アメリ

LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 オドレイ・トトゥ  マチュー・カソヴィッツ  リュフュス  セルジュ・メルラン  ドミニク・ピノン  イザベル・ナンティ  ジャメル・ドゥブーズ
脚本 ジャン=ピエール・ジュネ  ギョーム・ローラン
音楽 ヤン・ティルセン
2001年 フランス作品 121分
カルロヴィヴァリ国際映画祭…グランプリ受賞
エジンバラ国際映画祭…観客賞受賞
トロント国際映画祭…AGFピープルズ・チョイス賞受賞
全米放送映画批評家協会賞…外国語映画賞受賞
ヨーロッパ映画賞…作品賞受賞
セザール賞…作品・監督・音楽・舞台装置賞受賞
英国アカデミー賞…脚本・美術賞受賞
シカゴ批評家協会賞…将来を約束された俳優賞(オドレイ・トトゥ)
インディペンデント・スピリット賞…外国語映画賞受賞
評価☆☆☆☆  

アメリのパパさんへ。

ぼくは、とんがり帽子のこびとの人形です。せっかくパパさんがぼくを庭に出してくれたのに、逃げてしまってごめんなさい。これまでたくさんの国を回ってきましたが、ぼくはいま、日本にいます。手紙を付けるのははじめてですが、写真もいつものように送ります。

日本に来て、映画好きのBJさんに会いました。「アメリ」を観てくれたそうです。アメリちゃんに手紙を送りたいというので、同封します。アメリちゃんに渡してください。
あ、それから、ぼくはもうすぐ帰りますから、心配しないでください。パパさんも家にばかりいないで、どこか旅行してみたら楽しいですよ。


アメリ・プーラン様。

私はBJといいます。「アメリ」観ました。ほんとに可愛い映画でした。
タイトルは、「アメリ・プーランの素敵な運命」みたいな感じでしょうか。
最初は、予告編を観て興味を引かれたのです。動物の形になった雲や、アメリさんががっかりしたときに体全体が水のようになって崩れ落ちていくシーンなどのイメージの豊かさ。絵画のような画面の色付け。これは面白そうだと思いました。この予告編を観ていなかったら、ただ、女の子のメルヘンチックな映画だろうと思って観なかったかもしれません。

日本では、1本の映画について、いろんな情報が流れます。「アメリ」はいい評判が多くて、公開されたら大人気でした。私は実際に観て、その価値はじゅうぶんにあると思いました。
こちらの観客は、やっぱり女性が多くて、男がいるとすれば、カップルで女の子に付き合って観に来た、というふうに見えました。

監督がジャン=ピエール・ジュネさんというのも、人気の要因でしょうか。私はジュネさんの映画は「エイリアン4」しか観ていませんが、「デリカテッセン」や「ロスト・チルドレン」は不思議な感じの作品らしくて、ファンがたくさんいるようです。

アメリさんは自分だけの空想の世界で遊ぶことが好きな女の子で、他人との関係を結ぶことができないと悩んでいましたね。でも、ちょっとだけ他人の幸せに力を貸すことに成功してからは、周囲の人たちが幸せになれるように、自分ができることを、こっそりとしていくんですよね。なかには、いたずらといってもいいようなこともあって、笑ってしまう場面もいっぱいありました。

そして、やっと自分のことも度胸を決めて、行動に出る。好きな人にどうやって思いを打ち明けるのか、観ていて、じれったくもあり、おかしくもありました。スムーズにいかなくても、アメリさんが一所懸命なのは分かっているから、なんとかうまくいってほしいと思いながら見守っていました。

私は気持ちがあったかくなる映画は大好きです。たとえ現実がそんなにうまくいくはずがないと分かってはいても、あたたかい思いやりがほんのいくつかでも世の中に生まれれば、そのぶん世の中に幸せが増えると思いたい。
こういう考えを甘いとか、理想主義にすぎないという人が世間にはいるでしょう。でも、たとえば、生きるか死ぬかの瀬戸際で余裕のないような場合は別として、自分が人に親切にできる状況であれば、親切にしてみれば、相手はもちろんうれしいだろうし、自分もハッピーな気持ちになれるかもしれない。
ただ、その行為が自己満足が目的ということになっては、偽善なんて言われちゃう。人によっては押し付けがましいと思われちゃう。
親切をするのは恥ずかしいから、さっとスマートにやるのは難しいですよね。電車で席を譲ることなんかでもなかなか難しい。
照れなどもあるから、アメリさんのように陰で親切をやるのはいいかもしれませんね。

なんだかよく分からないことを書いてしまいましたが、そう、とにかく、あたたかい気持ちをもたらしてくれる映画は宝物なのです。

登場人物も、ルノアールの贋作を描きつづける老人、3分間写真のクズを集める若者、女の店まで来て彼女を見張る嫉妬深い男、いつも体の不調を訴えている女などなど、ユニークなキャラクター揃いでおもしろいです。
ついでに言えば、アメリさんのこと、どこかで見たような気がするなあと思っていましたが、知り合いの女性で似てる人がいたのです。日本人なんですけどね、たぶん。

音楽も素敵でした。映画のホームページでも聞いていたせいか、ずっと耳の奥に残っています。
アコーディオンの音色って、いいですね。郷愁のようなものも感じます。いかにもパリ。いかにもフランス。といっても、行ったことはないんですけど…。

そうだ、書き忘れてはいけないことがありました。アメリさんのキスの場面。感動しました。映画であんなに優しいキスを見たのは、はじめてかもしれません。
だいじに、だいじに、それまでのすべての気持ちを込めたキス。あれには、ぐっときました。あの時、私は本気で彼と代わりたかったです。
他にも素晴らしいシーンがいっぱいの映画ですが、たとえあのキスシーンひとつだけをとっても、私には、この上なく微笑ましくチャーミングな映画でした。

長くなってしまいました。アメリさん、これからも、いい恋をして、いい女になって、できればまた、周りの人もちょっぴり幸せにしてあげてくださいね。
〔2001年12月8日(土) 有楽町・シネ・ラ・セット〕



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