落下の王国

THE FALL
監督 ターセム
出演 カティンカ・ウンタルー  リー・ペイス  ジャスティン・リデル  ダニエル・カルタジローン  レオ・ビル  ショーン・ギルダー  ジュリアン・ブリーチ  マーカス・ウェズリー  ロビン・スミス  ジットゥ・ヴェルマ  エミール・ホスティナ  ロナルド・フランス
脚本 ターセム  ダン・ギルロイ  ニコ・ソウルタナキス
撮影 コリン・ワトキンソン
編集 ロバート・ダフィ
音楽 クリシュナ・レヴィ
衣装 石岡瑛子
2006年 インド・イギリス・アメリカ作品 118分
評価☆☆☆


落ちる。絶望と悲しみの中で。銃撃を受けて転落する。爆発して粉々に散って落ちる。何もかも剥ぎ取られて恥辱の淵に落ちる。矢を受け地に伏せ落ちる。友を助け自らは落ちる。
そして彼も、また…。

原題は“The Fall”で、落ちることを意味する。オープニングから、そのイメージはあって、鉄橋から落ちたらしい人がいる。主人公の女の子も果樹園で働いていて、ハシゴから落ちた。

人生そのものをfall(転落)するかどうかのピンチを救うものは何なのか。私はそれが、この映画のポイントだと思った。
それは、やはり、やっぱり「愛」なんだよねえ。好きだ、という気持ち。好かれている、という幸福、自己肯定。
それは何も恋愛に限ったことではない。
「好き」という想い。
人間の世界、愛や思いやりで満ちればいいのに。

絶望と悲しみの中で悲劇を作り出していく語り手、それを必死に救おうとする聞き手。その息苦しいような葛藤の場面には、グッときた。

監督がターセムと聞けば、「ザ・セル」を思い出す。好きな雰囲気の映画だったので、今度の新作も観たいなと思っていた。
だが、人生に絶望した男がどうなるか、という話の部分はよかったけれど、その他は、どうも…。
この映画、世界をロケして、美しい景色を見せたということだが、私には、それほど響かなかった。美しい景色を感じる心がないのかも! 映画を観にきたのであって、景色を見に来たわけではない、と言い訳しておこう。
また、男が物語るストーリーは単なるヒネリのない復讐劇だし、ほとんど男ばかりなのが美しくない。(…そこかい!)

主役の女の子の自然さは、とってもいい!
映画のなかで演じようという、へたな物心がつく前に、撮影しちゃったようですね。

へんなところでユーモアがあったりして、あのときの言葉はウソだったのだ、じつは、手でウソの印を作っていたのだ、といって、前は見せていなかった男の手元を再び映像で見せると、たしかに印を作っている! というのは笑えた。

風景に感動しなかったら、監督の意図は、かなりの挫折ということになるのかな? ごめんね〜。(笑)

衣装が石岡瑛子さんというのは書き留めておくべきだろう。「ザ・セル」も、そうだったよね。




〔2008年10月26日(日) 銀座シネパトス2〕


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