー、キリング・ミー・ソフトリー」
「総統、知らない人が聞いてもつまらないネタをやらないでくださいよ」
「そんな人は、ぜひ『秘密結社 鷹の爪』を映画館やDVDでご覧ください。ところで吉田君、たった今気づいたんじゃが、ここまで、まるっきり映画の紹介をしとらんじゃないかね」
「わかりましたよ。つまりですね、今回の敵は、日本を買い占めようとするハゲタカみたいなヤツなんですが、われわれ鷹の爪団はヤツが見捨てた島根に移動して、サイバースペースで対決するんです」
「おー、それでどうなるんじゃ」
「終わりです」
「んんん〜、ずいぶん簡単にまとめたもんじゃな、吉田君…。まあ、映画を観てくださいってことだねえ」
「ええ、カンヌ映画祭のフィルムマーケットで上映されたくらいで、別に話すほどの内容ではありませんので」
「こらーっ。何を、変な謙遜(けんそん)をしておるのかね。カンヌに出品されたなんて、すごいではないか! …というわけで、みなさん、ぜひ観てください。収入が鷹の爪団の資金になりますので。では、また! た〜か〜の〜つ〜め〜」
「デラックスボンバー!」
「デラックスファイター! まだいたのか! それに今ごろデラックスボンバーするなー!」
ドドーン!