落ちる。絶望と悲しみの中で。銃撃を受けて転落する。爆発して粉々に散って落ちる。何もかも剥ぎ取られて恥辱の淵に落ちる。矢を受け地に伏せ落ちる。友を助け自らは落ちる。
そして彼も、また…。
原題は“The Fall”で、落ちることを意味する。オープニングから、そのイメージはあって、鉄橋から落ちたらしい人がいる。主人公の女の子も果樹園で働いていて、ハシゴから落ちた。
人生そのものをfall(転落)するかどうかのピンチを救うものは何なのか。私はそれが、この映画のポイントだと思った。
それは、やはり、やっぱり「愛」なんだよねえ。好きだ、という気持ち。好かれている、という幸福、自己肯定。
それは何も恋愛に限ったことではない。
「好き」という想い。
人間の世界、愛や思いやりで満ちればいいのに。
絶望と悲しみの中で悲劇を作り出していく語り手、それを必死に救おうとする聞き手。その息苦しいような葛藤の場面には、グッときた。
監督がターセムと聞けば、「ザ・セル」を思い出す。好きな雰囲気の映画だったので、今度の新作も観たいなと思っていた。
だが、人生に絶望した男がどうなるか、という話の部分はよかったけれど、その他は、どうも…。
この映画、世界をロケして、美しい景色を見せたということだが、私には、それほど響かなかった。美しい景色を感じる心がないのかも! 映画を観にきたのであって、景色を見に来たわけではない、と言い訳しておこう。
また、男が物語るストーリーは単なるヒネリのない復讐劇だし、ほとんど男ばかりなのが美しくない。(…そこかい!)
主役の女の子の自然さは、とってもいい!
映画のなかで演じようという、へたな物心がつく前に、撮影しちゃったようですね。
へんなところでユーモアがあったりして、あのときの言葉はウソだったのだ、じつは、手でウソの印を作っていたのだ、といって、前は見せていなかった男の手元を再び映像で見せると、たしかに印を作っている! というのは笑えた。
風景に感動しなかったら、監督の意図は、かなりの挫折ということになるのかな? ごめんね〜。(笑)
衣装が石岡瑛子さんというのは書き留めておくべきだろう。「ザ・セル」も、そうだったよね。