アラビアのロレンス 完全版

LAWRENCE OF ARABIA
監督 デビッド・リーン
出演 ピーター・オトゥール  オマー・シャリフ  アンソニー・クイン  アンソニー・クエイル  アーサー・ケネディ  クロード・レインズ  アレック・ギネス  ジャック・ホーキンス  ホセ・ファーラー
脚本 ロバート・ボルト
撮影 フレディ・ヤング
編集 アン・V・コーツ
音楽 モーリス・ジャール
1662年(完全版は1988年) イギリス作品 108分
評価☆☆☆☆★


デビッド・リーン監督の名作のリバイバル上映。コロンビア映画85周年、同日本支社設立75周年記念作品。
デジタル音声のニュープリント・ヴァージョンを、新宿の映画館テアトルタイムズスクエアで観ることができた。
 
私が観に行ったのは、正月休みに入った方も多いだろう12月28日の日曜日。朝いちばんの回にもかかわらず、席は、かなり埋まっていた。
DVDなどで見ることができるのに、映画館で観ようとする映画ファンが多いのは、うれしい。リアルタイムで観たのかもしれない年配の方の姿も。
説明などする必要がない、映画史における傑作の1本だろう。
 
私は見るのが4回目。映画館では初めてだ。
まず、何も映っていないスクリーンに、モーリス・ジャール作曲の「オーバーチュア」(序曲)が流れる。オペラのようにしたいという製作側の希望で序曲が入ったらしいが、いまどきでは珍しいオープニングに驚いた人もいるのではないか。
雄大な、この曲を聴いていると、これから大きなスクリーンで「アラビアのロレンス」を観ることができる幸福感に包まれた。
ジャールは作曲のために、音楽も人物も入っていないラフカットフィルムなどを見て、初めに「ダンダンダンダンダカダン」という、最初に来る、あの印象的な打楽器のメロディを思い浮かべたのだという。
名作には、たいてい名曲がある、というのは私の考えだが、「アラビアのロレンス」の音楽は、とてつもなく雄大でエキゾチック、まさに永遠の名メロディだ。
 
アラブの王子の動向を探るために、イギリス軍によって派遣されたロレンスが、重要拠点である都市を陥落、占領し、勇敢な行動をとったことから、アラブの民たちに英雄とまつりあげられるが…。
 
広大な砂漠、暑さ、自然の苛酷さ、その中の小さな人間。
アラブの民のためなのか、自分のうちの何かのせいなのか、戦いの渦に引き込まれていく、ひとりのイギリス人。
主役のピーター・オトゥールは、もちろん、まわりを固める、オマー・シャリフ、アンソニー・クインのアラブ人役、アーサー・ケネディの記者など、どの役もしっかり存在感があって素晴らしい。
 
CGなどないのであろう時代の実写のスケールは圧巻。もしも、いまの時代に再現しても、どこかで便利になっているに違いないから、苦労して汗と熱気とともに作ったような、これほどの雰囲気は出てこないはず。
こうした、スペクタクル映画は、もはや作られないのかなと思うと、映画の退化のようにも思えてしまう。
 
上映時間は、3時間47分。途中で、インターミッション(休憩)が入る! 上映時間が長い映画では、昔はインターミッションが入ることがあった。そうした映画には、よりいっそう大作の風格、スケールが感じられる。
もしかして、女優が出てこない映画なのだが、私がそういう類の映画が好きなのは、まったく異例。ほとんど唯一の映画?(…他を思い出さないだけかも。)
 
映画好きなら、この超名作を映画館で観てくるという経験をしてみても。




〔2008年12月28日(日) テアトルタイムズスクエア〕


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