007/慰めの報酬

QUANTUM OF SOLACE
監督 マーク・フォースター
出演 ダニエル・クレイグ  オルガ・キュリレンコ  ジェマ・アータートン  マチュー・アマルリック  ジュディ・デンチ  ジェフリー・ライト  ジャンカルロ・ジャンニーニ  ホアキン・コシオ
脚本 ニール・パーヴィス  ロバート・ウェイド  ポール・ハギス
撮影 ロベルト・シェイファー
編集 マット・チェシー  リチャード・ピアソン
音楽 デヴィッド・アーノルド
主題歌 アリシア・キーズ  ジャック・ホワイト
2008年 イギリス・アメリカ作品 106分
評価☆☆☆


おお、けっこうイケるじゃないか。
前作「007/カジノ・ロワイヤル(2006年)」が、我が家で2006年度ワースト作品賞に輝いたのに、こりもせずに観に行った結果である。
つい先日観た「君のためなら千回でも」のマーク・フォースターが、今度の007を監督したわけだが、「君のためなら千回でも」が感動の文芸作!みたいな映画だったので、まるで方向性が違う娯楽アクションで、どんなものを見せてくれるか、多少は楽しみでもあった。

前作の1時間後から、この続編は始まるとかで、いきなりカーチェイス。
最近の映画のアクションシーンで時々不満に思うことが、ここでも起きた。何が何してどうなって、ああなったのか、よく分からないのだ。
分からないのは私だけではあるまい。
それは、続く人間同士の追っかけでも同じだった。建物から2人で落ちてガラスを割って、なんだか不安定な土台(?)があって、ひもから、ぶら下がったりして(うまく説明できず、すまん!)、どう動いて、ああなってこうなって? それが、はっきりと理解できない。
分からないのは私だけではあるまい。
そういう見せ方でいいのか?
カットの切り替えが速いうえに不親切。追っかけの当事者をAとBとすると、そのAとBが、どういう位置関係にあって、そのとき何をしているのか、理解が追いつくように、うまく見せてくれないと、観客には分からないと思う。

そんな不満はあるが、総じて言えば、悪くはなかった。
ワーストだった前作、くそ真面目な話のくせに、うそくさい都合の良さ、理解できない展開、ありきたりなところ。(いまは覚えていないが、当時の感想を読み直してみると、そう思っていたんだな、ということである。)
今回悪くないというのは…慣れ?(笑)
アクションが派手で観ていて、なかなか面白かったのと、シリアスなボンドも、まあいいかなと。まさか今後、任務を続けるうちに、くだけたキャラに変貌するとか!? ショーン・コネリーが演じたときのキャラの、その以前は、こうだったんだという説明だったのか!?(爆)

ボンドガールも良かったです。
メインのボンドガール、カミーユ(オルガ・キュリレンコ)ちゃんは、いきなりボンドの前でクルマを止めて一言、“Get in.”「乗って」。
2回目も「乗って」。ボンドがちゅうちょしていると、“I said get in.”「乗ってって言ってるでしょ」ですから。(…それが何か? いえ、何でもないです。記憶にあるだけのことで。)
クールでいいです。かたきを討つ執念に燃えるところはボンドの同志的な存在。
もうひとりのボンドガールは、ストロベリー・フィールズ(ジェマ・アータートン)。名前がストロベリー・フィールズって…(笑)。

「007/ゴールドフィンガー」の金粉へのオマージュもありました。これは知ってたら、ニヤリです。
また、ボンドのボス役がジュディ・デンチという大物女優なせいか、彼女の出番もけっこうあって目立つ。彼女の家庭の中のシーンで、夫の声が聞こえるところは、なんだか「クィーン」を思い出した。イギリス、女性のボスといえば、クイーン、女王さまみたいなものだしね。

陸=クルマ、海=モーターボート、空=飛行機と、ひととおり律儀にバラエティに富んだアクションを入れたサービス品。

敵役はマチュー・アマルリック。「潜水服は蝶の夢を見る」の主演が見事だった人だが、今回は悪党。怖さはないが、現代のワルって、こんなふうじゃないかなとも思える。
最後は情けなくて、よかった。

雑誌「TV Taro」によると、次作タイトルは「BOND23」? 23作目だから仮タイトルか?
今回のボンドガール、オルガちゃんが続投するとか。ニューヨークが舞台で、Mの秘書マネーペニーと、秘密兵器開発担当のQの復活も有り得る?
美人秘書のマネーペニー。いまのお話の設定ではMは女性だけど、マネーペニーを登場させるなら、はたして美人女性秘書で行くのだろうか。…行ってほしい。

原題のQUANTUM OF SOLACE。SOLACEは慰め、QUANTUMはネット辞書で「量子」と出た。原作では、最低限必要な慰めがあれば救われる、といったような意味の記述があるらしく、「ほんの少しの慰め」があればいいのだ、という感覚に思える。邦題では、「報酬」の言葉が微妙に頭にクエスチョンマークを生む。

個人の復讐心と決別するラストは、かっこいい。




〔2009年1月24日(土) 池袋東急〕


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