ファニーゲームU.S.A.

FUNNY GAMES U.S.
脚本・監督 ミヒャエル・ハネケ
出演 ナオミ・ワッツ  ティム・ロス  マイケル・ピット  ブラディ・コーベット  デヴォン・ギアハート
撮影 ダリウス・コンジ
編集 モニカ・ヴィッリ
音楽 トーマス・ニューマン
2007年 アメリカ作品 111分
評価:無星。客観的には☆☆☆☆


同じ監督によるハリウッドリメイク。
ナオミ・ワッツさんが主演ということで、何の前知識もなく、ほいほいと観に行ったが、これほど気分をどんよりとさせる映画はないだろう。
人殺しを趣味かゲームのように行なう若者2人に襲われる一家。夫婦はナオミ・ワッツさんとティム・ロス。子どもは、小さな男の子1人。

犯人の、手袋をして白シャツのマイケル・ピットら(ピットのほうは白づくめ)の姿を思い出すと、ヘドが出る。
現実の厳しさを見せたいのか。悪意は罪のない人にも情け容赦なく降りかかると。それを見せて…どうする?
見たくないものを目の前に突きつけられる、暴力的な鋭さは、生半可じゃない。

犬を殺し、飼い主が見つけたときには、かわいそうな犬は、車のトランクから、だらりと出てきて、地面にくずれ落ちる。最低に、ひどい見せ方には感心する。
その後も、次々に希望を打ち砕いていく語り口は、見事というしかない底意地の悪さ
子どもを恐怖の底に落とし、泣かせる、最悪の、ひどさ。
作り事の話で、そう上手くはいかないのではないかとは分かるものの。

映画館でもらったチラシを後で読んだら、こんな一文があった。
「…伝説の傑作『ファニーゲーム』(97)の、自身による完全リメイク。舞台をアメリカに移し、敢えてオリジナル通りの設定でかつてない悪夢をより強烈に再現! 他人事とは思えない不条理な暴力の恐怖を描き、暴力に加担する映画界やそれを消費してきた観客へ挑戦状を叩きつける!…」

映画界や観客への挑戦状? そんなことは言われなきゃ分からないし、監督がそう言ったのかどうかも分からない。
たしかに、言われてみれば、スクリーンの中での、びっくりするような出来事(ネタばれなので書かない)は、観客の望みは残酷なことでしょ?という意味だったり、都合のいい展開にできる映画作りを批判している、と考えることはできる。
だから、わざと、こんな話を作ったんだよ、と。
でも、それは、言われてみれば、そうかな?だ。

ここまで生理的にも精神的にも嫌な映画、ということで、印象には強く残る。作り事の映画として冷静に見て言えば、その点は買っていいし、ここまで不快な映画を作れる技量は並ではない。その見かたで点をつければ☆☆☆☆にしてもいい。
だが、好きか嫌いかならば、大嫌いだ。
大嫌いと言わせたいなら、言う。大嫌い。
この映画の試みを支持したい気は、とてもあるし、嫌うならば、中途半端は似合わない。

ナオミ・ワッツさんが製作に関わり、主演までした、そのガッツは素晴らしい。

この監督の作品では、「ピアニスト」(2001年)は見たことがあり、それは、まったく嫌いなことはなかったけどねえ。
彼の他の作品も見てみたいね。

意味なく手袋をした見知らぬ人間には注意しましょう。




〔2008年12月23日(火) シネマライズ〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ